最初に試す人がいる=映画「否定と肯定」公開—主人公の米女性教授語る

12月8日(金)11時54分 時事通信

 「ナチス・ドイツによるホロコーストユダヤ人大虐殺)は存在しなかった」と主張する英歴史家を著書で批判したところ、名誉毀損(きそん)で訴えられ、ホロコーストの実在を法廷で証明することになった米女性教授の実話を描いた映画「否定と肯定」(2016年、ミック・ジャクソン監督)が8日、日本でも公開された。トランプ米大統領らにまつわる「偽ニュース」の話題が世界であふれる時期の公開となったが、映画の主人公のデボラ・リップシュタット米エモリー大教授は、一見すると荒唐無稽な主張でも「最初に試す人がいる」と警告している。
 来日時に時事通信の取材に答えた。「事実を調べ、自分の意見を言うのはいい。しかし、人間が言葉で発したこと全てが意見ではない。うそも存在する」と強調した。「自分が今、聞いている話は、事実か、意見か、うそか、この三つを常に見極めないといけない」と力説している。
 ホロコースト否定をはじめ国粋主義や人種差別といった極端な主張は「負の過去を過小評価して、できれば消し去りたい」と人々が心の底で抱く願望につけ込んで現れてくると教授は指摘する。「少し周りの注目を浴びたいだけ」のささやかな動機が最初にあって「足先を湯に漬けるように、どこまで言えるかまず試してみる」リーダー役の存在が偽ニュース発信側の特徴と分析した。
 米国で言えば「奴隷制度はそんなに悪くなかった。米国の黒人はアフリカの黒人より今はずっと豊かだ」と差別の歴史を直視せずに開き直る主張にこうした傾向を見ている。過去に目を背ける行為は世界中にあると指摘する教授は「日本の若い人たちにも伝えたい。日本が過去に間違えたと認めることは、日本を小さくするのではなく、一段高い所へ引き上げることになるのではないか」と訴えた。
 現在の世界について「憎悪と偏見に満ちた発言を試してみて次々『意外といける』と思ってしまう時代に残念ながらなってしまった」と述べた。さらに「以前から差別的な考え方を持っていたわけではない人たちまで、空気が変わって『このくらいなら言ってもいい』と面白がって安易に考えるようになり、それが増えている」と警告した。その先導役が「私の国では指導者だ」と述べて、深く嘆息した。 

[時事通信社]

時事通信

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