中国「日本研究所」の論文に“日本は中小国の運命”等の悪意

12月8日(金)7時0分 NEWSポストセブン

中国社会科学院の本部 CFP

写真を拡大

 中国には政府直属の学術研究機関があり、社会科学系・人文科学系の研究所を約30運営している。地域情勢を専門にする研究所のうち、単独で国名を冠するのは米国、台湾、日本のみ。1981年に設立されたという「日本研究所」はいま、日本をどう見ているのか。


 * * *

 天安門広場から北北東3kmの方向に「中国社会科学院日本研究所」は存在する。「中国社会科学院」は国務院(政府)直属の機関で、中国最高峰のシンクタンク。「哲学および社会科学研究の最高学術機構」と位置づけられており、その権威は北京大学や清華大学よりも上位にある。つまり同研究所の研究内容は、中国政府および中国人の「対日観」の根幹と言えるのだ。


 研究結果はホームページで公開されており、日本に関する時事コラムや論文が並んでいる(一部日本語版もある)。執筆陣の多くは「環球時報」などの主要メディアでオピニオン記事を執筆しているようだ。


 日本社会の現状について淡々と解説する論考が多いが、学術研究の権威が書いたとは思えないような、悪意に満ちた表現も随所で目に入る。たとえば、「中等国家こそ日本の歴史的常態」と題されたコラムにこんな記述があった。


《国土は世界62位、人口は11位でしかない日本には「中小国家の運命」しかないのである。これは歴史的な運命である》(《》内は抄訳。以下同)


《アヘン戦争以後の100年の間、日本が中国より優位に立っていたのは一瞬の線香花火のようなものであり、「異常事態」に過ぎない》


 さらに、日本は将来、少子高齢化により一気に衰退の道をたどると続ける。


《このままだと数十年後、日本各地に廃墟の景色が生まれるだろう。戦後は戦争による廃墟が生まれたが、遠くない将来、今度は平和による廃墟ができるのだ》


 皮肉ではあるが、学者の書く文章としては品がない。また、「核不拡散のため日本は自制すべき」という見出しのコラムではこう書く。


《核兵器削減の名のもと、日本は自分が“平和国家”であるかのようなイメージを振りまき、核兵器の被害者ヅラまでしている》


《日本は核不拡散の矛先を中国だけに向け、日本が秘密裏に保有している大量の核兵器材料から国際社会の目を逸らそうとしているのである》


 戦後70年以上の日本の歩みを無視したあまりに一方的な言説である。

 

 安倍晋三首相も槍玉に上がる。「安倍の訪米“朝貢”外交 相変わらずカモにされる日本」とのタイトルでトランプ政権下の日米関係についてこう酷評する。


《アメリカに従うという関係は変わらず、日本の主導権は完全にアメリカに握られている》


《安倍は低姿勢にならざるを得ず、経済的な貢献と引き換えにアメリカに安全保障をお願いしている。側近からも“朝貢外交”と呼ばれており、可哀想としか言いようがない》


 拓殖大学海外事情研究所の澁谷司教授が解説する。


「中国の研究者たちは政府に好かれる論文を出すほうが出世しやすいため、どうしても政府の言いなりになりやすい。『学問は公平客観的であるべき』という近代的価値観が欠如しているのです」


 日本を罵る前に、自国の「言論の不自由」に気づくべきではなかろうか。


●取材協力/西谷格


※SAPIO2017年11・12月号

NEWSポストセブン

この記事が気に入ったらいいね!しよう

中国をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ