日本では悪質ホストが問題化…北朝鮮の「売掛」商売はいかに

2023年12月11日(月)0時25分 デイリーNKジャパン

高額な売掛(借金)を女性に背負わせ、売春させて取り立てる悪質なホストクラブが社会問題化している。もっとも、ツケ払いで売り上げを増やそうとする商売はどこにでもある問題ではある。


北朝鮮の小学校や初級中学校(中学校)、高級中学校(高校)の周辺には、様々な売台(ワゴンやプレハブ、住宅を改造した店)が軒を連ねる。多くが子どもに文房具やお菓子を売る店だが、当局はこれらに閉鎖命令を出した。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。


朝鮮労働党平安北道委員会(道党)は、学校周辺で児童・生徒を対象に金儲けをする行為をなくせとの指示を下した。これに伴い、取り締まりが強化されている。


その背景には、これらの店が無登録で税金を納めていないことや、そもそも商行為は社会主義に反するという考え方があるが、今回の指示の直接の原因となったのは「ツケ」だ。


学校周辺の民家に住む人々は、軒先で店を開き、児童、生徒のニーズに合わせて文房具や食べ物を売っているが、市場より高値で売られている上に、ツケが効く。名前と学年、クラスを帳簿に付けてツケで物を売るのだが、金銭感覚がまだ充分に養われていない子どもたちはついついいろんな物をツケで買ってしまう。


ツケがたまると商人は、校門で待ち受けてさっさと払えと付きまとう。すると、噂が広まって恥をかきたくない子どもたちは、できる限り早く払おうとするという。それがエスカレートした事例を情報筋が紹介した。


「ある初級中学校の生徒たちの行きつけの店の主は、ツケで物を買ったのに長い間払えずにいる生徒を毎朝、登校時に待ち受けて、ツケを払えとしつこく取り立てようとした。するとある生徒は正門から学校に入らずに裏の塀を越えて入るようになり、ある生徒は不登校になってしまった」


結局、店の主は親のところに行ってツケを払うように要求した。親は「親の許可も取らずにツケで売ったのか」と払おうとせず、店主は「あんたの息子が買ったのだからさっさと払え」と一歩も引かず、口論へと発展した。


一部の親が道党に信訴(告発)するに至り、それを受けた道党が取り締まりを指示したというものだ。当局の介入でツケが飛ぶことになった店主たちは泣き寝入りする他ないが、生徒とて変な噂を流されるかわからず、気が気でないだろう。


市民からは「結局、皆が経済的に苦しいからだ」「店の取り締まりは根本的な解決にはならない」と、人々を貧困に追いやった当局の無策を批判する声が上がった。


このようなツケの問題は、学校周辺だけで起きているわけではない。貧しい人たちは市場で食べ物をツケで買っている。給料も充分な食事にもありつけない下級兵士は、部隊周辺の店でツケ払いで酒やツマミ、お菓子を買ったりする。後になって払う払わないの問題、周辺地域の治安悪化へと繋がる。



問題はツケにとどまらない。恒常的な資金不足に悩む協同農場は、穀物を借りて肥料や営農資材を購入し、秋の収穫で2倍にして返す。しかし、凶作の場合は、返済が行き詰まり問題へと発展する。その返済を行うために、国や軍に納める穀物をくすねて売り飛ばしたりする。

デイリーNKジャパン

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