北朝鮮の女性兵士を襲う「書類整理」と呼ばれる性虐待行為
2024年12月19日(木)5時2分 デイリーNKジャパン
ロシアに派兵された北朝鮮軍の損失について、様々な情報が出ている。
AFP通信の18日付の報道によれば、米軍幹部は「DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)側の(クルスク)での死傷者数は数百人というのがわれわれの最新の推計だ」と明らかにしたという。
またこの幹部は、北朝鮮軍の死傷者が多数に上っている理由について、「百戦錬磨の兵士ではなく、実戦経験がない」ことが原因の一つである可能性が高いとの見方を示している。
北朝鮮軍の死傷者は今後も増えるだろう。しかし、北朝鮮軍がロシアでどんなにひどい目に遭おうとも、そこで積んだ実戦経験は同軍を確実に強くするというのが、軍事専門家たちの見方だ。
ただ、ロシアでの犠牲は、ほかの面で北朝鮮軍を弱くする可能性もある。
近年、北朝鮮では少子化が進む中、兵役忌避の風潮も強まっているとされる。大切な我が子を劣悪な環境の軍に送り出したくない親たちが、ワイロを積んで義務を逃れるのだ。
特に深刻だと言われるのが、女性らの兵役忌避だ。理由は、性的虐待の横行である。軍出身のある脱北女性は、韓国のNGOである北朝鮮人権情報センターの調査に対し、次のように証言している。
「権力のある上官は、自分の娘のような(年齢の)人を連れて……幹部課(人事課)に、『書類整理』をできる女性兵士を1人寄越せと。皆、すべてを知りながらも、上官が寄越せと言えばどうにもできません。命令に始まり、命令で終わるのが北朝鮮の軍隊ですから。書類整理と言うけれど、本当はその女性を暴行しようとして呼ぶんです。女性たちにも、上官に逆らう術はありません」
こんな実態を知りながら、娘を軍に送ろうとする親がいるはずもない。仕方なく兵役に就くのは、ワイロを用意できない貧しい家庭の子どもたちなのだ。
人海戦術を重視し、部隊を農作業や土建現場にも動員している北朝鮮軍は、人員の数を揃えるため女性の兵役も強化しているが、あまりうまく行っていないとされる。
こんな現状に加え、ロシアでの犠牲が国内に伝われば、兵役忌避はいっそう強まるだろう。