昨日起こったテロすべての源流はアレッポにある

12月21日(水)16時0分 ニューズウィーク日本版

<シリアのかつての商業中心地の破壊は、これから中東を——そして欧州を襲うさらにおそろしい事態の前触れだ>

 12月19日は最悪の1日だった。アンカラではトルコ人の男がロシア大使を射殺した。ベルリンでトラックが群衆に突っ込んだ事件は、昨夏ニースで起こったトラック突入テロの恐怖を彷彿とさせる。国連安全保障理事会は、アレッポから住民が安全に避難できるようにする監視団を送る決議を採択した。ただし、骨抜きにして。

 これらの一連の出来事は、1914年のサラエボを思い起こさせる。ガヴリロ・プリンツィプという名の若いセルビア人の暗殺者がフェルディナント大公を殺害したサラエボ事件は、第一次世界大戦の引き金になった。

 19日の様々な出来事に共通するキーワードは、アレッポだ。アレッポの陥落と、その後に起きていることの両方が絡んでいる。外交問題評議会会長のリチャード・ハースは、「アレッポが陥落し、ISがモスルとラッカを失いつつあるいま、(アレッポの出来事は)これから起きるさらなるテロの前触れとなる可能性が高い」と予測している。

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骨抜きの監視決議

 ハースは正しいかもしれない。19日にはロシアがついに、アレッポからの市民退避を国連が監視できるようにするための安保理決議案に合意した。表面上は良いことのように思える。安保理はシリアをめぐって長らく分裂状態にあり、ロシアと中国は、反政府勢力の助けになりそうな決議には片っぱしから拒否権を行使してきた。だが、フランスがまとめた今回の決議案には、実際にはほとんど重みがない。監視団は国際休戦監視部隊でも平和維持軍でもなく、退避の際に起きた戦争犯罪を記録できる人権担当官でさえない。シリア政府の協力に全面的に依存することになるのだ。

 ある外交筋は、微妙な話題であるためとして匿名を条件に取材に応じ、本誌に次のように語った。「ロシアのおかげで、安保理決議は、現地の軍隊に指揮権を与えるという中途半端なものになった」

 監視団は、アレッポ東部に到着する前に、どこかの検問所で足止めを食らうかもしれない。シリア政府軍が監視団の前進を阻む可能性もある。

「また、監視団をダマスカスからアレッポへ送るための書類の処理に......数時間か、数日かかるかもしれない」と、ある国連幹部は語っている。「書類がダマスカスのデスクの上に置かれているあいだに、いろいろ悪いことが起きる可能性もある」

 国連事務総長の報道官を務めるステファン・デュジャリックは、日課の記者会見の際、監視団の人数や派遣時期に関するコメントを避けた。シリアの現場でプロセスを詰めているところだ、とデュジャリック報道官は述べた。



 一方、欧州では、アレッポ陥落後の最初のおそろしい波紋がリアルタイムで広がっている。それはベルリンのクリスマスマーケットへのトラック攻撃という形をとり、12人が死亡した。なぜドイツなのか? アンゲラ・メルケル首相は、欧州の大部分が排外主義に傾いているこの時代に、難民保護の砦になってきた。

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 シリア危機の発生後、トルコから国境を越えて欧州へ向かう難民が殺到するなか、ドイツは欧州大陸のほかのどの国よりも多くの難民を受け入れてきた。メルケルは、フランスの極右政党「国民戦線」党首マリーヌ・ルペンなどの右派指導者たちとは対照的に、寛容の精神を訴えてきた。だがそれは逆にドイツの極右勢力を勢いづかせ、メルケルは最近、人権擁護の姿勢を後退させている。顔を完全に覆うタイプのブルカの着用禁止を支持したうえ、難民に広く門戸を開いてきたこれまでの「開放政策」は今後とらないと約束した。当然ながら、それはイスラム過激派の怒りを買った。

1つの町がまっ平らに

 だが、19日の混乱と死は、さらなる広がりを見せた。トルコでは、非番の警察官がロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使を射殺した。容疑者は警官隊に射殺される前、「アレッポを忘れるな、シリアを忘れるな」と叫んだ。アレッポで多くの民間人を殺したロシアへの報復攻撃とも受け取れる。ドイツのトラック突入テロと同じく、ローンウルフ(一匹狼)による犯行か、ISIS(自称イスラム国)またはアルカイダの下部組織による犯行か不明のままだ。

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 こうした攻撃は、すぐには終わらないだろう。だが、アレッポがロシアの空爆で徹底的に破壊され、まっ平らの駐車場さながらの姿にされてしまったこと、そしてその間世界のほとんどが沈黙していたことは心に留めるべきだ。そこで生きる人たちを見捨てたのは我々はなのだ。


ジャニーン・ディ・ジョバンニ

ニューズウィーク日本版

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