12歳女児が落ちた残酷なワナ…金正恩「拷問部隊」の蠢動

2019年12月29日(日)6時41分 デイリーNKジャパン

今年4月から5月にかけて、2カ月の間に約40人もの脱北者が中国で摘発される事態が発生した。韓国または第三国を目指して脱北して中国にたどり着いたものの、現地公安当局に逮捕されたのだ。


たとえば、韓国・朝鮮日報系のTV朝鮮は9日、12歳の女児を含む20人の脱北者が中国公安当局に逮捕されたと報じた。20人のその後の消息は明らかになっていないが、まず間違いなく北朝鮮に強制送還されたはずだ。


送還された脱北者を待ち受けているのは、過酷な刑罰と虐待だ。



一方、デイリーNKの情報筋によると、5月29日には場所は不明ながら3人が、同月15日には瀋陽で3人、21日には広西チワン族自治区南寧で13歳、18歳の青少年を含めた4人、同日に瀋陽で2人、吉林省通化で2人の脱北者が逮捕された。また、同月25日には瀋陽で男性2人、女性2人がアジトにいたところを公安に踏み込まれ逮捕された。


この時期に摘発される脱北者が急増していることについて前出の情報筋は、「温かくなって山に身を隠すのが楽になったため、脱北が増えるのはいつものこと」と気候を第一の理由に挙げた。次いで「3月10日の最高人民会議代議員選挙で当局の住民監視が厳しくなり、身動きの取れなかった人々が一気に動き出して、4〜5月に川を渡る人が急増した」という分析を示した。


しかしどうやら、摘発急増の背景は時期的なものだけではない。


脱北者の救出活動を行っているカレブ宣教会のキム・ソンウン牧師は、中朝国境から遠く離れた南寧で逮捕者が出たケースについて尾行された可能性を指摘し、携帯電話の位置情報を追跡して逮捕作戦が行われることが増えていると述べた。


一方、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は5月2日、複数の消息筋の話に基づき、北朝鮮当局の指図を受けた北朝鮮人が、国境を越える人々のグループに浸透して脱北者とブローカーのネットワークを把握し、中国当局が一網打尽にする事例が増えていると伝えた。


北朝鮮でこうした作戦を担当するのは、国家保衛省である。同省は拷問や公開処刑、政治犯収容所の運営などを担当する、泣く子も黙る秘密警察である。


中国は脱北者を難民ではなく不法入国した経済移民とみなしており、摘発し次第北朝鮮に強制送還している。そして、国家保衛省は要員を中国に送り込み、公安当局と協力させているのだ。


同省は近年、中国に潜伏する脱北者を摘発したリ、韓国に逃れた脱北者を強制的に帰国させたりするオペレーションに血道を上げてきた。


しかしここへ来て、中国当局は、人身売買などにより中国人男性と結婚するようになった脱北女性らを、本人が望まなければ北朝鮮に送還せず、そのまま定住させる方針に転換した可能性が指摘されている。人身売買も人権侵害ではあるが、虐待を知った上での送還も重大な人権侵害に違いはなく、この点に対して中国当局は国際社会の批判を浴びてきた。


中国当局が批判に耐えられなくなり、方針を転換したのだとしたら、日本を含む各国メディア、人権団体による問題提起の、大きな成果だと言えるかもしれない。

デイリーNKジャパン

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