新芽先輩に聞く、クラウド活用のノウハウ 第1回 クラウドの選択肢

1月16日(木)11時1分 マイナビニュース

ここはデルEMC商事IT企画部。今年からIT企画部に配属された英治くんが頭を抱えています。

さて、最近頻繁に耳にするようになったVMware Cloud on AWSや、Azure Stackという言葉に対して、冒頭の様な悩みを抱えている読者も多いのではないでしょうか。本連載の初回のテーマとして、これら2つを含むプライベートクラウドとパブリッククラウドについて、どのような種類があり、それぞれどういった特徴があるかを解説します。

図1は採用されているテクノロジーカットで、パブリッククラウド、プライベートクラウドに分類したものです。

従来、VMwareはプライベートクラウドを中心に、Azure、AWS、GCPはパブリッククラウドとして提供されていたテクノロジーです。近年ではパブリッククラウドにおいてもVMware環境が利用可能なサービスが提供され始め、一方プライベートクラウドでもAzure、AWSのテクノロジーが利用できる製品・サービスが提供されています。
1. 従来のパブリッククラウドとプライベートクラウド

パブリッククラウドは自社では設備を持たずインターネットや専用線接続を介して利用するサービスであり、主要なサービスとして「Microsoft Azure」、「Amazon Web Services」そして「Google Cloud Platform」が挙げられます。いずれのサービスもサーバーリソース、ストレージリソース、ネットワークリソースといったIaaSの他、データベースやWebアプリケーション実行基盤を始めとする多くのPaaSが適用されていますが、クラウド事業者ごとに利用されるテクノロジーは異なります (図2)。

従来のパブリッククラウドサービスは必要なタイミングで必要なリソースを従量課金で利用できる点が一般的にはメリットとして挙げられますが、近年ではIoTやAI等の最新技術を手軽に利用できる点も大きなメリットと言えます。

次にプライベートクラウドは自社の敷地内やハウジング契約しているデータセンターに自前で構築するクラウド環境であり、プライベートクラウドを実現する主要な製品がVMware vSphereをはじめとする「VMware vCloud Suite」製品群です。

PaaSを含む様々なリソースが提供されるパブリッククラウドとは異なり、プライベートクラウドで提供されるリソースは一般的にはIaaSが中心ではありますが、プライベートクラウドは自社のオンプレミス環境に自前で構築するため、求めるサービスレベルやセキュリティポリシー、ガバナンス要件に応じた自由な構成が可能となる点が、プライベートクラウドのメリットと言えます。

(※) ホスティング事業者が提供する自社専用のクラウド環境についてもプライベートクラウドと分類することがありますが、本連載ではホスティング事業者が提供のクラウドはマネージドクラウドと呼ぶこととし、自前で構築するプライベートクラウドとは区別します。
2. パブリッククラウドでVMwareが利用可能なサービスと主なメリット

パブリッククラウドでVMwareが利用可能なサービスのうち代表的なものは昨年よりAWS東京リージョンでも提供されている「VMware Cloud on AWS」と、今年5月のDell Technologies Worldで発表された「Azure VMware Solutions」、そして今年7月29日にGoogleが発表した「Google Cloud VMware Solution」です。いずれもVMware Cloud Foundationを使用してネイティブのVMwareをパブリッククラウド上で利用可能としたサービスであり、既存のVMwareベースのプライベートクラウドと接続することで、利用者は同一のツールを使いプライベートクラウドとパブリッククラウドの間で統合的な運用管理やワークロードの移行を行うことができます。

これらのサービスを利用してVMwareをパブリッククラウド環境で利用することによるメリットは、大きく3つあります。

1つ目のメリットは「容易なクラウド移行」です。プライベートクラウド上のVMware環境と同等のテクノロジーを利用したているため、既存のアプリケーション資産を変えることなく仮想マシンごと移行することが可能であり、ミニマムな移行費で既存アプリケーションのパブリッククラウド移行を実現できます。VMware Cloud on AWSにおいては、移行ネットワークをAWS Direct Connectで接続する等の条件を満たすことでvMotionを使用した移行も可能です。

2つ目のメリットは「インフラ運用からの解放」です。従来のプライベートクラウドでは利用者自身が実施していたサーバー、ストレージ、ネットワーク装置といった物理ハードウェアの管理や、VMwareのインストール、パッチ管理、障害復旧をクラウド事業者側で実施します。利用者はインフラの運用管理から解放され、従来はインフラ運用に費やしていた工数をよりビジネスに近い上位のレイヤーに投入することが可能になります(図3)。

そして3つ目のメリットは「低レイテンシーでのパブリッククラウド連携」です。従来のプライベートクラウド上のVMware環境とパブリッククラウド上の各種サービスとを連携する場合に問題となるのが、環境間の距離によるレイテンシーです。VMwareをパブリッククラウド上で利用することにより、低レイテンシーでAzure、AWS、GCPネイティブのIoT、AIといった最新技術との連携が可能となります。また、システム間のデータ通信量が多い場合は、パブリッククラウドからのダウンロード通信料が問題になるケースもありますが、「VMware Cloud on AWS」では同一リージョン・同一AZ同士であれば、VMware環境とネイティブなAWSリソース間の送受信通信料は発生しないためこの点でも有利です(図4)。

3. プライベートクラウドでパブリッククラウドのテクノロジーが利用可能なサービス・製品と主なメリット

パブリッククラウドのテクノロジーをプライベートクラウド環境に拡張して利用できるサービス・製品が、既に広く利用されている「Microsoft Azure Stack」と、昨年のAWS re:Inventで発表された「AWS Outposts」(提供日未定)です。いずれもAzure、AWSのネイティブリソースをプライベートクラウド環境で利用できるサービスであり、ネイティブなAzure、AWSと同一の管理インタフェース、APIを利用した統合的な運用管理や、「Microsoft Azure Stack」「AWS Outposts」から従来のパブリッククラウド上のAzure、AWSのリソースとシームレスな接続が可能となります。なお、GCPのリソースをプライベートクラウド環境で提供可能なサービスは、本稿執筆時点では発表されていません。

パブリッククラウドのテクノロジーをプライベートクラウド環境で利用するメリットは2つあります。

1つ目のメリットは「オンプレミス環境にデータが格納される」です。セキュリティポリシーやガバナンス要件により、社外へのデータの持ち出しができないシステムについてはAzure、AWSへの移行が認められないケースがありますが、「Microsoft Azure Stack」「AWS Outposts」を利用すればオンプレミスのプライベートクラウド環境内にデータを格納しつつ、Azure、AWSが提供する最新のテクノロジーを利用することが可能となります(図5)。

2つ目のメリットは「運用ツールの統合」です。パブリッククラウド環境はクラウド事業者が提供する管理インタフェース、APIを利用して各種運用管理を行うため、既存プライベートクラウド環境とは別の運用ツール、別の運用スキルが必要となります。最新技術の活用のためパブリッククラウド化を推進する一方で、セキュリティポリシーやガバナンス等の理由によりプライベートクラウドを残さざるを得ない場合には、プライベートクラウド環境として「Microsoft Azure Stack」「AWS Outposts」を採用することで、運用管理の統合が期待できます。

(※) 本連載に登場する企業名、人物名はすべて架空のものです。
○今回のまとめ

従来はAWS、Azure、GCPはパブリッククラウドとして提供され、VMwareはプライベートクラウドで利用されてきましたが、近年ではパブリッククラウドでVMwareを利用可能なサービスや、プライベートクラウドでAzure、AWSを利用可能な製品が提供されています。

[ 著者紹介 ]

京極 純一
EMCジャパン株式会社 ITXコンサルティング部 コンサルタント

国内大手ベンダー系SIerでサーバー、ストレージ、ネットワークを中心としたインフラの要件定義から設計、構築に約10年間携わった後、2016年にEMCジャパンへ入社。以来、前職の経験を活かし企業のインフラ全体最適や、プライベートクラウド導入支援、パブリッククラウド化検討支援にアーキテクトとして従事している。

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