進む核融合研究 - ITERと原型炉の開発を担う六ヶ所核融合研究所

1月16日(木)8時0分 マイナビニュース

六ヶ所核融合研究所とは?

フランスで建設が進む「国際熱核融合実験炉(ITER)」。2025年からの運転開始を目指し、進捗率は2019年末時点で約65%と発表されており、また国内においては、サテライト・トカマクとして那珂核融合研究所JT-60SAが2020年3月完成予定と、世界7極による計画は順調に進んでいる。実は国内にはもうひとつ、ITERとその次の原型炉開発を担う研究所がある。六ヶ所核融合研究所だ。

六ヶ所核融合研究所は、青森県にあり、日欧国際協力の下で核融合エネルギーの早期実現を支援する研究開発を進めている。まず触れておきたいのはBA活動(Broad Approach、国内では幅広いアプローチとも記載される)だ。BA活動は日本と欧州連合間の枠組みで、ITER計画や下記する研究開発などを幅広く並行して進めるもので、現在はフェーズ2に入っている。

六ヶ所核融合研究所の活動内容

六ヶ所核融合研究所は、BA活動の事業として原型炉概念設計および研究開発、ITER遠隔実験研究、核融合計算シミュレーション研究を行うIFERC事業、原型炉に必要な材料開発のための核融合中性子源の設計・開発を行うIFMIF/EVEDA事業があるほか、ブランケットの開発も行う。ITER用のブランケットについては、参加国間による性能競争になるとのことだ。またJT-60SAもBA活動のひとつであり、こちらはサテライト・トマカクとしてITERに先行して実験を開始し、2020年9月にファーストプラズマを予定している。ともあれ、ITER計画を進めつつ、原型炉に向けての基礎開発も進めているのが六ヶ所核融合研究所になる。直近では原型炉の基本概念の明確化を終えたばかりだ。

IFERC事業のコアとして用意されているスーパーコンピューターは、核融合開発専用となっており、核融合プラズマのシミュレーションを主に行なう。現在は、「JFRS-1(理論性能4.2PFLOPS、主メモリ256TB)」を導入しており、ITERの乱流シミュレーションに耐える性能となっている。またITERやJT-60SAの予測だけでなく、材料開発のデータ解析、原型炉概念の設計解析なども担うものだ。ちなみにJFRS-1の愛称は「六ちゃん-II」。なぜ1なのに、愛称ではIIなのかと素朴な疑問をぶつけてみたところ、初代六ちゃんは、国外機関が調達したもので、国内機関での調達としては六ちゃん-IIが初号機になるため、JFRS-1だそうだ。

2019年末の取材時点で開発が進んでいたのは、IFMIF/EVEDA事業。国際核融合材料照射施設では、材料開発のための核融合中性子源の建設が進んでいる。原型炉と同様の高速中性子を発生させて、原型炉に必要な材料開発を進めるためのもので、加速器としては125mA、40MeVと世界で類を見ない大電流のIFMIF原型加速器(LIPAc)がある。2019年7月にパルス運転に成功しており、取材時点では次期実験に向けての改修が進められていた。

なぜ先行して進めているのかというと、ITERを経て原型炉に着手となった際のタイムラグを無くすためだ。原型炉で想定される中性子環境に関するデータは少なく、長期間の運用に耐える材料開発を進めておけば、それだけ早く社会実装にコマを進められる。

また同施設は先進核融合中性子源(A-FNS)の概念設計も進めている。中性子産業に利用し、医療用RIの製造や半導体製造、中性子ラジオグラフィーなどの産業を興すことを展望に含み、池田所長は、A-FNSと後述するリチウム精製・電池リサイクル、そして六ヶ所村に原型炉の建設実現をビジョンとして提示している。

IFMIF/EVEDA事業は日欧のメンバーで構成されており、事業長フィリップ・カーラ氏の尽力が大きいという。事業スタート当時はお国柄の違いにより、スタッフ間でうまくコミュニケーションができていなかったそうだ。間に立ってみたり、様子をみたり、ときには書道をしたりなどで結束力を高めていき、とてもいいチームになっているという。ラグビーワールドカップ2019で飛び交ったONE TEAMになぞらえて、ここでもONE TEAMという単語が何度か出ていた。IFMIF原型加速器での目標達成まで2年かかっており、フィリップ・カーラ氏は100以上の制御値の調整があり、日欧の調和がなければ達成できなかったことだと語った。

IFMIF原型加速器とは何か?

IFMIF原型加速器を見ていこう。原型とあるように、IFMIF加速器の工学実証を行なうもので、部分的に構築したものだ。IFMIF加速器自体は、ふたつの重陽子線形加速器、液体リチウムターゲット、照射設備からなる。

原型加速器は入射器からビームダンプまで36mの加速器になり、世界最長9.8mのRFQ(高周波四重極加速器)が特徴的であり、125mAの重陽子ビームを高周波電場で収束しながら加速すると重要な部分でもある。

また8系統高周波源をシンクロ・フィードバッグ制御することで、1600kWの大電力供給も実現。このシンクロ・フィードバッグ制御システムは、CERNで開発された高精度時刻同期時技術とFPGAを融合し、8系統の出力と位相のシンクロ・フィードバッグ制御用として開発されたもので、100億分の1秒でのシンクロを実現している。開発はスペインエネルギー・環境・科学技術研究センターが担当。

海水からリチウムだけを取り出す技術

原型炉R&D棟では、ブランケットに使用するベリリウム金属間化合物製造設備やRI実験室、材料実験室などを見ることができた。原型炉R&D棟では、リチウム回収技術開発も進められており、海水からリチウムのみを回収する特殊膜の開発に成功済みでパイロットプラントが計画されている。また使用済みリチウム電池のリサイクル事業を見据えた研究も進められており、すでに述べたように派生産業への動きが分かりやすい。ともあれロードマップも見ると、2020年以降に本格的に稼働する印象が強くあった。

取材時、ITER用ブランケット開発棟の建設が始まろうとしていた。2022〜2023年までに完成の予定で、冒頭で触れたロードマップを踏まえると、今後、より大きな動きが続いていくため、折りを見てレポートしていければと思う。

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