アップルの懸念が現実に、EUでiPhone用ポルノアプリが登場した背景
2025年2月7日(金)20時45分 マイナビニュース
iPhone用のポルノアプリがEU域内で公開され、世界中を驚かせました。しかし、このアプリはアップルが運営するApp Storeではなく、第三者が運営する外部アプリストアで公開されたもの。アップルの目の届かない外部アプリストアで勝手にリリースされたもので、当然アップルはこのアプリを承認していません。
「アップルやグーグルのような米国の巨大IT企業(プラットフォーマー)は外部アプリストアの設置を許可するように」とEUが義務づけたデジタル市場法(DMA)の施行を受け、アップルの審査を経ずにアプリが公開できるようになったことが今回のポルノアプリ登場につながったとして、アップルは強い懸念を示しています。
○予測されていたサイドローディングの弊害
今回EU域内で入手できるようになったのは、iPhone用のポルノアプリ「Hot Tub」。アップルによると、Hot Tubのアプリには「ティーン」のチャネルや、ポルノサイト「Porn Hub」から流用されたコンテンツも含まれているとしており、子どもにとって有害な内容であることは間違いなさそうです。
このポルノアプリは、アップルのApp Storeではなく、アップルではない第三者がEU域内で開設したアプリストア「Alt Store」で公開されました。iPhoneにApp Store以外のアプリストアがあるの?と思うかもしれませんが、EUでは2023年5月に施行したデジタル市場法(DMA)により、アップルなどのプラットフォーマーに対し、外部アプリストアを許可するよう義務付けられました。すなわち、DMAの施行がAlt Storeの開設を許し、Hot Tubアプリの公開につながったといえます。
Hot Tubの登場を受け、アップルは以下のような声明を出しました。
「Appleは、この種のハードコアポルノアプリがEUの利用者、特に子どもたちに及ぼす危険性のリスクについて強く懸念しています。このようなアプリは、Appleが10年以上かけて世界最高を目指して築いてきたエコシステムに対する消費者の信用と信頼を損なうものです。当該マーケットプレイスの開発者による虚偽の声明に対して、私たちは断固としてこのアプリを承認しておらず、私たちのApp Storeで提供することも決してありません。実のところ、Appleは欧州委員会によって、ユーザーの安全性の確保に関してAppleと同じコミットメントを果たしていない、AltStoreやEpicのようなマーケットプレイス運営者によるアプリ配信を許可するよう義務付けられているのです。」
アップルは、かねてからApp Store以外でアプリが入手できるようにするサイドローディングの危険性を訴えていました。専門の担当者がアプリの危険性を検証するアップルの仕組みを通らずにアプリが公開できてしまうからです。アップルは2024年、外部アプリストアを許可するDMAを遵守することで「詐欺や悪徳商法、不正行為などを含むアプリや、不法、不快、または有害なコンテンツにユーザーをさらすアプリについて対応しづらくなる」とコメントしていました。その懸念が現実になった形です。
Hot Tubを配信しているAlt Storeですが、子どもの間で高い人気を誇るゲーム「フォートナイト」(Fortnite)も配信しています。Alt StoreはEpic Gamesが資金提供をしているからです。子どもがフォートナイトの入手のためにアクセスするアプリストアでポルノアプリがダウンロードできる状態になっているのは、好ましい状況とはいえません。
現時点で、日本では外部アプリストアを利用できないのでこのような問題は発生しませんが、日本政府もEUにならって外部アプリストアの開放をプラットフォーマーに義務づけることを検討しています。EUと同じ状況に陥らないよう、日本政府には慎重な判断を期待したいところです。