ロボットが介護を担う未来、実現は近い?

2月11日(月)11時9分 Forbes JAPAN

医療関連のテクノロジーは恐らく、スキル不足の著しい分野で最もその価値を発揮する。これは特に社会福祉分野で顕著であることから、英議会科学技術局(POST)が社会福祉でのロボット技術利用についてまとめた最近の調査報告書は、興味深い内容となっている。

報告書によると、社会福祉分野では大きな支援が必要とされているものの、ロボットがそのギャップを埋めるための主要な役割を果たすまでの道のりは長いという。報告書は次のように指摘している。

「社会福祉向けのロボットやロボット機器は、その多くがまだコンセプト段階や設計段階にあるようだ。重要な問いとして、新しいロボットやロボット技術が既存の社会福祉環境に組み込み可能であるか、現行技術と共存可能なのか、あるいは現行技術を完全に置き換えるものなのか、という問題がある」

この分野で進行中の最大のプロジェクトの一つが、欧州連合(EU)が支援する「GrowMeUp」だ。同プロジェクトで開発されるロボット「GrowMu」は、複数の先進的アルゴリズムにより、介護の対象者や環境の変化に順応する。これにより対象者の日課を理解し、その日課の改善方法を考案できる。例えば、食生活の改善を提案したり、転倒の危険性を警告したりできる。

「適応学習(アダプティブラーニング)や多目的意思決定のアルゴリズムを組み込んだロボットは、ユーザーの会話や行動のパターンを学習し、アクションが必要な状況を認識できる」と開発チームは解説している。

患者と共に成長

例えば、GrowMuは顔認識や会話を通じ、各個人のスケジュールなどのニーズを記憶して、必要な時間にリマインダーを発することができる。患者と共に「成長」するようプログラムされており、患者の生活の質を維持するため、新しいエクササイズを生活に取り入れたり、社会活動参加の手配をしたりといったライフスタイル改善を提案できる。

GrowMuはクラウドベースのサービスに接続するため、ユーザーは莫大なデータを利用できるほか、介護スタッフのみならず、友人や同僚、他の高齢者らも参加する社会福祉ネットワークへもアクセスできる。これを通じ、患者のニーズに合った1日の予定を組むことができる。

「私たちは確実に、社会ロボットを社会へと近づけた。知的対話により、高齢者は簡単かつ直感的に、自然な発話を通じてシステムとやり取りができる」と開発チームは言う。

しかし最も興味深いのは、こうしたロボットがどのように受け入れられるかという部分だろう。高齢者は新しいテクノロジーを避けるものと思い込みがあるが、実際はそうでもないことが調査から示されている。

医学誌「Interaction Studies」に最近発表された研究結果によれば、高齢者はヘルパーとしてのロボットを喜んで受け入れるものの、ロボットに何でも委ねることには不安を感じている。高齢者とロボットとの関係で鍵となったのは、高齢者がロボットに関して形成したメンタルモデルだった。つまり、高齢者がポジティブ、あるいはネガティブな思考をもってロボットとの関係を始めた場合、両者の関係に大きな影響が出ることが分かったのだ。

「インターフェイスを自律性の面でほとんど人間に近い設計にすると、高齢者は不安や懐疑などネガティブな感情の反応を見せる」と研究チームは説明する。「しかし、それを考慮に入れておけば、高齢者がロボットの介護を受け入れる分野も実際に幾つかある」

英ワイト島で実施された類似研究では、家族の介護を行う人を支援する新技術について、人々は圧倒的にポジティブな反応を示した。特に、力仕事をサポートし介護者の関節への負担を軽減するなど、介護者の身体的能力を補うようなロボットは歓迎される傾向にあった。

介護ロボット

もちろん、だからといって介護ロボットが近々、近所の介護施設に登場するというわけではない。しかし、その方向への興味深い動きが見られるのも事実だ。前出の英議会科学技術局の報告書では、介護にロボットを導入することで60億ポンド(約8500億円)のコスト削減が期待できるとされる。

特に、現在介護サービスが行き届いていない分野は大きな恩恵を受ける可能性がある。テクノロジーの導入により、スタッフは人間でなければできないような精神的ケアにより多くの時間を使えるようになる。しかし報告書では同時に、ロボットが人間の補助ではなく、人間に代わって導入されることで、介護の質が低下する懸念も指摘している。

さらに、介護施設へのロボット導入に際しては、効果的なロボットとの協働方法に関する職員研修も必要だろう。報告書では、そうしたスキルの取得が必要になった場合、ロボット導入で得られる効率性が相殺されてしまう可能性があると認めている。

多くの新テクノロジー同様、ロボットが介護現場で一般化するまでには、ハッカー対策、プライバシー保護、ロボットによる意思決定が負うべき責任に関する法的課題など、越えるべきハードルも多い。私個人としては、ロボットがヘルスケア要員として本格導入されるのは時間の問題だと思う。

Forbes JAPAN

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