トヨタが街を造る! 静岡県裾野市に建設するスマートシティ構想「コネクティッドシティ」の全貌

2月25日(火)13時30分 週プレNEWS

1月6日、トヨタの豊田章男社長が「CES2020」に登壇。街造りに挑むことを高らかに宣言し、話題をかっさらった
1月6日、トヨタの豊田章男社長が「CES2020」に登壇。街造りに挑むことを高らかに宣言し、話題をかっさらった

新年早々、アメリカ・ラスベガスでトヨタが打ち出した未来都市構想が話題だ。この巨大プロジェクトの中身とは?  現地に飛んだ自動車ジャーナリストの小沢コージが濃厚解説する!

■ネットでつながる実証実験都市の全貌

マジか!? クルマ造りで超儲かってるトヨタが街を造るだとぉ! 世界最大の米デジタル見本市「CES2020」で世界を驚かせた大ネタが、トヨタのスマートシティ構想「コネクティッドシティ」だ。

静岡県裾野市にあらゆるモノやサービスが常時ネットとつながる巨大IT都市を建設。来年初頭には建設を開始するというスピード感で、約2000人の住民を集める予定だ。ちなみに建築家も超大物で、ニューヨークの2 ワールドトレードセンターや米Googleの新社屋を設計したビャルケ・インゲルス氏。

だが、CESのトヨタブースにあったのは畳約一畳のモックアップのみで、まだまだ絵に描いた餅感は否めなかったし、トヨタが街を造るという計画に疑問を持つ関係者も複数いた。

実際、会場にいたオザワと旧知の仏大手サプライヤーの開発トップは「トヨタの発表は本当なのか? いったい誰がお金を出すんだ。安倍(総理)か?」とオザワに素朴な疑問をぶつけてきたし、とあるITジャーナリストは「(トヨタがスマートシティを)造れるものなら造ってみれば」と冷ややか。

「CES2020」のトヨタブースに設置されていた実験都市の模型を、冷ややかに眺めるプレスも多かったとか
「CES2020」のトヨタブースに設置されていた実験都市の模型を、冷ややかに眺めるプレスも多かったとか

確かにクルマ造りをほぼ専業とするトヨタがリアルな街を造る計画は誇大妄想気味の初夢にも思える。一方でオザワは、昨年5月に品川で取材したトヨタの新会社設立の記者会見を思い出していた。

ソイツはプライム・ライフ・テクノロジーズ社。パナソニックとの共同出資で、パナソニックホームズ、トヨタホーム、ミサワホームなどの住宅事業会社を傘下に収め、街造り、新築請負、リフォーム、住宅内装、海外事業などを行なうというものだった。正直、当時は「トヨタが住宅事業!?」と違和感しかなかった。

しかし、1月6日のCESでの発表後、豊田章男社長が静岡県知事と裾野市長の元を訪れ、この計画を説明。両者はその場で協力を約束した。

こうした流れを受けて、オザワは確信した。コイツは絵に描いた餅なんかではなく、間違いなく用意周到な計画であると。

建設予定地は2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本東富士工場跡地である。1100人の従業員は東北の工場への異動が決まっているが、約70万㎡、東京ドーム15個分の土地の再利用は容易じゃないはずだ。

しかし、実験設備を兼ねたコネクティッドシティならば、居住することを見込む2000人なんて、東富士研究所の家族を集めればすぐだし、加えて、計画に新規参画したいエンジニア一家が移れば満員御礼は確実だろう。

裾野市に展開される実験都市のイメージCG。eパレットは人の輸送やモノの配達、さらに移動型店舗として活用される
裾野市に展開される実験都市のイメージCG。eパレットは人の輸送やモノの配達、さらに移動型店舗として活用される

だが、一方でそんな簡単に先進都市開発ができるのかという疑問も残る。そこでトヨタ関係者を直撃すると、コネクティッドシティの開発部署はまだ立ち上げていないというのだが、実はすでに2011年に愛知県豊田市で実証実験住宅「スマートハウス」を67戸発売! EVやPHVと自宅の太陽光パネルをネットワーク化し、家とクルマが電気でどれだけ動かせるかの実験を始めているというじゃないか。 

今回発表した先進都市では、さらに通信機能を強化した自動運転車での住民送迎や宅配サービスなどの次世代技術を実証するという。まさに今後やって来る自動運転技術とMaaS(マース/モビリティ・アズ・ア・サービス)の問題を一気に解決しようとするオイシイとこ取り計画なのだ。

というのも、今の自動運転バブルのプチ崩壊ぶりを見てもわかるとおり、「2020年は自動運転の躍進の年」と位置づけられ、日本政府もレベル3の運転支援解禁に踏み切ったものの、いまだ法的には支援時の事故はドライバーの責任のままだ。要は現状のレベル2の延長にすぎない。事故やイレギュラーが怖すぎて自動運転の実験なんぞは街中ではやれっこない。

その点、コネクティッドシティは自らを「living laboratory(暮らす研究室)」と宣言しているだけあり、まず、道路は3種類に分ける。ひとつはeパレットなど完全自動運転かつゼロエミッション車のみが走行する車両専用道、もうひとつは歩行者とスピードの遅いパーソナルモビリティが共存する道、最後は歩行者専用道である。

要は、全住民が認める自動車専用道ならいくらでも自動運転実験ができるし、プロムナードを走る超遅い自動運転バスも試せる。一方、自動宅配ネットワークは地下につくられるというが、その気になれば自動運転車やドローンを使いまくってのMaaS実験も可能だろう。

ニッポンは公道実験しにくい国として世界的に有名だったが、今回のトヨタのプロジェクトは「だったら実験できる街を造っちゃえば?」って話なのだ。興味深いのは街の構造。建物はカーボンニュートラルな木材で造り、家屋の屋根すべてに太陽光発電パネルを設置する。

こちらもイメージCG。実験都市では街に住む人間、建物、クルマなどモノとサービスが常時ネット接続でつながるという
こちらもイメージCG。実験都市では街に住む人間、建物、クルマなどモノとサービスが常時ネット接続でつながるという

トヨタ得意の燃料電池プラントを含めインフラはすべて地下に設置する。そこには雨水ろ過システムもあり、水道を引かなくていい。

つまり、太陽光と地下燃料電池の発電だけで街の電気が賄えるならば、完全独立の2000人ロビンソン・クルーソー生活も可能! 停電や原発とはおさらばのエコシティの出現だ。マジでスゲェよ!

同時に家自体もインテリジェント化し、太陽光発電は当たり前、AIセンサーにより常に住民の健康状態をチェック。ニッポンは脳卒中、心疾患、溺死、転倒転落で亡くなる人が年間約32万人と交通事故死者や自殺者よりも多い。だが、自宅AIセンサーがあればその何割かは救える。 

ちなみにトヨタは同都市の開発に向け、すでに参画企業や研究者の募集をスタートしている。世界中の企業や、大学の研究者などが参加するはず。もちろん、オザワも試住をトヨタ広報部に直訴するつもりだ。いや、いっそ買って住むか!

取材・文・撮影/小沢コージ 写真協力/トヨタ自動車

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