新型コロナ対策で注目集める「病院船」について正しい理解を (1) 新型コロナ対策で派遣される米国の病院船のミッション

3月27日(金)11時4分 マイナビニュース

COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス肺炎)の感染拡大が続いている中、日本の朝野では「病院船が必要」という声が上がっているようである。大規模災害が発生する度にこの種の話が出てくるようにも思えるが、そもそも、「病院船」というものについて正しい理解はされているのだろうか。
○米海軍の病院船はCODVID-19感染者を受け入れない

現時点で、「病院船」に分類される船を保有・運用しているのは、基本的に政府機関、なかんずく海軍に限られる。米海軍のマーシー級もそれだ。

最近、米海軍は米国内におけるCOVID-19の感染拡大を受けて、そのマーシー級病院船も出動させることにした。西海岸に1番艦のマーシー、東海岸に2番艦のコンフォートが配備されており、両方とも出すという。そこで、注目していただきたいのが、米国防総省がリリースした以下の記事だ。

USNS Mercy to Care for Non-COVID-19 Patients in Los Angeles

記事のタイトルには「Non-COVID-19」とある。このことからすると、COVID-19に感染した患者以外をマーシーで受け入れて市中の医療機関の負担を減らし、その分だけCOVID-19に感染した患者に専念できるようにする、ということである。それを裏付けるのが、先の記事で冒頭の段落にある、以下の記述だ。

“to help lift the burden from local medical treatment facilities that need to focus their resources on patients affected by the coronavirus pandemic”
(地元医療施設の負担を軽減して、コロナウイルス患者の治療に専念できるようにする)

というわけで、「COVID-19感染者を受け入れるために病院船を派遣する」という話ではないということがわかる。では、どうして病院船にCOVID-19感染者を受け入れるという話にならないのか。
○軍の病院船は外科がメイン

そもそも、軍事組織が病院船を保有するのは、なんのためなのかということを考えてみて欲しい。もちろん、一義的には戦傷者を受け入れるためであり、それを平時に民生支援や災害派遣にも使いますよ、という話である。そして戦傷者といえば大半は負傷者であり、それは外科の領域である。呼吸器科や内科ではない。

これは病院船に限らず、揚陸艦が備えている医療施設も同様。水陸両用戦はさまざまな戦闘形態の中でも苛烈な部類に属するものであり、それだけ死傷者が発生しやすい。だから、できるだけ多くの兵士の生命を救うために、現場のすぐ近くにいる揚陸艦に医療施設を設ける。その場合にもやはり、主役は外科である。

つまり、軍の病院船はもともと、感染症患者の受け入れを主な任務として想定していないのである。それに、感染症の患者を受け入れるためには、相応の重装備が必要になる。そのことは、結核専門病棟を備えた病院のことを考えれば理解しやすい。

肺結核はCOVID-19以上に感染が広がりやすい疾患である。それだからこそ、感染・発症したら専門病棟を備えた病院に送り込まれて、所定の条件を満たさなければ退院させてもらえない。

そこは、他の病棟とは独立した区画(またはフロア)であり、換気系統にはHEPAフィルターを設けて、中の空気がそのまま外に出ないようにしている。もちろん窓は固定式。自由に開けられたら意味がなくなる。そして患者はそこから外に出られないから、虫歯の治療も売店の販売も、外から病棟内にやってくる。

客船「ダイヤモンド・プリンセス」の一件に際して、「船内での動線分離」が問題になった理由を思い起こしてみてほしい。

結核専門病棟の具体的な施設内容や医療スタッフの保護に興味がある方は、結核予防会がリリースしている
「結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成26年版」の13ページ以降が参考になるだろう。

話を元に戻すと。病院船にしろ揚陸艦の医療施設にしろ、もともと外科医療に重点を置いたものだから、こんな装備にはなっていないのである。筆者が知っているところだと、海上自衛隊のヘリコプター護衛艦「いずも」型には医療施設区画の一角に感染症患者を隔離するための専用病室があるが、これはごくごく小規模なものである。

ではマーシー級はというと、艦内には隔離区画がひとつあるだけで、感染症患者の大規模な隔離には対応しがたい。

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