カレー沢薫の時流漂流 第293回 Uber Eatsがロボット配達、ヒトは「ウバる」を超える労働を強いられる時代に?

2024年4月1日(月)18時20分 マイナビニュース

芸能人には疎い方だが、ユーチューバー、そしてVチューバーにも疎いほうである。
よって人気Vチューバーが知らない内に結婚して離婚して別れた相手に誹謗中傷されていたという、ラップの如くテンポの良い激アツニュースにも「大変そう」という感想しか抱けなかったので、やはりアンテナは日々張り巡らせておくべきなのだ。
そんな私が唯一定期的に見ているVチューバーは「日雇礼子」さんである。
礼子さんはその名の通り、ドヤ街や日雇いバイトの解説をしてくれるのだが、最近バイト解説の締めがことごとく「ウバっといた方がいいやんけ」になっている気がする。
先日まで「ウバれ、カス」と言われても「乳母の募集なんてそうそうないし、俺に子供を預ける奴は親の才能がない」としか思えない僻地の人間だったが、知らない内に我が県にも「Uber Eats」が進出していたようだ。
○ウーバーイーツで、いいんじゃない?
しかし、私ほどになると我が県に進出していたからと言って、我が家に配達してもらえるなどとは錯覚しない、藍染さんにも一目置かれる存在だ。
この現象は出前館に「お前の家に届けられるのは花だけだ」と言われた時に学習済みである。
実際どうなのか、UberEatsのアプリをダウンロードし、登録をしてみたところ、早速ホーム画面に私の住所と「すぐに配達」という威勢のいい文言、さらに友人がUber使用で1000円割引、より快適に使うためのプレミアムプランなど景気の良い話が次々と表示された。
もしかして、この画面には「今すぐ配達できます!」と手を挙げている店舗が羅列される仕組みなのだろうか。
だが、私の周辺店舗は全員膝の上で両こぶしを固く握ってしまっているため、表示できるものがなく、画面の間が持たないので苦肉のクーポンを出してきている可能性が高い。
ただこれは、Uber配達員が誰もいないのではなく、私が無職の分際で早起きなため、店がまだ始業していないせいかもしれない。
無職らしく15時ぐらいに起床して、まずXをチェックしたあと、布団から出ることなくエサを確保しようとUberを立ち上げれば結果は変わっていたかもしれない。
再度調べて見たところ、私の周辺でUberをやっている飲食店は全ジャンルで「6店舗」と判明した。
花しか届けてもらえなかった日々を考えれば、我が集落もメガロポリス化したものだと感慨深くなった。
しかし、さすがに6店舗では注文数も少なく、Uber配達のバイトは土日に子持ち不倫相手からの連絡を待つぐらい気の長い仕事になってしまっているのではないかと思われる。
○自由で新しい最新の働き方をかっさらう、最新ロボット
逆に登録店舗数が多く、注文が多い都市圏であれば、Uber配達員はかなり効率の良いバイトになっているようだ。
先日も、テレビ番組で「節約のために自転車で往復数時間かけて安いスーパーを回っている」という人に対し「その時間Uberをやった方が絶対いい」という身も蓋もないコメントが出され、当人も「子どもにもそう言われてます!」と元気よく答えていた。
Uberバイトの画期的なところは、働きたい時に働きたいだけ働ける、という点ではないかと思う。
出勤日や出勤時間などが決められているわけではなく「今働ける」と言えば、仕事が発注され、それを受けるかどうかも自由である。
隙間時間に働くこともできるし、注文が多い場所なら1日フルで働くことも可能で、慣れて配達が早くなれば実入りもかなり良いらしい。
世の中には定時出社定時退勤、さらにそれを週5で繰り返すという枠にどうしても収まりきらない大器がいるので、そういうタイプが社会に参加でき収入を得る手段として、このような自由な働き方が増えるのはとても良いことである。
そんなUberEatsが東京都内で「自立走行ロボット」を導入すると発表した。
我々に与えられた新しい働き方が、秒でロボに奪われるかもしれない、ということだ。
さすが、即日解雇が当たり前のアメリカ発祥の企業だ、人間に対し手心がない。
確かにUberEatsも、人々に新しい働き方を提供という社会道徳のためにやっているわけではない。
むしろフードデリバリー業界は今も激戦状態であり、より効率化とサービス強化が求められているため、人よりロボの方が良いとなれば、あっさり人の仕事はロボに奪われるのだ。
○目下、最大の問題は人出不足だが……
しかし、今のところロボット導入は、人手不足解消が目的で、人に仕事を奪うのが目的ではないようだ。
ただ、今後人よりロボにやらせた方が早くて正確で安い、となればその限りではないだろう。
だが、レジがセルフになったことで「会計せずにいけるのではないか」という発想がよぎってしまうのと同じように、Uber配達員を襲ってまでダブチを奪ってやろうと考える奴はそんなにいないだろうが、配達ロボが人通りのない所を走っているのを見たら、つい魔が差して配達物を盗ろうとする人間が現れてしまうんじゃないかなど、安全性の問題は懸念される。
とはいえ、治安の悪い国だと、配達員自体が商品をギることも少なくないらしいので、結局、地球上に人間がいる限り、何をしても危険はなくならないのだろう。
ところで、「ロボットに人間の仕事が奪われる案件」だが、ロボットを導入したことで、段差で動けなくなったり、玄関で虫のようにひっくり返っているルンバを救出する仕事など、案外、新しい人間の仕事が創出されてしまうかもしれない。
礼子さんの紹介する仕事も、ロボットが導入されていることが多いが、ロボ特有の融通の利かなさやポンコツ具合も紹介されており、「やはりまだヒトカスは必要」と結論付けられている場合も多い。
実際、今の時点ではどこの業界も「人手不足」を謳っており、ロボがいるから人はもういらない、と言っているところはあまり見かけない。
もちろん企業が求めている「人手」が低賃金で長時間働いてくれる人材なのが人手不足の原因だとは思うが、今のところ「ロボの押してはいけない部分を押す」など、ロボの脚を引っ張るヒトカスでなければ、まだ人間の仕事は残っていると思われる。
ちなみに時間が経ってから再度Uberのアプリを開いてみたところ、確かにUberをやっている店舗は6件あったが、私の家に配達してくれる店はやはりゼロと判明した。

マイナビニュース

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