「手紙」や「黒電話」よりも便利な今のコミュニケーションに足りないものとは 大阪万博のNTTパビリオンを体験して見えたこと

2025年4月15日(火)10時5分 ITmedia Mobile

3分半の映像で手紙からスマホまで時を超えた通信の進化を体験する

 今やスマホからテキストを送るだけで簡単に連絡を取れる便利な時代になったが、それだけでは足りない「何か」がある。その答えの一端を、大阪・関西万博でNTTが運営する「NTT Pavilion」で垣間見ることができる。
 NTTパビリオンは、万博会場東ゲート入り口のすぐ近くに建物を構えている。3つのゾーンから構成される同パビリオンでは、最先端のIOWN技術を駆使し、時間と空間を超えるコミュニケーション体験を提供する。実際に体験してきたので、見どころをレポートしたい。
●コミュニケーションの歴史を3分半で掛け抜ける
 NTTパビリオンは「PARALLEL TRAVEL」(時空を旅するパビリオン)をテーマに、3つのゾーンを巡る約22分のツアー形式となっている。
 最初のゾーン「Zone1: Prologue」では、コミュニケーションの進化の歴史と普遍の価値を表現している。両脇に設置されたガラスケースには手紙、電信機、黒電話、フィーチャーフォン、スマートフォンなど、時代ごとの通信デバイスが展示されている。来場者はこれらの展示を見ながら、巨大な180度LEDスクリーンに映し出される映像体験へと導かれる。
 スクリーンには、時代とともに変化するコミュニケーションの形が映し出される。手紙を書く人々の様子から始まり、固定電話で会話する家族、そして現代のスマホのビデオ通話で世界中の人々がつながる様子まで、3分30秒の映像で通信の歴史が凝縮されている。
 この展示は技術の進歩とその動機となる「離れた場所にいる人と人とのコミュニケーションへの渇望」という、時代を超えた普遍的な人間の欲求を表現している。そして映像の最後では、現代のコミュニケーション技術をもってしても埋められない「何か」への気付きを与え、これから体験する未来のコミュニケーションへの期待を高める構成となっている。
Perfumeのバーチャルライブを体感
 メイン体験となる「Zone2: Main Experience」では、Perfumeをパフォーマーに起用。来場者は3Dグラスを装着し、NTTの技術によって時空を超える体験を味わう。
 会場では「EXPO1970 OSAKA SUITA」の文字が浮かび上がり、1970年の大阪万博の世界へと誘う。そこから現代の吹田市の万博記念公園、そして2025年の夢洲万博会場という3つの時空間を行き来するような映像演出が展開される。
 Perfumeの3人は3D点群データとして表現される。メンバーたちは光の粒子で構成された姿となって分散したり集合したりしながら、「ネビュラロマンス」を歌い上げる。それに合わせて床から伝わる振動と音が、まるで目の前でライブが行われているような臨場感を生み出す。
 実は、このPerfumeの映像は実際のライブに基づいた演出となっている。NTTは万博開幕に先立ち、4月2日にリアルタイム3D空間伝送実験を実施。吹田市の万博記念公園と夢洲の万博会場を次世代通信技術の「IOWN(アイオン)」でつなぎ、Perfumeのライブパフォーマンスを含む空間全体を20数台のセンサーやカメラで計測し、3D映像として伝送・再現した。会期中は収録データを活用した演出を体験できる。
●もう1人の自分が踊り出す
 最後の「Zone3: Epilogue」では、来場者一人一人の「Another Me」(もう1人の自分)が登場する。入場時に専用の装置で全身をスキャンすると、その場で来場者のデジタル分身が生成される。
 展示空間は、四方を大型スクリーンで囲まれた没入型の環境となっている。体験の流れは明確に構成されており、まず「カメラを見つめてください」という案内に従って写真撮影が行われる。続いて映像が開始し、スクリーンに自分の姿が現れる。
 自分の姿がスクリーン上でダンスを踊るような動きをする映像が流れ、その後「AGE UP」(年齢を重ねた姿)や「AGE DOWN」(若返った姿)といった表示とともに、来場者の顔が年齢で変化する様子が表示される。他の来場者の映像と並んで表示されることもあり、全体で1つの集合体としての表現を形作っていく。
 自分自身のデジタル分身が自律的に動き出し、表情を変え、時には歌い出すという体験を通じて、この体験を通じて、AIやIOWN技術が進展した未来社会での新しい「自分」の在り方や、言葉や文化の壁を超えたコミュニケーションの可能性を示してのだという。
●パビリオンを楽しんだ後は……
 パビリオン体験の後には、出口付近に2種類の特別な電話機が設置されている。「せかいがきこえる伝話」は昔の公衆電話を模した筐体で、受話器を上げて3桁の番号を押すと、急な雨で駅からの迎えを頼む会話や、こっそり恋人と話す若者の声など、思わず共感する電話コミュニケーションが聞こえてくる。
 また「いのちふれあう伝話」は会場内の「いのち動的平衡館」とIOWNネットワークで接続されており、音声や映像に加えて互いの心拍まで共有できる触覚体験を提供している。

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