東北大、固体酸化物セルの電解質の応力状態の非接触・非破壊観察を実現
2025年4月16日(水)17時24分 マイナビニュース
東北大学は4月15日、温度とガスコントロールが可能な自作チャンバーを用いて、非接触・非破壊の応力測定法「X線cosα法」により高温・ガスフロー下での応力測定を実現し、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や高温水蒸気電解セル(SOEC)などの「固体酸化物セル」(SOC)の重要パーツである電解質の応力状態をその場で観察することに成功したと発表した。
同成果は、東北大大学院 環境科学研究科の山口実奈助教、同・駒谷拓己大学院生(研究当時)、同・川田達也教授(東北大 SOFC/SOEC実装支援研究センター兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、(米国)電気化学会が刊行する基幹学術誌「Journal of The Electrochemical Society」に掲載された。
SOCは高いエネルギー変換効率で知られ、水素極層、電解質層、反応防止層、空気極層というセラミックス製の積層構造を持つ。水素極に厚みを持たせた水素極支持SOFCが実用化されているが、さらなる普及のためには、信頼性の向上が不可欠だ。特に、両極のガスの混合を防ぎ高性能を維持するため、SOCの故障原因の1つである電解質の割れの防止が重要である。
SOC電解質には、層間の熱膨張係数の差異により、焼結後に圧縮応力が発生する。運転時には700℃程度まで昇温し、さらに水素極が酸化ニッケル-イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からニッケル-YSZに還元される。この還元に伴う水素極の体積変化が電解質の応力挙動に影響を及ぼし、デバイスの信頼性と寿命を左右する。加えて、意図しない燃料切れやガスリークによって水素極が酸化雰囲気に晒された場合も、水素極の酸化により体積変化が生じ、電解質の応力状態を変化させる。
従来、酸化還元に伴う電解質の応力変化は、セルの故障における原因の1つとされてきた。しかし、還元・酸化過程におけるYSZ電解質の応力挙動については、詳細な理解が不足していたとのこと。そこで研究チームは今回、X線cosα法を用い、2種類の商用セル(Elcogen(E社)製とNingbo SOFCMAN(NS社)製)のYSZ電解質の応力測定を行い、還元および再酸化過程中の応力変化をモニターしたという。
.