「GIGAスクールで誰ひとり取り残さない」新潟市の教育方針を後押ししたiPad

2024年4月19日(金)6時0分 マイナビニュース

GIGAスクール構想で成功した自治体の1つとして知られる新潟市。教育委員会は「誰ひとり取り残さない」という目標のもとにiPadでGIGAスクールの環境整備を進め、病気や不登校で学校に来られなくてもクラスと同じ授業を受けられるなどの取り組みを進めました。しかし、取り残さないようにしたのは子どもたちだけではなく、教職員も対象でした。授業の進め方を相談できる場の用意や、学校をまたいで成功事例を共有する取り組みなどが功を奏し、教職員のモチベーションや教育の質が向上。「故障せず授業が止まらない」「障害のあるなしで活用に差が出ない」「便利なアプリが無料で使える」といったiPadの特徴も、新潟市の成功を後押ししていました。
児童だけでなく、先生も取り残さない
学校に1人1台のコンピュータ環境を導入する「GIGAスクール構想」が始まって早くも4年ほどが経ちましたが、端末活用の度合いは自治体ごとに差があることが文部科学省の調査で見えてきました。授業での端末活用や家庭へ端末を持ち帰っての活用を積極的に進め、GIGAスクール構想の成功例として全国的に知られているのが新潟市です。
「たくましく生き抜く力」「失敗を繰り返しながら身につけていく力」の育成を目指している新潟市が掲げているのが、誰ひとり取り残さないための取り組みです。新潟市内には3カ所の病院内学級を設け、ICU(集中治療室)にいてもiPadを通じて配信される授業を受けられる仕組みも整えました。
そういった子どもたちに対する取り組みもありますが、新潟市は「先生も誰ひとり取り残さない」というビジョンを掲げて取り組んでいるのが特徴です。
取材当時、新潟市教育委員会で教育次長を務めていた池田浩さんは「先生ごとにICTの得意不得意があるのに、あなたは若いからこういうのはお得意でしょう、と勝手にリーダー的な役回りを任されると大きなプレッシャーになってしまう。市にはICT支援員もいるが、4校に1人程度の配置なので毎日は顔を合わせられない。そこで、オンラインで先生たちのケアができる体制を設けた。ほかの学校の先生も議論に加われるので、ノウハウを持っている先生から積極的にアドバイスが寄せられる好循環ができている」と語ります。
【編集部より】池田浩さんが2024年3月で新潟市教育委員会を退任されたので、肩書きを修正しました。(2024年4月23日 11:30)
ソフトウエア面だけでなく、ハードウエア面の整備も積極的に実行しました。以前は、授業の配信用に先生のiPadを使っていたそうですが、配信中はそれ以外のことができなくなっていました。その悩みを受けた教育委員会は、当初の予算にはなかったものの配信専用iPadの購入を決めて各校に配置しました。また、学校の通信回線が細くてつらい…という声が先生から上がった際も、教育委員会で迅速に対応したそうです。
フリーボードを授業で活用、クラスの仲間が付箋で感想を添える
学校での授業は、先生が一人でしゃべり倒すのではなく、児童が主体になって学びを進めるスタイルにしていました。市内の大野小学校の授業を見学したところ、教壇に立った先生が課題をひととおり説明するやいなや、子どもたちは教室内を自由に動き回って友だちとグループを作り、相談しながら課題解決を進める姿が。授業の後半の発表では、自分のiPadの画面をApple TV経由で教室内のディスプレイにミラーリングしていたのですが、インカメラでとらえた自分の顔を差し込んで誰が発表しているのかを分かりやすくする工夫も凝らしており、驚かされました。
別のクラスの社会の授業では、新潟県内の市町村や名所の特徴を盛り込んだロゴを作成する課題に挑んでいました。使ったのは、ホワイトボード的な機能を持つ無料アプリ「フリーボード」。目を引いたのが、それぞれの児童が仕上げた作品に対して、ほかの児童が付箋機能でコメントや感想を寄せていたこと。大野小学校の片山敏郎校長は「フリーボードの活用はこのクラスの鈴木先生が一番詳しいので、使いこなし方を今度ほかの先生に講義してもらう予定にしている。それぞれの先生がお互いに得意なことをシェアできる環境を整えている」と語ります。
iPadはとにかく壊れにくい
新潟市では、ホームボタンのある第8/9世代iPadをGIGAスクール用端末として採用し、ロジクールのキーボード一体型ケースに装着して使っています。片山校長は「iPadはとにかく故障しにくいのに助けられている。日々の授業で欠かせないものなので、もし壊れてしまったら授業に支障が出てしまうが、これまで困ったことはない」と評価します。
教育委員会の池田さんによると、新潟市内でのiPadの故障率は2%前半の低いレベルに収まっているといいます。「このうち画面パネルの破損が7〜8割を占めていて、ハードウエアの故障は少ない。しいていえば、今後バッテリーの消耗が課題になってくるのではないか」と語ります。
来年度には、端末を入れ替えてのGIGAスクール第2期の開始を控えていますが、池田さんは「第1期を通してiPadの使いやすさと壊れにくさは確認できた。体の障害のあるなしで活用に差が出ないアクセシビリティもiPadで評価しているポイント。この数年間での実績は大きく、第2期ではその実績をベースに検討することになるのでは」と語ります。新潟市では、これからもiPadが子どもの学びや先生の授業をサポートすることになりそうです。

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