「JKより上手い」「お役所感がない」首相官邸インスタが話題 “中の人”の正体に迫る

4月23日(火)8時5分 ITmedia NEWS

「桜を見る会」で安倍首相と片寄涼太さんが談笑する様子を撮影した動画。「#3年A組」「#朝礼ダンス」などハッシュタグを効果的に使っている=首相官邸のInstagramアカウントより

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 「お役所仕事感がないクオリティーだ」「JK(女子高生)より扱い慣れている」——首相官邸のInstagramアカウントがネット上で話題だ。特に、首相官邸のアカウントが投稿した動画(ストーリーズ)は、ポップなフォントとハッシュタグを効果的に使い、視聴者からは「“中の人”は、本物の女子高生?」といった声も上がっている。
 例えば、安倍晋三首相が開催した「桜を見る会」(4月13日、新宿御苑)を紹介する投稿も手が込んでいる。イベントに招待した片寄涼太さん(GENERATIONS from EXILE TRIBE)やタレントのIKKOさんたちと、安倍首相が談笑している動画を撮影し、「#桜を見る会」といったハッシュタグとともに投稿したのだ。片寄さんが映っている場面には「#3年A組」(出演ドラマのタイトル)などファンには分かるハッシュタグも挿入している。
 「女子高生やギャルはいません」と笑うのは、内閣官房 内閣広報室のOさん。実際は30歳前後の男性10人弱が、Instagramの他、Twitterなど8つのSNSアカウント、内閣官房の公式サイト、メールマガジンを協力しながら運用している。
 特にInstagramのアカウントは「伸び盛り」で、4月22日現在、16万人以上のフォロワーを抱えている。だがそのレベルに至るには、地道な試行錯誤があった。SNSを巧みに運用する中の人たちに舞台裏を聞いた。
●「企ててやろう」
 首相官邸のInstagramアカウントを開設したのは昨年1月。Oさんは「Instagramは他のSNSと比べて10〜20代の女性が多いと考えています。そうした人たちに、政府の動きや首相官邸のイベントに関心を持ってもらおうと運用を始めました」と話す。しかし開設したばかりの頃はフォロワー数が少なく、投稿も拡散されにくかったという。
 同じく内閣広報室のTさんは「普通、オフタイム(休み時間)にInstagramで官邸の情報を進んで見ようと思う人はそんなにいないと思います。特に若い女性はなおさらです。そうした人たちが『時間を無駄にしなかった』と思えるように、ちょっとした驚きを込めようという思いが根底にあります」と語る。
 「企ててやろう」——ファンを獲得するため、中の人たちの試行錯誤が始まった。Tさんが「特に力を入れました」と話すのは、ハッシュタグの活用だ。
 例えば、18年7月、香取慎吾さんと安倍首相のツーショットを投稿した際は「#シンゴと#シンゾー」という遊び心ある言葉に「#オリジナルスマイル」といったハッシュタグを添えた。オリジナルスマイルは、香取さんが所属していたSMAPのシングル曲だ。
 ハッシュタグで検索して首相官邸のアカウントにたどり着いたファンが、Twitterなど他のSNS上でも話題にし、ファン同士の間で広がる——そのような展開もあり、地道にフォロワーを獲得していったという。新元号「令和」の発表会見で、安倍首相が平成のヒット曲として『世界に一つだけの花』に言及した際も、写真にハッシュタグを添え、香取さんをきっかけにフォローしたファンにも喜んでもらえるよう工夫した。
 直近の投稿でも、ハッシュタグを巧みに活用。冒頭で紹介した桜を見る会のストーリーズには「#ジェネ」というハッシュタグが付いている。ジェネとは、片寄さんが所属するGENERATIONS from EXILE TRIBEの愛称だ。「ファンがどのようなハッシュタグを使っているかを調べて取り入れています」(Tさん)
 Tさんらは普段、Twitterを眺めたり、検索エンジンの「リアルタイム検索」結果で上位に入っているワードをチェックし、話題の言葉をハッシュタグに取り入れるよう努力しているという。桜を見る会の動画ではお笑いタレントのカズレーザーさんが登場する場面で、「『令和』と『和令』(かずのり、カズレーザーさんの本名)がニアピン」というネット上の話題をハッシュタグにして投稿した。
 色合いや文字のサイズにも、こだわりがみられる。例えば、タレントのIKKOさんの決めぜりふ「どんだけ〜」は「ど」「ん」「だ」「け」「〜」と一文字ずつサイズを変え、IKKOさんの声量を表現している。Tさんは「昨年の桜を見る会でも、芸能人の方々との交流はありましたが、あまり派手にせず、そのまま動画を掲載していました。今年は、お笑い芸人さんのトーンに合わせてデザインを考えたほうが、視覚的にインパクトが出るのではないかと工夫しました」と話す。
 「芸能人の皆さんも自身のInstagramに写真をアップしているので、安倍首相が芸能人と一緒に映っている写真をそのまま投稿したところで、ファンからはあまり驚かれないと思っています。文字やデザインで目立たないと『いいね』やフォロワーの獲得には結び付きません」(Tさん)
 こうした裏では、事前に安倍首相のスケジュールを把握しながら、どのような工夫ができるか、中の人たちの間でアイデアを共有するという苦労がある。「(話題をキャッチできるように)アンテナを張り、チーム内でシェアしながら『これならいけるのではないか」と意見を出し合っています」(Oさん)
 事前に入念な準備をしておくことは、スムーズな投稿にもつながる。内容に誤りがないか、関係者の間でチェックするには「結構時間がかかる」。そこで「事前に関係者の間で『こういう投稿がありえそうだ』とイメージを共有しておくことで、投稿の意思決定を早くできるよう工夫しています」とOさんは説明する。
●「すごくユルく運用したいわけではない」
 こうした中の人の努力が実を結びつつある。3月29日時点で約5万4000人だったフォロワー数は、新元号の発表会見をライブ中継したこともあり、約13万人に倍増(4月1日時点)。そこで、ライブ映像だけでなく過去の投稿も視聴したユーザーが「女子高生より使い慣れている」などと拡散。13日、桜を見る会の動画を投稿して人気に拍車が掛かり、22日現在、約16万4000人まで増えた。
 「いままで積み上げてきたものが、新元号の発表のタイミングでピックアップされ、視聴されるという流れを生み出せた」(Oさん)
 フォロワーの半数以上は女性。Oさんは「内閣広報室が運営している他のSNSアカウントと比べると女性の割合が高いです」と胸を張る。「『中の人は女子高生?』という声が上がるということは、Instagramの文脈になじんで、興味深い投稿として受け止められているということだと考えていますし、うまくいってよかったと思っています」
 Tさんは「今年は、ラグビーワールドカップ日本大会、G20サミットなど日本国内でイベントがめじろ押しなので、多くの人に見てもらえるよう工夫したいです」と意気込む。その工夫の1つが、Instagramの新機能の活用だ。新元号発表のライブ中継では、開始時刻を知らせる「カウントダウン」機能を試した。
 「行政のアカウントなので、ユーザーの反応に個別に返答できず、直接コミュニケーションを取ることは難しいです。その分、関心を持ってもらえるように、なるべく新機能は試したいです」
 Tさんは「決してすごくユルく運用したいわけではありません」と強調する。Instagramのストーリーズで投稿できる動画は15秒程度と制限があり、写真の投稿でも堅苦しい長文のコメントを掲載してしまうと「Instagramの雰囲気にそぐわない」。ストーリーズなどに掲載する情報量は極力減らし、詳しい内容を見たいユーザーは、首相官邸の公式サイトなどに誘導する。Tさんは「あくまで政治に関心を持ってもらう一歩になればと思っています」と話している。

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