2025年はAIエージェント元年、Google Cloudのパートナー戦略と展望

2025年4月23日(水)6時0分 マイナビニュース


グーグル・クラウド・ジャパンは4月22日、都内でパートナー事業戦略に関する記者説明会を開催した。また、説明会ではGoogle Cloudの先進的な取り組みを進めるパートナー企業として、富士通とSCSKが紹介された。
「2025年はAIエージェント元年」 - グーグル・クラウド・ジャパン 平手氏
冒頭、グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の平手智行氏は最近の市場動向について「多くのAIとAIエージェントが急速に企業で実装されている中でGoogle Cloudでは『GoogleのAIで進化したクラウドが変革をさらに加速する』というミッションに刷新した」と述べた。
昨今、生成AIは昨年の前半はPoC(概念実証)、中盤に汎用系の業務への組み込み、後半にはコア業務に組み込み企業が責任を持って活用するというフェーズを踏んできた。同氏は「社内の生産性向上やコスト削減など効率化から収益化へシフトし、企業の中で生成AIやAIエージェントの価値が進化・進展しており、重要な段階に入ってきている」と話す。
現在、Google Cloudが提供する生成AIの国内事例は情報通信・テクノロジーやサービス・エンタメ、医療・ヘルスケア、製造業など62件あり、社会実装が加速しているという。こうした状況をふまえ、平手氏は「2025年はエンタープライズ領域におけるAIエージェント元年」と位置付けている。
そして、同氏はAIエージェントがもたらす価値について「サイロ化されたツールを横断しての情報収集や整理」「業務プロセスの自律的かつ動作を柔軟に自動化」「スキルや人材ギャップを埋めて付加価値を創出」の3つを挙げている。
これをもってして業務の効率化やコスト削減、意思決定の迅速化、顧客体験の向上、新規ビジネスの創出、競争力の強化などが図れるというわけだ。
拡大する日本におけるGoogle Cloudのパートナー
次にグーグル・クラウド・ジャパン パートナーエンジニアリング 統括技術本部長の坂井俊介氏が同社のパートナービジネスについて説明した。
グローバルでは、2024年における同社全体の成長の80%にパートナーが貢献し、NPS(Net Promoter Score)はパートナーが関与した場合で17ポイント向上しているほか、パートナーがデリバリーに関わっている案件の金額規模は2023年上半期から2024年上半期にかけて2倍以上に増加したという。
日本に目を移してみると、2024年12月までの4年間でパートナーの総数が2.1倍、パートナーによる売り上げ額は4.3倍にそれぞれ拡大。また、認定資格数は9.9倍、認定資格者数は8.7倍、Google Cloudのパートナー企業に所属するエンジニアの活躍を表彰するプログラム「Google Cloud Partner Top Engineer」は11.3倍に増加しているとのこと。
一方、生成AIについてはグローバルの認定制度として「Generative AI スペシャライゼーション」と新設し、日本ではアクセンチュアが最初の認定パートナーとなっている。坂井氏は同制度に関して「生成AIの実装において深い技術的専門知識と実績を持つパートナーを認定制度となる。お客さまは制度を通じて生成AIの専門知識を持つパートナーを容易に特定できるようになる」と説く。
さらに、生成AIの人材育成では認定講師が提供するオンライン講義・デモ・ハンズオンラボのクラスルームトレーニングやワークショップ、オンデマンドトレーニングをはじめとしたトレーニングを提供。
加えて、経済産業省が主導する国産LLM(大規模言語モデル)の開発力強化プロジェクト「GENIAC」のAI基盤モデル開発の計算資源にGoogle Cloudが採用。宮崎市においてはGoogle Workspaceの導入、三重県志摩市が行政業務効率化に生成AIサービスを活用するなど、地方自治体との連携もアピールしていた。
そのほか、生成AIの活用に際してはインフラのモダナイズ(近代化)が重要になることから、ハイブリッド・マルチクラウドの知見を有したパートナー企業がワークロード移行やクラウドジャーニーを支援する伴走型プログラム「Infrastructure Modernization 支援パートナー」も紹介された。
日本法人のパートナー戦略、「パートナーファースト」
続いて、グーグル・クラウド・ジャパン 上級執行役員 パートナー事業本部の上野由美氏が国内におけるパートナービジネスの事業戦略を説明した。
日本法人ではパートナーエコシステムを段階的に進化し、事業拡大を目指すため2025年〜2027年の期間をトランスフォーメーション1.0〜3.0と定めて変革に取り組む。具体的には、2025年は「基盤づくり」としてインダストリー専門性の高いパートナーとの連携、インダストリー特化型の拡張可能なソリューション開発、初期顧客の開発となる。
2026年は「事業拡大」と位置付け、インダストリーソリューションの拡大、重点パートナーと大規模な販売促進を連携して販売成長の加速、パートナープログラムの強化と販売業務の効率化で収益性を向上させる。
2027年は「持続的成長」とし、パートナー連携を促進して強固なエコシステムの構築、パートナーシップを通じて新たな企画を探求した事業領域の拡大、長期的な戦略的視点を持ち、安定した事業成長を追求していく。上野氏は「長期的な目線に立ち、パートナーとともに安定した事業成長を推進する」と意気込みを述べていた。
こうした施策に取り組みつつ、上野氏は「近年では自動車や金融、サービス、小売り、ヘルスケアなど、さまざまな業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要な経営課題になっている。各業界には固有の課題が存在し、これらを克服して成長を実現することに取り組んでいる。しかし、DXの推進は道半ばであり、ソリューションも滝にわたるためAIを活用して迅速な対応まで踏み込めていない業種が多いと感じており、生成AIやAIエージェントの活用は不可欠」との見解を示す。
そのため、日本法人ではインダストリーソリューション開発部を新設。まずは「製造」「金融」「小売」「ヘルスケア」「ゲーム」「通信」の6分野で共通課題に特化したソリューションをパートナーと開発し、共同ビジネスプランを推進していく。
同社では各種の施策を通じたパートナー戦略として「インダストリーファースト」の考えのもと、「インダストリーソリューション開発」「パートナー収益性の追求」「イネーブルメント」「パートナーマーケティング」「販売促進」の5つの重要要素を含めた共同ビジネスプランを策定し、パートナーと取り組む。
そして、最後に先進的な取り組みを進めるパートナー企業として富士通とSCSKが紹介された。
富士通とSCSKの取り組み
富士通では、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」を2023年から提供しており、昨年9月に日本語に特化したLLM「Takane」、10月にAIエージェント「Fujitsu Kozuchi AI Agent」を発表。KozuchiはGoogle CloudのAI統合プラットフォーム「Vertex AI」上でAPI管理やモデル管理、AIエージェント管理などのアプリ開発を行っており、高速化を実現しているという。今後は収益管理機能を用いて、複数のAI・AIエージェント群を単一指標で管理することを予定している。
富士通 SVP AI戦略・ビジネス開発本部長の岡田英人氏は「Google Cloudとは世界観を共有しながら前進することはもちろん、お客さまにも共同でアプローチして課題を理解することで、スピード感を持って技術により解決したいと考えており、当社とGoogle Cloudにしかできない領域にフォーカスしていく。当社は受託型のシステム開発を得意としていることから、この領域にAIをフル活用する。つまり当社のコア事業の中でAIを使い、その結果をお客さまに届ける。そして、Fujitusu Uvanceなど新しいビジネスの創出に注力し、これを支えるためのプラットフォームを整備していく」と意気込みを語っていた。
他方、SCSKは昨年11月にERPパッケージ「PROACTIVEシリーズ」を刷新し、業務・業界特化型AI「PROACTIVE AI」を中核とした、AIセントリックなデジタルオファリングサービス「PROACTIVE」において、LLM「Gemini」とBI「Looker」を活用してダッシュボードの内容に対するレポート作成・表示している。
Google Cloudを選択した理由について、SCSK 執行役員 PROACTIVE事業本部長の菊地真之氏は「Gemini以外にさまざまAIを比較してきたが、昨年まではこなれていない感覚があった。しかし、昨年10月あたりからGeminiの進化が加速的に進み、特に自然言語解析や経営に関する分析などがマルチモーダルコンテキストに優れ、ビッグデータの処理や機能性、グローバルの知見の活用、サポート体制が万全だった。今後、PROACTIVEは経営高度化と効率化・自動化を追求していきたいと考えており、インタラクティブな分析、マルチモーダル入力などに取り組みたい」と力を込めていた。

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