デザインの力で餃子日本一奪還へ。アドビ「まちの広作室」が宮崎市で開催
2025年4月23日(水)7時0分 マイナビニュース
アドビのデザインワークショップ「まちの広作室」は、「Creativity for All:すべての人に『つくる力』を」をミッションに掲げるアドビが、個人商店や飲食店など街なかのお店の広報活動を支援する目的で、全国に展開しているプロジェクト。これまで、東京・下北沢、福島県大熊町、鹿児島市、高松市、長崎市、大阪市、山形市の各都市で開催されています。4月16日には宮崎市内でこの「まちの広作室」が開催されましたので、その様子をリポートします。
今回のワークショップは、アドビと宮崎市ぎょうざ協議会の共同で開催されました。実は宮崎市は総務省の家計調査において、餃子の年間購入頻度が2020〜2024年まで5年連続1位、年間支出額でも2021〜2022年の2年連続で1位という「餃子のまち」。宮崎市ぎょうざ協議会は、餃子を宮崎の新たな観光資源にしようと2020年に発足した団体で、イベントの開催やメディアへの情報発信など積極的な活動を続けています。
会長の渡辺愛香さんによれば、今回のワークショップは、年間支出額の1位奪還を目指して、さらに宮崎餃子の発信力を高めたいとの思いから開催されたもの。餃子日本一を巡る戦いは現在、宮崎市/浜松市/宇都宮市の三つ巴となっていて、宮崎市は年間購入頻度では5年連続1位となっているものの、年間支出額では2023〜2024年の2年連続で、ライバルの浜松市に次ぐ2位となっています。
「私たちはそれぞれ餃子の作り手や売り手なので、現場ではなかなかPRまで手が回らないのが実情です。でも自分達でも簡単にできるとわかれば、アプローチの仕方が変わってくるかもしれないと思いました。個々の発信力を高めることで、宮崎市民・県民はもとより、全国の皆様に宮崎の餃子を幅広く知っていただき、1位奪還を目指したい」と、渡辺さん。当日はそんな思いをともにする、宮崎市の餃子製造・販売店、卸売業者、飲食店の店主やスタッフなど協議会の会員、宮崎観光協会などから11名が参加しました。
○デザイン初心者が約2時間でポスターを制作。その出来栄えにクリエイターも感動
ワークショップでは、講師を務めるイラストレーター/キャラクターデザイナーの北沢直樹さんが、豊富なテンプレートを使用できるアドビのデザインツール「Adobe Express」の基本的な使い方を紹介。各自持参したパソコンやスマートフォンで、北沢さんやアドビスタッフのサポートを受けながら、参加者がそれぞれ自店の餃子をアピールするデザインに挑戦しました。それらを組み合わせて、宮崎餃子の魅力を発信するポスターを制作するのが今回のワークショップのゴールです。
「ふだんチラシなどは業者任せ。自分で作ることはないので難しいけれど、やってみると新鮮で楽しい」と話してくれたのは、参加者のひとりで、宮崎とんこつラーメンと宮崎餃子の店「屋台骨」代表の田中周作さん。田中さんをはじめ、参加者のほとんどは今回初めてAdobe Expressを使ったとのこと。それでも北沢さんから生成AI「Adobe Firefly」などの機能のレクチャーを受けると、餃子が映える背景や餃子を彩るアイテムを実際に生成してみるなど、みなさん楽しみながらデザインに取り組んでいました。
ワークショップの終盤には、宮崎市在住のデザイナー/アートディレクターの黒葛原 道さんが、メニューの制作やSNSへの発信などに役立つ写真の撮り方を紹介。覚えてほしい3つのポイントとして、「望遠で撮る」「光の向きと質を知る」「食事シーンを演出する」といった、撮影のコツを伝授しました。実際に餃子を使って撮影し、光の当たり方による見え方の違いを解説するデモには、どの参加者も熱心に見入っていました。
約2時間のワークショップの最後には、北沢さんが参加者の手掛けたデザインをひとつひとつ紹介。さらにそれらのデザインをひとつに取りまとめて、ポスターが完成しました。できあがったポスターを見て、「すごくいい。ちょっと鳥肌が立った」と絶賛する黒葛原さん。講師の北沢さんも「デザイン初心者のみなさんがここまで作れる。本当に素晴らしいことだと思います」と感動しきりでした。
これまでさまざまな都市で講師を務めてきた北沢さんですが、今回のワークショップは特にスムーズだったと振り返ります。「ポスターを完成させるというゴールが設定されていたこともあり、みなさんが一丸となって取り組んでいただけた。生成AIについても世の中に知られるようになってきて、見聞きする機会が増えているからか、スムーズに理解して楽しんでいただけたように思います。ポスターも想像より何十倍、何百倍も良いものができました。それぞれの店舗の思いも伝わってくるデザインに感動しました」と話していました。
なお、完成したポスターは今回参加した宮崎市ぎょうざ協議会の一部会員店舗のほか、宮崎駅構内にある宮崎市観光案内所、青島ビーチセンター、東京・新宿にある「新宿みやざき館KONNE」などに、4月23日以降順次掲示されるとのこと。プロクリエイターも感動した、おいしそうな宮崎餃子が並ぶポスターを、ぜひチェックしてみてください。
著者 : 太田百合子 おおたゆりこ テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。 この著者の記事一覧はこちら