航空機の技術とメカニズムの裏側 第117回 航空機の航法と管制(14)羽田空港の事故に見る対地接近警報装置

4月24日(火)9時0分 マイナビニュース

2018年4月11日、羽田空港に向けて着陸進入中だったタイ国際航空のボーイング747-400機が、対地接近警報装置(GPWS : Ground Proximity Warning System)が作動したために着陸復航(ゴーアラウンド)を行うインシデントがあった。国土交通省は17日、この件を重大インシデントに指定した。
○滑走路より手前に突っ込んでしまう事故

飛行機の墜落事故というと、巡航中の機体が制御不可能になって、地表に向けて真っ逆さま……みたいな事態を連想するが、実際にはもっとさまざまな場面で事故が起きている。

その1つに、着陸進入中に飛行場の滑走路より手前に墜ちてしまう事故がある。パッと思いつくところだと、日本航空のDC-8がニューデリー空港の東方に墜落した事故(1972年6月14日)、カナダ太平洋航空のDC-8が羽田空港の南側に墜落した事故(1966年3月4日)などがある。

「飛行場の手前に墜ちた事故」といっても、すべてをひとくくりにすることはできず、原因はさまざまだ。その中には、着陸進入中に本来の進入経路(グライドパス)よりも低いところまで降りてしまったとか、着陸進入中の降下率が高すぎたとかいったものがある。また、降下が早すぎて、滑走路の手前にある山に突っ込んでしまった事故もあった。

そこで考え出されたのがGPWSだ。冒頭で取り上げたタイ国際航空機の一件では、これが作動したおかげで、地面との意図せざる接触を避けられた。ちゃんと存在意義があったことになる。

GPWSの歴史は意外と長い。アメリカでは、連邦航空局 (FAA : Federal Aviation Administration)が1975年12月1日以降、すべての米国籍の民間大型機に対してGPWSの設置を義務付けた。日本など、他国もそれにならっている。

そのGPWSは、どういう仕組みで動作しているのだろうか。
○GPWSの働き

GPWSは、電波高度計から対地高度のデータを得るほか、高度計から得られる高度の変化(それを時間で割ると昇降率となる)、離着陸形態などのデータを得る。

計器着陸方式(ILS : Instrument Landing System)を使用している場合、グライドスロープと、そこからのズレの情報も参照できる。また、正しく着陸を行っている場合と、そうでない場合の区別をつける必要があるので、降着装置やフラップの上げ下げも参照している。

そして、所定の着陸進入経路を外れて地表に異常接近していると判断したときに、警告灯と音声による警告を行う仕組みになっている。

まず、"sink rate"(降下率)、"terrain"(地形)、"don't sink"(降下するな) といった具合に音声警告を発する。それでも降下を続けていると、警報音が鳴るとともに "pull up"(引き起こせ) という音声警告を発する。

高度が低くても、前方の地形を目視できれば、パイロットが危険を察知して機体を上昇させるチャンスがある。しかし、夜間や悪天候で視界が利かない場合は、前方の地形を目視するのは困難だ。意識せずに地面に接近してしまった場合にも同様である。

そんな時に、GPWSが役に立つ。面白いのは、着陸進入中だけでなく、離陸して脚を上げた直後に降下が発生した場合にも警報を発すること。

GPWSも含めて、さまざまな警告音声を聞くことができる動画を見つけたので、リンクを張っておく。

Alarms, T-CAS and GPWS of Boeing 737

○GPWSは総合的に状況を判断する

通常型の航空機が陸上の滑走路に着陸進入する際の進入角は、一般的に地表に対して3度である。この角度と対地速度(または対気速度)を基にすれば、適切な降下率を割り出すことができる。三角関数の問題である。

ということは、その適切な降下率よりも実際の降下率のほうが大きければ、降下率が大きすぎるということである。

しかし、それだけの話では済まない。羽田空港みたいに、着陸進入時には基本的に海上あるいは海岸線に沿っているところなら、地面・海面の標高はゼロないしはそれに近い状態が続いていると言えるが、陸上では話が違う。

滑走路の手前に山があれば、それを避けなければならない。そのため、横から見て一直線の進入経路を取ることができず、途中にある山を避けるために階段状の進入経路になる場合がある。

逆に、滑走路の手前に谷があったり、滑走路が台地の上にあったりするとどうなるか。滑走路の手前では、対地高度の数字が(滑走路上と比較して)大きい方向に振れることになる。そこで「余裕がある」あるいは「高すぎる」と誤判断したら、その先の斜面に突っ込みかねない。

だから、昇降率を見るだけでもいけないし、電波高度計による対地高度の推移を見るだけでもいけない。さまざまなデータを突き合わせて総合的に判断しないといけない。

○EGPWS

GPWSを改良して、地形データも参照するようにしたのが、拡張版対地接近警報装置(EGPWS : Enhanced Ground Proximity Warning System)である。

GPS(Global Positioning System)があれば、機体の現在位置の緯度・経度・高度がわかる。連続的にデータを追っていれば、針路や速度も計算できる。それと地形データを突き合わせれば、地面までどれぐらいの距離があるかをリアルタイムで把握できる。そして、地面がドンドン接近していて危険だ! となったら警報を発することになる。

EGPWSのいいところは、単に「現在、地面との間隔がどれぐらいあるか」だけでなく、「この先の地面との間隔がどうなっているか」を知る手段があることだ。

例えば、今は地面との間に余裕があっても、前方が切り立った崖になっている場合。電波高度計に頼るだけでは、実際に地面が持ち上がってきて間隔が縮まり始めるまでわからない。だが、EGPWSがあれば、機の現在位置と針路を地形データベースと照合することで、「前方に崖がある」と事前に把握できる。

ここまでは民航機の話だが、戦闘機でも似たような仕掛けを備えている事例がある。米空軍が2014年からF-16に導入したAuto-GCAS(Automatic Ground Collision Avoidance System)がそれで、こちらは「危険」と判断すると自動的に回避機動を取るようになっている。

今後、F-35にもAuto-GCASを導入する計画になっている。今でもF-35にはGCASが付いているが、これは警報を発するだけで、回避はパイロットの操縦操作に依存している。

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