唾液から慢性的な睡眠不良を客観的に判定 産総研らが手法開発
2025年4月26日(土)14時54分 財経新聞
今回の研究の概要(画像: 産業技術総合研究所の発表資料より)
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これまで睡眠不良の判定に使われてきたピッツバーグ睡眠質問票は、被験者への質問に基づくものであり、被験者の主観的な評価に依存していた。しかし今回研究グループが開発した手法を使えば、被験者の唾液の成分濃度から客観的に睡眠不良を判定することができるという。
研究グループでは、今回開発した手法は、自宅における慢性的な睡眠不良のセルフケアーや、学校、職場、高齢者施設などにおける睡眠管理などに活用されることが期待されるとしている。
■慢性的な睡眠不良はさまざまな健康問題の原因に
睡眠障害など慢性的な睡眠不良は、うつ症などの精神疾患や、生活習慣病のリスクを高めることが知られている。
しかしこれまで、睡眠不良の判定に使われてきたピッツバーグ睡眠質問票や睡眠日誌などは、いずれも被験者の主観に依存するものだった。
そこで研究グループは、精神的なストレスや慢性疲労が、口内炎のきっかけになることに着目。慢性的な睡眠不良も口腔内環境を変化させるのではないかと考え、慢性的な睡眠不良を唾液の成分の濃度から客観的に判定する手法の開発に挑んだ。
■慢性的な睡眠不良を客観的に判定する手法を開発
まず研究グループは、45〜60歳の日本人男性730名について、ピッツバーグ睡眠質問票を使い、睡眠に問題がない50名と睡眠不良の50名を選別。起床後の唾液を採集し、解析した。
その結果、睡眠に問題がない群と睡眠不良群を判別するために、重要な6つの代謝物を特定することに成功した。
この6つの代謝物に基づいて睡眠不良を予測する判定モデルを構築したところ、ピッツバーグ睡眠質問票を使った判定と86.6%の確率で一致することがわかった。なおピッツバーグ睡眠質問票は、医師による診断の際などにも使われる信頼性が高い手法だ。
研究グルーブでは、今回開発した手法が自宅における慢性的な睡眠不良のセルフケアーや、学校、職場、高齢者施設などにおける睡眠管理などに活用されることを見据え、6つの代謝物を簡便に計測できる試薬セットや簡易デバイスの開発を進めていきたいとしている。