5Gテクノロジーが、C-V2Xの普及を後押しする理由

4月29日(木)8時0分 マイナビニュース

5G無線通信は、まったく新しい技術やビジネスモデルを生み出すだけでなく、多くの既存技術の機能やユースケースも拡大させます。その代表的な例がV2X(vehicle-to-everything:車とモノの通信)テクノロジーであり、自動車の安全性を高め、人命を救い、燃料消費を削減し、より効率的な車両輸送を可能にします。
3GPP(3rd Generation Partnership Project)が策定した5G規格の機能拡張では、セルラー技術をベースにしたV2X通信(以下、C-V2X)の機能が大幅に拡張されており、より広範な展開が可能になります。2020年完成した3GPPリリース16では、いくつかのC-V2Xの機能拡張が導入されましたが、リリース17ではさらに多くの機能が追加される予定です。
V2Xテクノロジーが登場してから20年以上が経過していますが、車両や道路側のインフラ整備が不十分だったこともあり、これまでの普及は限られたものでした。
V2Xの初期実装では、DSRC(Dedicated short range communication:車両専用の短・中距離無線の狭域通信)が主となる技術でしたが、車両と信号機、料金所、道路標識などのインフラ双方とも広く普及することはありませんでした。
LTE(Long Term Evolution)をベースにしたC-V2Xは、3GPPのリリース14で初めて規格化されました。2020年、LTEベースのC-V2Xを搭載した最初の車両が生産ラインから出荷されました。これはC-V2Xテクノロジーの歴史において重要な節目となりましたが、5Gテクノロジーによって加速されます。というのも、5Gは、最終的に携帯電話だけでなく、5Gセルラー機能を搭載したあらゆる製品で大規模に導入されるため、C-V2Xにとって絶好の機会となるからです。
C-V2Xは、大量に導入されることでより有用な技術となるため、このようなユビキタスな展開が重要となります。メトカーフの法則では、「ネットワークの価値はユーザーの数に比例する」といわれており、 C-V2Xが効果を発揮するためには、かなりの割合の車両やインフラに導入される必要があります。同じ言語を使う車両やシステムが道路上に十分存在しなければ、通信機能があっても、車自体の役には立ちません。
5Gの機能拡張
5Gは、LTEよりもC-V2Xテクノロジーをはるかに発展させます。5Gでは、レイテンシの大幅な低減、応答性の向上、高信頼性、帯域幅の拡大が実現されるため、交通情報、道路状況、歩行者の位置など、ほぼ瞬時にあらゆるデータをやり取りすることができ、道路走行の安全性を高めることができます。また、人口の多い都市部では、携帯電話から、IoT、パーキングメーター、信号機、交通カメラ、ビルに至るまで、5G接続があらゆるものが利用されるようになります。
リリース15、リリース16、リリース17で機能拡張の多くは、5Gのユースケースの中でも最も広く評価されているURLLC(超高信頼低遅延通信)に関連するものです。URLLCは、通信の信頼性を向上させる技術と、遅延を大幅に低減させる技術という2つの異なる技術で構成されており、これらが連携することで、通信の高速化と信頼性の向上を実現します。車両の隊列走行、協調運転、遠隔運転、集合的な状況認識や衝突回避のためのセンサデータの共有、リアルタイムの交通・インフラ情報の更新などへのサポート提供といった最先端のC-V2X機能の多くを実現するためにURLLCが必要になります。
3GPPリリース16、リリース17での5G C-V2Xの機能拡張では、より高いスループット、高い信頼性、超低遅延を実現し、C-V2Xは車両、路側インフラ、歩行者や自転車などの交通弱者をつなぐユビキタス無線通信システムへと進化し、安全性、エネルギー効率、交通速度が向上されます。
3GPPリリース15では、C-V2Xの交通安全を強化する機能が導入されましたが、リリース16では、端末間直接通信(D2D:device-to-device)を可能にするサイドリンク通信技術が強化されています。サイドリンク通信は、ネットワークに依存せずに車両が道路システムの情報や他の要素を共有できるため、ネットワークインフラや携帯電話サービスのない遠隔地にいる場合でも、車両同士の通信を実現でき、C-V2Xにとって非常に重要な機能です。また、サイドリンクは、C-V2Xに依拠する将来の自律走行アプリケーションに先行して開発され不可欠な通信技術です。
リリース17では、車両の隊列走行や協調運転などの機能が提供され、C-V2Xのさらに複雑なユースケースをサポートします。
信頼性が鍵
最新のC-V2Xの機能の多くは、近くの車両、インフラ、クラウドとのほぼリアルタイムの通信を必要とします。例えば、V2Xの利点を示すためによく取り上げられるNLOS(Non-line-of-sigh:見通し外)アプリケーションの1つに、死角交差点アラート(Blind intersection alerts)があります。 このアラートは、見通しの悪い交差点に差し掛かった車両の近くにいる他の車両が、その車両のドライバーには見えない何か(例えば、車両の進路を横切ろうとしている歩行者など)を知らせる警告メッセージを送信するものです。
衝突の危険性や道路状況などのデータを共有することは、交通安全の向上につながることは間違いありませんが、瞬時にデータを送受信することが必要です。つまり、死角交差点に近づいた車に、道路を横断する歩行者がいると警報を送っても、その車両が交差点に到着する前に情報が届かなければ意味がありません。
また、通信の信頼性も重要です。C-V2Xの警報は、車がその信号を受信しなければなりません。意図したターゲットに届かなければ、役に立たないのです。
3GPPリリース15では、1ミリ秒(ms)以下の遅延で、安全性の高いURLLC通信を保証しています。これを大局的に見ると、音声に対する人間の脳の平均反応時間は150ミリ秒以上で、URLLC伝送の送受信にかかる時間の約150倍に相当します。言い換えれば、URLLC通信の伝送速度はほぼ瞬時であり、クラクションの音に反応するよりもはるかに速いのです。
また、リリース15では、URLLC接続の信頼性を99.999 %にすることを義務付けています。つまり、10万回の伝送のうち99,999回は目的のターゲットに届くということになります。
5G規格では、こうした厳しい目標を達成するために、いくつかのサービス品質コンポーネントが実装されています。これらの新しいコンポーネントには、タイム・センシティブ・ネットワーキング、新しいフレーム構造、柔軟なニューメロロジー、ダイナミックな時分割複信(TDD)、その他のデータ伝送用の物理層手順が含まれます。
ネットワークエンジニアは通常、何よりも効率性を重視してモバイルトラフィック管理プロトコルを最適化します。しかし、URLLCはこれを覆し、効率性を犠牲にして伝送速度と信頼性を最大化するように設計されたリソース集中型のコンポーネントを実装しています。これらの技術革新の中には、送信データが確実に目的地に到達するように設計された、いくつかの冗長機能が含まれています。
このカテゴリーには、特定のパケットが失われたり、エラーの発生に備えて、同じパケットを複数回送信するブラインド反復などの方法が含まれています。また、同じ情報を異なる周波数や異なるアンテナで送信することで、意図する側に伝送が届く確率を高める方法、周波数ダイバーシティーも含まれています。
URLLCの速度と信頼性に加え、リリース15、リリース16、リリース17では、C-V2Xのグループキャストやユニキャストを可能にするため、ブロードキャスト以外の新しい通信モードを導入しています。これらの通信モードでは、車両間、車両と路側インフラや歩行者間での情報交換がより重視されています。
まとめ
V2Xテクノロジーは、長い時間をかけてゆっくりと進化してきましたが、広く普及するには至っていませんでした。しかし、5年以内に世界人口の60%以上に普及すると言われている5Gテクノロジーの登場により、C-V2Xテクノロジーは多くの人に利用され、自動車走行の安全性、スピード、効率の向上がついに達成されることになります。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2014年に発表したレポートによると、5GのC-V2Xテクノロジーにより、自動車事故の最大80%を回避または削減するとともに、高速道路の走行時間と燃料消費量を劇的に削減することが可能になります。
C-V2Xの普及は、自動車の安全性に多大な影響を与えるだけでなく、C-V2Xモジュールメーカーや、自動車エコシステムの企業にとっても大きなビジネスチャンスとなります。NHTSAの予測では、C-V2Xのハードウェアとソフトウェアの世界市場は、今後6年間で10%以上の年平均成長率で増加し、2019年の4億5,000万ドルから、2026年には8億ドル以上に達すると予測されています。URLLCや拡張モバイルブロードバンド(eMBB)、5GNR規格のその他のコンポーネントにより、C-V2Xテクノロジーは、車両の安全性に多くの影響を与え広範な展開を実現するでしょう。
Dylan McGarth
キーサイト・テクノロジー
シニア・インダストリー・ソリューション・マネージャー
ベテランのテクノロジージャーナリストでEE Timesの元編集長

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