新生「G TUNE」は何がすごい? 新型「PCケース」のこと"だけ"聞いてきた
2025年5月1日(木)15時45分 マイナビニュース
マウスコンピューターのゲーミングブランド「G TUNE」が、今年リブランドしたことは既報の通り。まずはデスクトップ型の新モデルをリリースし、4月24日にはノート型も登場した。ブランドコンセプトから刷新して生まれ変わった「G TUNE」のゲーミングPCだが、デスクトップ型で注目すべきは新開発の筐体、つまり"ガワ"であると思う。そこで今回は、この新開発された「PCケース」に的に絞って同社に話を伺ってみることにした。
○見た目はガラッと、中身は正常進化
今回の新しいG TUNEの新しいタワー型PCケース、改めて大きな特徴からおさらいしてみたい。ゲーミングPCの筐体というと、とにかく派手でレインボーに光るというイメージだが、「パソコンのパーツのなかでもPCケースというのは何年も使うものですから、ゲームで長時間遊んでいても、何年も使っても飽きの来ない、一時的な流行ではない、普遍性のあるデザインにしようというコンセプトで開発しました」という開発陣の説明の通り、このG TUNEは比較的、落ち着いたイメージを受ける。
まず目につくには本体正面、フロント部分がスリット状となっていることだろう。アルミ合金に特殊な塗装を施しており、アルミの質感が感じられる金属の重厚感がありつつ、シンプルな形状でケレン味のないスッとしたデザインに仕上がっている。
デザインでは、「赤」の演出が特徴的だ。PCケースに赤塗装の部分があるわけではないのだが、LEDによるライティングが可変色ではなく赤で統一されている。「いままでのG TUNEがずっと赤をイメージカラーにしていたので、赤はどこかに入れたいという考えがありました。正面のスリットから覗く赤いライティング、ガラスのサイドパネル越しに見える内部パーツを照らすライティングに注目して欲しいです」。
「長く使えるというコンセプトで、見た目だけでなく、高性能な分、内部パーツの負荷が高くなりがちなゲーミングPCですから、動作の安定性、具体的には特に冷却性能を高めることに、多くの工夫を盛り込んでいます」と、冷却性能に余裕があることも特徴だ。
スリット状のフロントパネルはこのPCケースにおける大きな吸気部分でもある。基本はセオリー通りの底面吸気、天面排気でありつつ、フロント部分も120mmファンを3基搭載できる吸気口となっている。天面とあわせて、360mm(120mm×3)の水冷ラジエーターを設計上は2個設置することができるスペックだ。現行モデルではCPU冷却の360mm水冷ラジエーターを天面に設置しているが、将来的に熱設計要求が引きあがった際など、フロントにGPU冷却用の360mm水冷ラジエーターを併設する余地が持たされている。
マザーボード部と電源部はエアフローを分断、配線も背面に回して冷却効率&見た目を良くしているが、内部スペースをとりそうなこれらの要求に対し、G TUNEの新筐体は横幅が抑えられている。机の上に設置する際、横幅のあるPCはちょっと邪魔だったりするので、これは嬉しい。
普段の使い勝手に直結する気の利いたギミックが多いのも特徴だろう。本機は、本体を机の上だけでなく、床下に設置することも想定している。エアフローが強力なぶん、気になるのはホコリの侵入だが、底面の吸気口と天面の排気口をおおうように着脱して丸洗いメンテナンスができるホコリフィルターを装備。そして、電源スイッチやUSB Cポートなどのインタフェースは天面に集中している。ここにも、ホコリ防止や、誤動作を防ぐための可動式のシャッターが設けられている。I/Oで細かいところでは、ステレオミニプラグのイヤホンジャックは4極プラグに対応している。
面白いのは内蔵の「ヘッドホンホルダー」だ。ちょうどフロントパネルの一番上のところに、引っ張り出して使えるフックが隠れている。ゲーミングヘッドホンのスタンドを別途用意しなくても、スマートにヘッドホンを片付けておくことができる。
イマドキのデスクトップPCでありながら、ほぼレガシーになっているであろう光学ドライブをフロントに搭載していることも面白い。フロントが吸気のスリットデザインで、本体の横幅も抑えているのだから、てっきり光学ドライブは無いものだと思い込んでいた。「光学ドライブは開発のかなり早い段階で搭載を決めていたので、上手くデザインに落とし込めました。ゲームソフトなど過去の資産、手持ちのメディアがそのまま使えることは大事だろうと。BTOカスタマイズでブルーレイも選べます」とのこと。確かに、言われてはじめて気づくくらいの自然さだ。
○新型PCケースで開発陣は何を重視した?
"おさらい"ができたところで、ここからは、同社が新型PCケースを世に出すにあたり、開発陣が何にこだわっていたのかを、一問一答形式で探っていきたい。
-- 新しいPCケースへの移行で、従来機から性能をアップグレードしようとした部分では、特に何を重視しましたか?
横関氏: 何より冷却性能です。
旧ケースは2016年に出たものなのですが、その当時では十分な冷却性能を確保していましたが、ここ2〜3年でしょうか、GPUとCPUの熱が無視できない急な上がり方となっています。開発にあたり、まず内部のエアフローは改善することにしました。
特にフロントからのエアーの取り込み。ここは重視しています。従来のG TUNEのフロントが1枚パネルのデザインは、私も好きなデザインなのですが、内部コンポーネントの開発目線からすると、あまりフロントからのエアフローがとれないという課題もありました。
旧型は240mm+120mmはできたのですが、CPUが120mmというのが厳しくなった。旧型も2016年から今まで長持ちできたわけですから、ふりかえれば、当時から水冷前提で設計したのは良い判断だったと思います。
-- CPUとGPUの熱設計は上がっていく一方です。今回の新しいPCケースでは、余裕というか、熱設計のマージンは十分に確保できたとお考えでしょうか。
横関氏: 今考えうる最大のマージンをとったつもりです。新型では、最大で水冷の360mmラジエーターを2基、CPUとGPUの両方に同時に適用できます。先も見据えて、今回は思い切って大きな水冷が2基置ける設計にしています。
あとは、120mmのところに多少の余裕があるので、120mmを140mmにする可能性はあるかもしれません。フロントを140mm+140mmの280mmとかも。今後、オプションで選べる幅をもたせています。
-- G TUNEのブランドそのもののリニューアルでは、これまでの「ゲーマー向け」から、「あらゆるゲーミングシーンに向けて」と、ブランドのコンセプトが再定義されました。この新コンセプトは、今回のPCケースのデザインの面にはどのように落とし込まれているのでしょうか。
横関氏: LEDを、RGBで多様な色で発光させる流行はありますが、今回のモデルはG TUNEのフラグシップという位置づけです。落ち着いた、高級感と重厚感のある雰囲気をつくりたいと考えました。LEDはあえて明るさ調整のみの単色で、間接照明のようにケース内を照らす演出にしています。どんな時でも、長い期間でも飽きがこずインテリアになじむようなデザインを目指しています。
このフラグシップのG TUNEと同時に、ゲーミングPCではよりカジュアルなNEXTGEARも展開しています。こちらはもっとゲーマーのイメージに近くて、BTOオプションで用意しているRGBのカスタマイズも人気です。
-- 高級感といえば、僕は今回のG TUNE、「足」も好きです。オーディオ機器のインシュレーターみたいな高級感があります。
-- それと生々しい話になってしまい、これは話せないことも多いかと思いますが、素材や造り、ギミックなんかも豊富で、正直、このPCケースは製造視点でのコスト面が厳しそうです。製品の販売価格は上げづらいですから、結構無理をしているのではないかと思うのですが。
横関氏: マウスコンピューターでは、PCケースはPC全体のなかでも製品価値の重要な部分を担うファクターだと考えています。ましてこのG TUNEはうちのフラグシップ製品です。ハイエンドなパーツの搭載だとか、技術的にも上を想定している。
なのでこの新ケース、コストはかかっています。それに今は製造費用、資材の高騰もあります。そこはパートナーとの関係性や、製造工程の工夫で頑張ってもらっています。費用が増えた減ったは言えない部分ではありますが、PCケースとしてはかなりいいものになっている自信はあります。
林田氏: 販売価格に響いてくるので、ケースの占めるコストは少ないにこしたことは無いのですが、やはりうちのフラグシップですので。所有する満足感や、妥協できない性能などを損なってまでコストダウンするかというと、それはできないわけです。ユーザーの期待も大きいですし、無理をしてる部分はあります(笑)。
-- 出来上がったこの製品版を実際に見て、改めて開発者として、特に良くできている、優れていると感じられたポイントはありすか?
横関氏: チャンバーで電源を分離したことで、CPUやGPUに特化したエアフロ—が確保できました。設計によっては、GPUの熱に電源ユニットが影響受けたり、その逆もありますので。今回は、全体での冷却効率と言う点では非常に良いと思っています。定量的にデータを取るのはこれからですが、一般論としては電源ユニットの寿命にも効いてくるはずです。
-- 電源設置部がチャンバー分離だったり、搭載ファン数が多かったりする割りに、G TUNEは本体の横幅が短めなのが好きです。横幅がかなり長いPCケースも増えてますが、やはり机の上に置くと邪魔なことがあり。
横関氏: ありがとうございます。実は、従来のフラグシップのG TUNEからは少しだけ幅が増えてしまっています。サイドパネルのガラス化が標準になったので、中を見せる前提で配線をマザーボード裏面に集約したスペースの分です。裏面配線はエアフローにも好影響ではあります。このあたりは正常進化ですね。
-- 今回の新モデルはフラグシップ向け製品です。ゲーミングPCの展開としては、今後はミドル、エントリー、コンパクトなど続いていくのかなと。続いて出てくる新モデルでは、どういった展望があるのでしょうか。例えばデザインの世界観は統一されていくのかな、とか予想していますが。
横関氏: 現行G TUNEのマイクロタワーなどでも、PCケースのスペック要求は非常に高くなってきていて、確かにもう余裕は少ないです。ミドル級のGPUでも3連ファンを積んだ大型カードになってきているなど、スペースも厳しいです。
なので、新型はもちろん、「準備中」です。
G TUNEのロゴは旧ロゴから新ロゴに変わるのは間違いないのですが、後はまだお話できない部分が多く(笑)。次はマイクロタワーでしょうか。お楽しみに、とだけ。
あわせてノート型のゲーミングPCでも、新生G TUNE準拠の第1弾となる新モデルを販売開始しました(参考記事)。これを皮切りに、今後GeForce RTX 5000番台搭載の新生G TUNEゲーミングノートPCが次々と出てくるので、ご期待ください。
-- 最後に、G TUNEのリブランドから少しだけ時間も経ちました。販売の手ごたえや、ユーザーからの反応はいかがですか?
横関氏: ユーザーからのフィードバックは常に集めて製品に活かす活動を続けています。アンケートをもとに製品を改良する「お客様の声プロジェクト」などを社内に設置していたりもします。開発部門とサポート修理部門も連携していて、設計への指摘があっても、開発への改善要望としてあがってくる体制にしています。お客様の声は非常にありがたく、製品に活かしたいので是非送ってほしいです。
これは裏話なのですが、旧G TUNEのフラグシップケースの話ですが、見た目は変わっていないように見えて、実は内部的な型番で言えば「Ver.6」だったりします。こういったお客様の声をもとにするなどして、マイナーな改良は常に入れるようにしています。
林田氏: 新型は好意的、良くなったという反応があり嬉しいです。従来モデルから予測した販売計画を大幅に上回るご注文をいただき、一時はお届けまでお時間をいただいてしまいましたが、現在は4営業日で出荷させていただいています。
ぜひ新生G TUNEをよろしくお願いします。