はじめてのFinOps 第5回 クラウドコストの最適化では外せない「支出の公式」
2025年5月2日(金)7時0分 マイナビニュース
欧米を中心に広がり、昨今国内でも認知度が高まりつつある「FinOps」について、その基本から本連載では解説していきます。今回は、具体的にクラウドコストを最適化(あるいは削減)していくために、具体的にどのような活動が必要なのか、「支出の公式」に照らし合わせてみていきます。「はじめてのFinOps」の過去回はこちらを参照。
シンプルだが奥深い、支出の公式
これまで連載の第1回ではFinOpsの背景とフレームワークの全体像について解説し、第2回、第3回で、FinOpsフレームワークの要素の1つ、ペルソナ(Personas)を、そして第4回で、その活動領域と内容を整理したドメイン(Domain)と、ケイパビリティ(Capability)を紹介しました。
それではクラウドのコストを最適化(あるいは削減)していくにあたって、具体的にどのようにどのような手法があるのでしょうか。
よく知られた手法には、例えばリザーブドインスタンスやSavings Plans(AWSの場合)のような、長期間にわたってクラウドリソースを利用する予定がある場合にその利用を約束することで深い割引を得る方法(コミットメント割引)や、使われていない無駄なリソースを削り込む方法(ライトサイジング)があります。
ここで基本的ですが重要なことを理解しておく必要があります。それは、「クラウドでは、あらかじめ決められた料金で、使った分だけ、コストが発生する」というものです。
コスト = 料金(単価) × 使用量
一見シンプルなこの式は、実はとても奥深いものです。コストを最適化(削減)するには、「料金(単価)」と「使用量」に働きかけていく必要があるということを示しています。
○1. 料金(単価)の低減(rate reduction)
クラウド事業者は実にさまざまなサービスを提供していますが、それらには必ず料金(単価)が設定されています。そして料金自体を下げることができれば、使用量によらず、コストは減ることになります。
この料金の低減は平たく言えば、調達の仕方を改めるということです。後述する使用量の削減とは異なり、基本的にクラウドリソースの使い方(システム設計や運用)には直接的な影響はありません。
料金低減の方法としてよく知られているものには、前述のコミットメント割引のほかに、いわゆる「大口割引」があります。多くのクラウド事業者は年間コストが一定額を超える大口顧客向けに割引制度を提供しています。例えばAWSのEDP(Enterprise Discount Program)、Microsoft AzureのEA(Enterprise Agreement)などです。
これらに共通するのは、企業などでIT部門や各システム担当者が個別にクラウド事業者と小さな契約を結ぶより、企業全体で一括契約する方が、コミットメント割引でより大きなコミットメントをしやすくなり、大口割引での価格交渉力も強くなるということです。
そこでFinOpsのベストプラクティスでは、各システム担当者が個別に料金の低減に取り組むのではなく、FinOpsチームが組織全体で取りまとめて行うことを推奨しています。
クラウド事業者は、サービスの利用は各部門で自由に行えるようにしながら、契約と請求を組織全体で取りまとめる仕組みを提供しています(AWS Organizationなど)。このような仕組みを上手く活用して、FinOpsチームがコミットメント割引の適用や、大口割引の交渉などを行うのです。
○2. 使用量の削減(usage reduction)
クラウドリソースを「使った分だけ」コストが発生するのであれば、その使用量を減らすことができれば、その分だけコストも発生しなくなる(つまりコストが減る)ことになります。これを「コスト回避(cost avoidance)」とも呼びます。
使用量の削減は、クラウド事業者が提供しているサービス仕様を正しく理解し、使い方によってコストがどのように変化するのかを考えて見直すことで行います。これは実に地道な作業ではありますが、見落としがちなポイントやよくある手法がFinOps Foundationのサイトで紹介されていますので、参考にしてみてください。
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