スマートリングはスマートウォッチより便利なのか? 「RingConn 第2世代」で試してみた
2025年5月6日(火)12時5分 ITmedia PC USER
シンプルで、指輪としても申し分のない完成度です
私も「そろそろ自分も一度使ってみようか」とスマートリング製品を物色していたところ、タイミングよくクラウドファンディングが始まる「RingConn 第2世代」を知り、「なんだか良さそうだ」という印象を受けたので支援を申し込んだところ、予定よりも早く製品を受け取れたので既に利用を始めています。
私はスマートウォッチに関しては初代Apple Watchからのユーザーであり、GarminやWithings、ソニーのwena3、HEALBE GoBe3なども使ってきました。スマートリングは今回が初めてです。そんな視点から、スマートリングのメリットやデメリットを考察していきたいと思います。
●RingConn 第2世代とは?
RingConn 第2世代は、要するに装着しているだけで心拍数や睡眠などのヘルスケアデータを取得できる指輪型ガジェットです。
Apple Watchを普段使っている自分としては、取得できるデータは大きく変わりません。「心拍数」「睡眠」「歩数」「血中酸素濃度(SpO2)」「皮膚温の変化」などが取得できます。ただし、あくまで医療機器ではないので医療目的には使えず、日常的な健康管理に活用するためのものです。
取得したデータは専用のスマホアプリが処理/分析してくれます。ストレスや睡眠時の呼吸モニタリングなど、健康に役に立つデータがチェックできます。指輪とスマホはBluetooth接続でデータを同期します。
なお、スマホの通知をお知らせするような通知機能はありません。純粋に健康に関するデータを取得できるガジェットです。
●購入の決め手は、“サブスク不要”であること
今回、初めてRingConn 第2世代を購入しましたが、実は以前からスマートリングには興味を持っていました。しかし、当時は市場の先頭を走っていたOura Ringがサブスクリプションモデルで展開していたのです。Apple Watchユーザーの私にとって、サブスクの契約が必要なスマートリングには二の足を踏んでいました。既にスマートウォッチを利用している層が、月額料金を支払ってまでスマートリングに移行するケースは少ないかもしれません。
そうした背景もあり、RingConn 第2世代が打ち出した“サブスク不要”という売りは、購入の決め手になりました。
もう1つ重要な点があります。RingConn 第2世代は、iOSの「ヘルスケア」やAndroidの「ヘルスコネクト(Google Fit)」といったOS標準のヘルスデータ管理基盤と連携できます。
私はApple Watchを中心に複数のガジェットでヘルスデータを集めているため、最終的に「Appleヘルスケアにデータ連携できるか」が非常に重要になります。いくら個別の専用アプリが優秀でも、長い目で見たときに、結局データを破棄する羽目になると考えているためです。
●RingConn 第2世代の使用感は総じて心地よい体験
RingConn 第2世代は、指輪型でありながらサイズ調整の機能はありません。そのため、自分にぴったりのサイズを選ぶことが非常に重要になります。
メーカー側もこの点を重視しているようで、製品を購入する際には、最初にサイジングキットが送られてきます。ユーザーは、このサイジングキットを実際に日常生活で少なくとも24時間装着し、装着感を確認した上でサイズを選択するという手順を踏むようになっています。
その後、RingConn 第2世代本体の到着となりますが、実際に届いた本体を装着して驚いたのは、その軽さです。正直なところ「あれ? またサイジング用の指輪?」と思ったほどです。
セットアップも非常に簡単です。専用アプリをインストールして、指輪とペアリングするだけで完了します。あとは、普段通りに指に装着しておくだけですね。
アプリの使い勝手も、他のヘルスケア関連のガジェットに付属するアプリと大きく変わることはなく、直感的に操作できるでしょう。
iOSのウィジェット表示に対応しているため、歩数などの基本的なデータをiPhoneのホーム画面で手軽に確認できるのは、意外と便利です。ただし、ウィジェットの表示はリアルタイムではなく、データの同期処理を挟むため、若干の遅延がある点は注意が必要です。もっとも、この挙動はApple Watchなどの他のウェアラブルデバイスでも同様に見られます。
肝心の計測精度については、Apple Watchとの歩数比較で5%以内の誤差といった印象です。この手の数値は細かい正確性よりも傾向(トレンド)を見るのに使えばよいと考えているので、その点でも問題は感じません。
なお、RingConn 第2世代とApple Watchを同時に装着していても問題ありません。iPhoneのヘルスケアアプリが両方のデータを取得し、おそらく時間などの情報からよしなに処理してくれます。もちろん、2つの機器の合計歩数になるわけではありません。
また、本体はIP68の防水性能を備えています。運動や手洗いはもちろん大丈夫ですし、シャワーやお風呂でも大丈夫といえば大丈夫でしょう。ただ、お風呂や温泉は温度があるため、公式には大丈夫とは言っていないと思いますので注意が必要です。
いずれにせよ、私は石けんなどを使う場合は指輪が邪魔に感じてしまうので、外しています。その際に充電しておくだけで、後はつけっぱなしでもバッテリーは大丈夫そうな気配です。
総じて、シンプルで心地の良い利用体験ができるスマートリングだと感じます。
●睡眠データを簡単に取得したい方にオススメ
スマートリングの主用途として注目すべきは、「睡眠データの取得」だと思います。指輪は腕時計よりも就寝時の装着が気にならず、非常に自然な形でデータが取れます。今まで睡眠データの取得に二の足を踏んでいた方にはオススメですね。
……とはいえ、私はかなり前からApple Watchを装着して寝る派で、日中用と就寝用の2本を使い回す生活に慣れきっています。装着していない方は充電台に置いておくため、バッテリーが足りないとよく言われるApple Watchですが、私は特に気になりません。毎日充電できるサイクルを作っていますので、たとえ「3倍バッテリーが持つようになりました!」といわれても、結局毎日充電すると思います。現に、Apple Watch Ultraも毎日充電しています。
そうしたことから、もともとApple Watchで睡眠データを取得していたので、私としては実はRingConn 第2世代を買う大きな理由ではありませんでした。
Apple Watchなどのスマートウォッチを就寝時に着けない人にとっては、RingConn 第2世代は非常に有力な選択肢になると思います。バッテリーも1週間近く持ちますし、充電ストレスが少ないのも魅力です。
●少し気になった点
これはもう好みの問題ですが、私が選んだカラーは「フューチャーシルバー」です。サイジングキットの時にサンプルはあったのですが、実物大の指輪を見ると、思ったよりキラキラ感が強いです。マットな質感も種類があるとよかったな、と思います。指輪はファッションでもあるため、他のアクセサリーや時計とのバランスも関係してきますね。色選びは慎重にした方がいいかもしれません。
また、サブスクリプションが不要というのは大きな魅力ですが、逆に言えば「どうやってこの事業を続けていくのか?」という心配も残ります。収益モデルが確立しないとサービス終了のリスクもあるわけで、このあたりは難しいところだと感じます。アプリの継続的な更新は間違いなく必要です。
●デジタルデトックス&運動に
さて、Apple Watchを使っている人間からすると、機能面では基本的にApple Watch>RingConn 第2世代となります。取得できるヘルスデータも勝る点はないですし、Apple Watchは当然ディスプレイがありますし、通知の表示もできます。
しかし、Apple Watchをはじめとしたスマートウォッチは、多機能すぎるがゆえに、集中力が削がれるガジェットでもあります。もちろん通知オフ、画面オフ、と多少の工夫はできますが、それでも触ってしまう方も多いのではないでしょうか。では外しておけば、となるのですが、やっぱりヘルスデータは取得しておきたい自分がいます。
RingConn 第2世代を使ってしばらく経過しましたが、これは「デジタルデトックスに効くガジェットだな」と感じました。シンプルにヘルスデータを取得するのみで、横やりは入りません。
私はデジタル人間なので、データを取得できないと何かとソワソワしがちです。そうしたニーズを満たしつつデジタルデトックスも可能なRingConn 第2世代に魅力を感じました。スマートウォッチを外せることで、(スマートウォッチではない)普通の腕時計が付けられるというのも、実はうれしいポイントです。
そして、もう1つの利点は運動です。例えばランニングを行う場合、極端な話、スマートウォッチやスマホを持たずともデータを取得することができます。もちろんランニング中にデータは確認できませんし、他の運動系アプリ固有の細かな分析などはできませんが、とても身軽にランニングすることができます。スマートウォッチをつけて運動しづらい球技などでも、威力を発揮することでしょう。こうした点は、スマートリングの強みだと感じました。
●スマートリングの未来
さて、RingConn 第2世代から少し離れますが、初めてスマートリングを使ってみて、いろいろな可能性を感じた点についてです。
それは、スマートリングは「複数装着が可能」ということです。スマートウォッチは基本的に片腕に1台ですが、リングなら複数の指に同時装着ができます。そもそも、1本の指にも2個、3個と装着しようと思えば可能です。
つまり、スマートリング1台にあれこれ機能を詰め込まず、特化型リングとして展開するのもアリだと思うのです。血糖値測定専用リング、決済専用リングなど、目的別に作り分けてもよいですよね。
もう1つ、指の動きでジェスチャー操作ができる機能が欲しいですね。例えばプレゼンテーション中、指を空中でスワイプしたら次のスライドに進む。ちょっと未来的で、ワクワクしませんか? Apple Vision Proのように、指先の動きで接続した端末のブラウザスクロールするのも面白そうですね。
ちなみに、Galaxy RingはGalaxyスマートフォンでアラームの停止やシャッターを切る操作は可能です。
●「機械」と「指輪」を分離できないか
最後にもう1つ、提案です。Apple Watchがバンド交換でファッション性を高めているように、スマートリングも「センサーなどの本体と、外装(ようするに指輪部分)を分離できる仕組み」があっても良いのではないでしょうか。
機械部分はむき出しのモジュールで、その上から好みのリングを装着する。ペットボトルのキャップのようにクルッとはめるだけでも、マグネットで吸着するのでも良いと思います。
分離できることで、基板やセンサーのアップデートもしやすくなりますし、気分によって指輪部分も変えることができるようになります。そうなると、いろいろなデザインの指輪が欲しくなりますね。実現には大きさ含めていろいろな壁があるとは思いますが……。
こうした付加価値を作ることができれば、サブスクモデルに頼らずとも持続可能なサービスとして提供できる気がします。SDGsの観点でも、「壊れたらリングごと廃棄」よりは良いと思います。スマートリングのメーカーさん、ぜひご検討ください。なお、RingConn 第2世代の素材はチタン合金です。捨てるにはもったいないですね。
●スマートウォッチに替わるモノ
RingConn 第2世代は、基本的には「スマートウォッチに手を出すほどではないけれど、ヘルスデータには興味がある……」という方にオススメです。例えば、歩数を知りたいだけなのにApple Watchを買うのは大げさ、と思っている人。あるいは、ゴツいガジェットに抵抗感のある高齢の方にもフィットしそうです。軽くて邪魔にならず、1週間に1度程度の充電だけで済む。装着していることを意識せずに済む、というのは重要な要素だと思います。
そして、デジタルデトックスとしての使い方です。スマートウォッチを外し、RingConn 第2世代を装着。他の腕時計をつけるのもヨシ。思いっきりスポーツをするのも爽快ではないでしょうか。私も気が付けば、なんとなくずっと装着しています。