カレー沢薫の時流漂流 第351回 ジブリ風とか、写真の背景から場所特定とか、AIさんとの付き合い方に悩む
2025年5月12日(月)13時53分 マイナビニュース
ここでもAIの話題が増えてきたが、それだけAIが世間に浸透し、議論になることも増えたということだ。
最近物議を醸したのは「ジブリ風画像生成AI」である。その名の通りジブリ風の画像を生成してくれるAIだ。
もちろん、ジブリの作風を勝手に盗用するな、そもそもそのAIの学習元は絶対ジブリの絵だろうと非難は多かったのだが、誰もがAI生成に対して意識高尾山というわけではない。
○「メロスにはAIがわからぬ」では済まない時代に
別に悪用や商用に使うわけではなく、SNSの一ネタとして悪気なくこの生成AIを使ってみる人も多かった。
私も正直、愛嬌を親父のキンタマ段階で忘れて出てきてしまったこの顔も、AIの手にかかればジブれるのかと思うと興味があったし、使ってみようかとも思った。
しかし、その直後、温厚で知られるX相互フォローの方が「舐めるのもいい加減にしろ」とジブリ風AIについてガチギレてらっしゃるポストが流れて来たため、使わずに済んだ。
全くの門外漢が無邪気に生成AIを使ってしまうのは仕方がないが、画業の端くれとして私はもう少し生成AIに対し慎重になった方がいいような気がしてきた。
佇まいの好感度の低さに関しては「なんだ貴様ルッキズムか」とキレ返すことができる世の中になってきたが、その分、言動のコンプライアンスやリテラシーに対する視線は厳しくなる一方だ。
今回はたまたま踏みとどまったが、気無邪気にモラルブレイクする様を周囲に見せつけ、「君はそういう奴なんだな」と気づかないうちに人がいなくなったことは一度や二度ではない気がしてきた。
今のご時世、中年になってなってから少年の日の思い出がはじまることも珍しくない。むしろ世間の流れについていけなくなった中高年ほどエーミられている。
もはや「難しいことはよくわからない」「細かいことは気にするな」「メロスはAIがわからぬ」では済まなくなりつつある。
そのAI使って良いものか、今一度考える必要があるのだが、よくわからないからといって避けていると取り残される、という問題もある。
○昨今、AIさんに悩み相談する人が増えている
実際ChatGTPに課金して普段使いしている人も増えているし、最近よく見るのはAIに悩み事の相談など、話し相手としてとしての利用だ。
赤子やおキャット様に話しかけることができない人間がいるように、AIに質問はできても会話は恥ずかしくてできない者がおり、私もその一人だ。
しかし「AIとの会話能力」は、この孤立かつストレス社会をサバイブする鍵になると踏んでいる。
ストレスというのは体外に出すだけでなく、それを他者と共有することで、さらなる軽減効果が期待できるという。
つまり「人様に愚痴を垂れ流す」ことでストレスは軽減されるのだ。
ただこの方法は高い効果が見込めるが「聞かされる方に多大なストレスがかかる」という欠点があり、多用しすぎると、また少年の日の思い出がはじまりそれがストレスと化す。
だが、AIを人間と思って話せるように脳をチューニングしておけば、AIに愚痴を聞かせるだけでストレスが軽減できるし、「つらいのはみんな同じ」などと言い出す人間よりもAIの方がよほどマシな返答をするという意見もある。
AIが愚痴を聞かされまくった結果がターミネーターなのかもしれないが、人間の陰湿な攻撃に比べればAIの反逆などカワイイに決まっている。
○本当は怖い「リバースロケーションサーチ」
確実に日常に浸透し、私たちの暮らしを寄り便利にしていくだろうと予想されるAIだが、「便利」というのは「悪事を行うのに便利」という意味でもある。
最新のChatGTPが「写真の背景から住所が割り出せる」という、この個人情報保護時代に誰も止めなかったのが不思議な機能を搭載したそうだ。
今一度性善説を信じてみようという試みだったのかもしれないが、早速悪用されまくっているいるようで、AIが「人間は基本的に悪」ということを学ぶ結果となった。
その内規制が入るかもしれないが、今のところは自衛するしかなく、近所の飲食店で撮ったような写真は載せない方がいいし、旅行先を特定されたくないなら旅先の写真もSNSに載せない方がよい。
イケてる場所に行ってイケてる写真をとってSNSに挙げるという、長く続いたキラキラ仕草がAIによってぶち壊されそうになっているということだ。
AIによって人間文化が崩壊させられそうになっているという意味では、確かにこれもターミネーターである。