山田祥平のニュース羅針盤 第489回 「NTT株式会社」が7月に誕生、民営化から40年
2025年5月13日(火)6時0分 マイナビニュース
NTTが同グループのCI(コーポレートアイデンティティ)を刷新する。1985年の民営化から40年を経て、設立時に設定した「日本電信電話株式会社」という商号と現在の事業内容のギャップが大きくなってしまったことを理由に挙げている。
「競争の激しいグローバル市場において、国内外統一のコンセプトのもとNTTグループの技術力やケイパビリティを分かりやすく示し、先進的なグローバル企業としてのブランド向上を図るため、グループのCIを刷新します」と表明している。そして、その新しい商号が「NTT株式会社」だ。ちょっと拍子抜けするくらいにシンプルだし、印象としては、どこが変わったのかといわれそうだ。
NTTはNippon Telegraph and Telephone Corporationの頭文字をとったもので、日本電信電話株式会社時代からも「NTT」を称してきた。それをストレートにNTT株式会社としたわけだが、海外からNTTの意味を問い合わせられたとき、どのように応えるのだろうかと人ごとながら気になってしまう。
○民営化から生まれた通信革命
かつて、電気通信事業は公共企業体の独占事業であり、いわゆる三公社五現業のひとつとして電電公社が存在した。1985年になって、電気通信事業法が改正され、民間企業であっても電気通信事業を営むことができるようになり、電電公社も民営化されて、今の日本電信電話株式会社となった。
電気通信事業法の改正は、われわれのライフスタイルに大きな影響を与えた。この改正でコンピューターに市販のモデム等の装置を接続して電話回線に接続できるようになったし、事業者が不特定多数の第三者間のメッセージを媒介してもよくなった。現在行われているテレコミュニケーションの基礎は、この改正をきっかけとして完成したといってもいいだろう。
○「通信専業」にお別れ、ライフスタイルを描くNTT
今回の商号変更は、事業内容とのギャップが理由とされている。40年前の民営化時から、同社は多くの事業内容拡張、追加、変更を繰り返し、現在では、電気通信の専業事業者ではなく現代人のライフスタイル全般をカバーするライフスタイル事業者に変貌した。
逆にいえば、現代人の暮らしは、通信事業者が提供してきた通信手段があってこそ成立してきたわけだが、今後は、ライフスタイル事業者としての同社が現代人の暮らしを豊かなものにしていく。
本当は、そのことを想像させるような夢のある商号がつけられればよかったのだが、NTT株式会社というのは無難すぎてちょっと残念な気がする。
○通信事業者のパラダイムシフトが進む
いずれにしても、今回のCI変更は同社が自分自身が電気通信の専業事業者ではないということを声高らかに宣言したということでもある。現実的には、我が国のMNO3社の事業内容を見てみると、どこもNTT同様に多岐にわたる事業を展開していることがわかる。
かつての通信事業者はもうない。通信インフラはライフスタイルを支えるために欠かすことができないものではあるが、そのインフラを使った新たなライフスタイルの提案こそが、各社に求められる。出版社や新聞社、ラジオ、テレビ局が支えてきたといってもいい現代人のライフスタイルだが、次の担い手は、どうも通信事業者が担うことになるようだ。40年。半世紀には満たないが長いようで短い。