ElevationSpace、宇宙から物資を持ち帰る回収カプセルの着水衝撃試験に成功

2024年5月14日(火)14時12分 マイナビニュース

ElevationSpaceは、同社が実現を目指す宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の初号機「あおば」の回収カプセルについて、福島ロボットテストフィールドにおいて着水衝撃試験を実施し、成功したことを発表した。
○地球低軌道での実証・実験機会の提供を目指すElevationSpace
高度2000km以下の“地球低軌道”については、アクセスや物資補給・回収が比較的容易であることから、日本政府が2023年に発表した宇宙基本計画の中で「宇宙環境利用のための貴重な場」と位置付けられ、アルテミス計画をはじめとする月以遠への活動にあたり必要となる技術の獲得・実証の場としても利用していくことが明言されている。
しかしそうした中で、高度約400kmを周回しこれまで基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されてきた国際宇宙ステーションが、構造寿命などの関係から2030年に運用を終えることが決まっており、今後の宇宙環境利用の場を継続的に確保することが課題となっている。
これらの課題を受けElevationSpaceは、無重力環境を活用した実験を無人の人工衛星で行い、その成果物を地球へと帰還させて顧客のもとに届けるサービスとして、宇宙環境利用・回収プラットフォームのELS-Rの提供を目指している。同サービスでは、宇宙での実証・実験の場を提供するのに加え、成果物を回収できることから、宇宙で実証した材料やコンポーネントを地上で改めて詳細に解析することなどが可能に。より高品質な宇宙実証環境を提供することで、民間事業者などのさらなる宇宙産業参入促進や、日本の宇宙産業力強化に貢献できるとする。
○ELS-Rの実現に不可欠なカプセルの大気圏再突入・回収技術
ELS-Rでは、人工衛星によって宇宙での実証・実験を行った後、高推力のハイブリッドスラスタを用いて地球低軌道を離脱し、大気圏へと再突入する。その際、衛星本体から分離した回収カプセルが大気圏を突破し、一定の高度に到達してからカプセルのサイドパネルを展開することで、内側のパラシュートが引き出され、緩やかに降下して海上に着水する仕組みだ。
その実現には、回収カプセルが燃え尽きず、損傷することなく地球まで帰還させるための大気圏再突入・回収技術が必要となる。中でも回収カプセルの構造設計や、パラシュートを展開し速度を下げて硬化させる技術は重要度が高く、特に同サービスではカプセル内のペイロードを顧客に引き渡す必要があるため、内容物への影響を最小限に抑えて着水させる必要がある。
こうした技術課題を解決することを目指し、ElevationSpaceは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2018年に成功させたISSからの物資回収ミッション「HTV搭載小型回収カプセル(HSRC)」の知見を踏まえるとともに、JAXAで同カプセルの開発を主導していた渡邉泰秀氏を技術顧問に迎え、開発を進めているとのこと。現在開発中の初号機あおばでは、HSRCと同様の円錐台形の形状や、HSRCで実証された熱防護材(アブレータ)を使用することで信頼性を担保しつつ、サイドパネル保持開放機構などには自社開発の独自技術を採用することで、低コスト化を実現したとしている。
そして今般同社は、2023年に連携協定を締結した福島県南相馬市に位置する福島ロボットテストフィールドにて、カプセル構造の耐衝撃性能を確認する着水衝撃試験を実施。その結果、複数確度での着水時衝撃加速度データの取得に成功したとのことだ。
なおElevationSpaceによると、あおばにおいては、ユーグレナによるペイロードである微細藻類ミドリムシなどを回収カプセルに収納し、宇宙で培養を行った後に地球へと持ち替える予定だとしている。

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