refeia先生が「Wacom Intuos」をねっとりとレビューするよ

5月18日(金)11時11分 ITmedia PC USER

Wacom Intuos

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 こんにちは! イラストレーターのrefeiaです。
 今回は、ワコムから発売されたペンタブレット「Intuos」のレビューをさせていただくことになりました。実をいうとレビューの打診を見て一瞬、「そういえば、いま板タブ(ペンタブレット)って絵師としてあまり積極的に欲しいもんでもないな……」などと思ってしまったのですが、そのあとフツフツと興味が沸いてきました。
 今やiPadや一部のWindowsタブレットのように、液晶に筆圧ペンで直接絵を描けるデバイスの選択肢がとても増えています。それに、昔のように液晶ペンタブレットといえば20万円以上するのが当たり前だった状況でもないです。
 それなら、いま板タブを持つうれしさって何だろう? その中でもカジュアルなものは、どう進んでいこうとしているんだろう? かつて自分がメイン業務ツールにしていたデバイスの現在をのぞきたくなったのです。
 ワコムのペンタブレットにはおおまかに2つのシリーズがあって、片方がプロ仕様の「Intuos Pro」、もう片方がカジュアル向けの「Intuos」。今回レビューするのはカジュアル向けの最新型。これが、手軽に楽しくお絵かきができるのかと、お絵かき以外の用途だとどうなのかについて、じっくり見ていきます。
●まずは外観チェック
 今回お借りしたのは、緑色のMediumサイズのモデルです。個人的には丁寧に製造された明るい色の樹脂の風合いが好きで、iPhone 5cも愛用していました。なので、背面を色付きの樹脂で覆って、表から見るとフレーム状にその樹脂の色が見える処理はとても好みです。
 Mediumサイズ以外にはSmallサイズもラインアップされていて、それぞれに黒、ピンク、緑色が選べます。黒色になるだけで高級感がぐっと出るので、こちらのほうが合う人も多いでしょう。
 そしてここから、カジュアルIntuosならではの親切仕様がたっぷりです。まずペンを本体上側のタグに差し込んで収納時になくさないようにできます。そしてケーブルには柔らかい素材のケーブルタイがついていて、きれいにまとめて置いておけます。
 そしてボタン部分はペンのトレー。
 本体の上面がほんの少し傾斜していて描きやすい角度になっています。左右逆置きにできることを選んだIntuos Proには出来ない芸当です。
 そしてこれ……ペンのお尻がキャップになっていて、中には替え芯が入っています。キャップ自体にも芯抜きの機能があります。あっと思った瞬間に手元でキャップを開けて、そのまま消耗した芯を抜いて新しいものを差し直すことができる、天国のような仕様です。
 Intuos Proの高級感あるペン立てと、それに替え芯が収納されている仕様も素敵なのですが、ペン立ては使うとは限らないし、フタの開け閉めが快適とはいいづらいものがありました。正直プロペンの消しゴム側を使っている人を見たことがないですし、プロペンもこの仕様にしてほしいぐらいです。
 カジュアル製品らしい柔軟な仕様が、肩ひじを張ったPro製品よりかえって良いのでは、と思えることが多く、かといってPro製品を悪くもいいづらいし、なんかもう……どう書いたらいいの?
●ペンもチェック。細身で持ちやすい!
 ペン自体も見ておきます。今回の付属ペン「Wacom Pen 4K」は、4096レベルの筆圧検知が可能になっています。プロペンシリーズのような厚手のゴムグリップはついていませんが、表面処理は上質で、特に軟質な素材を使っているようにも見えないですが指当たりも柔らかいと思います。
 そしてまた個人的な事情で恐縮なのですが、大好きだったけどProラインの現行世代では供給されていない「クラシックペン」とほとんど同じ太さでうれしくなってきます。
 プロペン2も見た目より軽くてとても持ちやすかったですが、さらに軽く、持ちやすくて動かしやすく、始筆の「板にぶつかってる感触」も少ないです。筆圧ペンを重たい金属で作りたがるメーカーは多いですが、こういうのは見習ってほしいところですね。
●設置してみました
 さてさて、さっそく後でお試しするするために設置してみましょう。今回はカジュアル製品なので、手持ちの新しくないノートPCをそのまま使うというシナリオでやってみます。
 え、Bluetooth最高すぎでは。Intuosは一部のモデルを除いてバッテリーとBluetoothが標準装備されています。収納された状態から使いはじめるまでの抵抗がとても小さくて、エントリー機にこそ必要な機能だと思います。
●筆圧などのデフォルト値には疑問
 4096レベルの筆圧検知ということで、少し試し書きしてみたのですが……Intuosのペンは軽い筆圧での反応が明らか急激で、筆圧を使った表現がコントロールしづらいです。ペンの自重だけをかけた状態で検知される筆圧を見てみると、プロペン2より軽いはずなのに、3倍ぐらいの筆圧値になっていました。
 そうと分かれば感度の設定を「硬い」にして、あとはお絵かきソフトの側で微調整すれば概ねプロペン2などと感覚はそろうのですが、ちょっと疑問が残るデフォルト設定です。一時的なものかもしれませんね。
 今回はカジュアル製品なのでオン荷重や最大検知荷重のチェックはしませんが、筆圧の感触を適切に設定しなおした状態で描いてみたところ、特に劣っているとは感じずに自然に描くことができました。
 また、デフォルトで気になる値といえば、検知範囲と画面範囲の割り当てが「縦横比を保持」になっていないところもです。仕様表によると本機の検知エリアの縦横比は16:10。これを16:9のノートPCに接続して真円を書いたら、楕円になってしまいました。これくらいの比率だと気づきにくいトラップです。
 とはいえこの両方とも、設定を変えれば問題ないものです。実際に買われた方や検討されているみなさんは、使いこなし術として覚えておくと良いと思います。
●ペンタブレットはお絵かき以外もはかどる!
 さて、ここから少し話がそれます。
 ペンタブレットといえば元々は絵を描くためのデバイスです。このレビューも絵に興味ある人向け全振りがいいかなと思ったんですが、実際に色々便利なのでしょうがない……この感覚はシェアしたいです。
 自分がペンタブレットで絵の仕事をしていた時期、多くの一般的な操作もマウスではなくペンタブレットでしていました。
 特に、当時趣味にしていたデジタル一眼のRAW現像ソフトで、細かいツマミ群や画面端に散在するUIを素早く追うのに、マウスより快適だと感じていました。スポット修正なども、そのままペンですらすらとできます。文字入力も、親指と手のひらで挟んだ持ち方に切り替えればペンを置かずにできます。
 というわけで、さらにお絵かき以外の用途で掘り下げていこうと思ったんですが、その前にちょっと……。
●あ、学校行きます
 ちょっと専門学校に講師をしに行ってきました。せっかくなのでIntuosで授業をします。
 何がしたかったかというと学校の備品(!)のIntuos Proとのサイズ比較です。おなじMediumサイズでこのコンパクトさ、よくないですか?
 そして学校帰りに、都内某所のデザイン事務所へ。
●「デザイナーだったら板タブを使うべき」featuring 人気プロデザイナー
 脱線しすぎてすみません……お絵かき以外にペンタブレットが便利というトピックに戻ります。
 以前から、デザイナーさんがペンタブレットで仕事をしているという話は知っていたのですが、せっかくの機会なので、デザイナーさんご本人に話を聞きにいきました。
 今回お話を伺うのは、「まんがタイムきらら」などの雑誌や書籍など多くの作品の装丁・デザインなどを担当しているデザイン事務所「KOMEWORKS」の代表、木緒なち(@kionachi)さんです。
refeia よろしくお願いします。まず具体的な情報を伺いたいです。使われている機材や使用歴について教えてください。
木緒 MacにIntuos 5(Proラインの先代モデル)を接続して使っています。サイズはMediumですね。5の前は4も3も使っていたので、板タブ作業に移行して10年ぐらいです。
refeia 10年は長いですね……板タブでデザインしてみようと思った動機ってどんなでした?
木緒 もともと自分はずっと1人でやっていたんですが、スタッフ複数が入れる事務所を持つ前に、あるデザイン事務所のオフィスを一時的にシェアさせていただいていた時期がありまして。そこのスタッフさんがみんな板タブだったんです。
refeia ああ、それは分かりいやすいですね。それで良さそうと思ってやってみてという感じで。
木緒 そうですね。デザイン作業をしていると、手書き文字を作ったりとか、手書きで星や丸を作ったり、いわゆる何らかのアナログ感があるオブジェクトを作る工程って非常に多いんですよ。
木緒 液タブを使ったり、紙に書いたものをスキャンしたりするような本格的な工程がいるものというよりは、手軽に作りたいというときに、マウスだとやっぱり書きにくいんです。それが全部、板タブのオペレーションだと(マウス的な操作と)シームレスにできるようになっちゃう。板タブを使い始めたら一気にそればかりになりましたね。
refeia ちょっと描いたりする以外のマウス操作で板タブだったからうれしかったことは他にありますか?
木緒 パスですね。格段に楽になりました。
refeia 精密に動かしやすいということですか?
木緒 逆です。マウスだとどうしてもカチッとした動作になりますが、タブレットだと「トントントン……」という感じで、例えば、トレースするような操作も感覚的にできます。マウスだとどうしてもカーソルを追いかける感じの操作になって、感覚的にトレースすることが難しいです。
木緒 ハンドルに関してはマウスに慣れた人と板タブでは速度は変わらないと思います。どちらかというとハンドルをきれいにそろえる作業よりは、楽に形を作っていけるいい具合のアナログ感が役立っている感じですね。
refeia なるほど……分かりました。ところで新しいIntuosどうですか?(スッ……)
木緒 これが新しいやつですね。ボタンの位置が良いですね。いや、もともと横についてるボタンが、すごく邪魔だったもので……買うと必ず全部無効にするっていうのが定番だったんですけど、これだったらいいですね。
refeia Intuos Proのシリーズだとキーボードを触るときにボタンが誤爆しますからね。左側をボタンにした配置では左腕で誤爆、右側にすると普通に右手で誤爆するという……でもあんまり、Proより良くなってるみたいな書き方しづらいですね。
木緒 それはまあ、いいづらいのでまあまあ(笑)
木緒 自分はProの仕様のものを使っていたのですが、これを見てみると意外とこちらのほうがいいんじゃないかという気がしています。手触りもいいですし、ペンがこれくらい細いと使いやすいです。どうしてもプロペンは太くなるし、ごつくなってしまうんですけど、これくらいだと使いやすい気がします。
木緒 あとはIntuos 5は表面に細かい溝があってゴミがよくたまるので、そういうのがないのもいいですね。何かガスコンロがIHに変わったときのような清潔感があります。
refeia 液タブも溝があったころは謎の物質がたまっていました……
木緒 Intuos Proと、Intuosの間のメリットとデメリットが明らかになってくると、正直デザイナーはIntuosのほうが良い気がしてきました。
refeia 検知範囲のサイズについてはどう思われます?
木緒 オフィスではMediumですが、自宅で使ってるIntuosってSmallなんです。それが意外とやりやすいんですよ。家ではそんなに使用頻度が高くないかなと思って小さいのにしたんですけど、ぜんぜんできるな、って。
refeia 家のディスプレイは何型ですか?
木緒 27型です。絵描きさんとは状況が違うかもしれないですが、デザイナーだとツールバーなどの画面端の方のUIをよく触るし、カーソルもよく端から端まで動かすから、小さい方がむしろやりやすいという面もあります。
refeia 27型をSmallで!? なんとなく、Smallで快適なレベルは16型ぐらいまでかなって勝手に思ってしまっていたので、27型を快適に使えるというのはとても良い情報です。
refeia ありがとうございました、すごくいっぱい聞けました。今回のインタビューは製品レビューの中の一部なんですよ、それにこんな充実したところを詰め込んじゃうのはもったいない……
木緒 「デザイナーだったら板タブを使うべき」みたいな話できますよほんと(笑)
 というわけで、ペンタブレットを使うとクリエイティブ作業のいろいろな部分で便利になってくるのはお分かりいただけたでしょうか。液晶ペンタブレットだと通常のペンタブレットの便利さを全部カバーできるわけでもないので、なかなか悩ましいところがありますね。
●お絵かきします!
 さて、恒例のお絵かきをしていきましょう。今回は別の制作業務に使うのは微妙に怖かったので、先に載せた古いノートPCのまま、付属ソフトにも含まれている「CLIP STUDIO PAINT」でお絵かきをしていきます。
 まずはラフから。ペンタブレットは授業でたまに使うぐらいで、イラスト製作には10年近く使っていないですが、意外とサクサク描けます。
 筆圧は先に書いたように調節済み、ただし、Cintiq Proよりもペン先の摩擦がずっと強いので、同じ感覚では描けません。硬めの鉛筆で筆圧をかけながら線を引いているような、シッカリした感じで、こっちのほうが好みという人も多いと思います。
 Mediumサイズの検知範囲は自分にとってもちょうど良くて、腕を振り回さなくてもいいので楽に感じます。
 次に線画。ここはさすがに、慣れに慣れているCintiq Proを使うよりは失敗ストロークが増えてきます。とはいえ、線が決まらなくて苦痛という感じでもないし、品質面でも液晶ペンタブレットを使ったのと大差ないよな、という感じで線が出てきます。
 良いです。何かちょっと感覚があわないとすぐ手が止まる癖があるのですが、今回は止まらないです。
 塗り行きましょう塗り。筆圧を軽くして滑らかなグラデーションを作るようなストロークも、普通です。普通に進んでいくってすばらしい……
 バッテリーは10%減るのに約1時間20分かかりました。人間より先にタブレットがスタミナ切れになることはほぼなさそうです。
 その他、液晶ペンタブレットと比べてペンを動かす範囲が小さくてすむメリットとして、どんどんとストロークを重ねていってもあまり疲れないというのがあります。おなかは気の向くままナデナデしつつ、髪の毛はシンプルめにして完成です。
 繰り返しになりますが、不慣れなペンタブレットで1枚描くのは大変かな、と思っていたんですが、全然大変じゃなかったです……。よかったね!
 少し気になったのがペン先の摩耗。数時間の作業でも目に見えて先が削れています。摩擦が強いので仕方がないとも思えますが、普段使っているCintiq Proとハードフェルト芯だと、ずいぶん使い込んでもペン先は「べつに?」みたいな顔をしているので、それに慣れていると驚きます。
●まとめ
 というわけで、外観と設置を見て、液晶ペンタブレットユーザーとしてペンタブレットのうれしさを再発見することができて、製作しながらのインプレッションもできました。いつものように良かった点と気になる点をまとめていこうと思います。
気に入った点
・かわいらしいピスタチオグリーンとベリーピンクの2色、またはシックなブラックが選べる
・非常にコンパクトなボディー
・4096段階のペンや無線接続など、過去の上位機を食うようなスペックながら非常に買いやすい価格
・誤爆しにくさを極めたボタン位置と形状
・細身で持ちやすく、動かしやすいペン
・ペン置きになるボタンや、ペンが収納できるタブ、替え芯が内蔵されているペンなどの親切仕様
・ダウンロード可能なソフトに「CLIP STUDIO PAINT」が含まれている
・「CLIP STUDIO PAINT」以外にもフォトレタッチソフトやリアルブラシ系のペイントソフトが含まれていて、モデルによってその中から1本〜3本を選んですぐに製作を始められる
・バッテリー稼働時間が長い
・引っぱる力で線をコントロールしやすい、強い摩擦
人によっては難点になるかもしれない点
・デフォルトの筆圧設定が濃すぎる
・デフォルトの設定では縦横比を維持してくれない
・Largeサイズ、タッチ機能、傾き検知がない
・筆圧が強い人は持ち疲れしやすい、細身のペン
・常に摩擦が強く、芯の摩耗も早い
・汎用のUSBケーブルを接続すると上側にケーブルが飛び出るため、設置しづらくなる
といったところでしょうか。
 最初は「積極的に欲しいもんでもないな」などと思っていましたが、短い間とはいえ学校に連れ出したり実用したりしているうちにちょっと愛着がわいてしまいまして……あーこういう気軽なのっていいな……という気持ちです。
 自分の癖という面もありますが、デジタル一眼を使っているときも、安いカメラのほうが気持ちが楽で楽しくなってくる場合が多いです。自分は普段はCintiq Proを使用していて、性能面とそれで得られるアウトプットや、製作の楽しさには満足しています。
 ですが、Intuosを使っているときに感じる気楽さと、そこからくるプラスαの楽しさのような不思議な境地は、Cintiq Proではずっと得られないのではという気がしています。
 前々から感じていたペンタブレットの広範な便利さもシェアできましたし、Intuos自体も使って楽しく性能十分で、うっかりしちゃってもお財布ダメージがほとんどない製品でしたし、レビューできてよかったです。
 あとお絵かきも楽しかった。

ITmedia PC USER

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