どこでもサイエンス 第285回 タイムカプセルとサイエンス

2024年5月29日(水)6時11分 マイナビニュース

その時にちなむモノを納め、未来に開封する「タイムカプセル」。1970年に開催された万博で話題になり、以降、卒業記念にみんなで埋めるのが定番となりました。ところで、そのネタ元になったタイムカプセルですが、調べてみると結構サイエンスなんです。今回はタイムカプセルとサイエンスについてご紹介いたします。
2017年の朝ドラ、有村架純さんがヒロインの「ひよっこ」では、1964年の東京オリンピックに触発され、地域で聖火リレーをする様子が描かれていました。大きなイベントがあると、それに触発された何かが行われるようになりますが、タイムカプセルはその代表でしょう。1970年の大阪での万博で実施され、日本中の小学校で樹木の下に空き缶を埋めて、同窓会の時にどこに行ったかわからなくなるというドラマが今日も繰り返されています。たぶん。
さて、タイムカプセルですが、聖火リレーが東京発祥でないように、タイムカプセルも大阪が最初ではありません。ただ、聖火リレーは1936年のベルリンオリンピックで導入されオリンピックごとに行われているのに対し、タイムカプセルは別に万博でマストではないのがちがいます。逆に聖火リレーよりもタイムカプセルの方が頻繁に各地で行われておるでしょうなー。
さて、タイムカプセルのはじまりは、1939年のニューヨーク万博です。大事なものを封入して未来に伝えるということなら、古代メソポタミアに遡るのだそうですが、まあ、タイムカプセルという言葉を使うようになったのはこのときでした。
電機大手で、ニコラ・テスラも在籍していた米ウェスティングハウス社の企画で、「Westinghouse 1939 Time Capsule I」という名前で国際タイムカプセル協会(なんてのがあるんですな)のデータベースに登録されています。万博会場になっていた、ニューヨーク市の(マンハッタンではなく、東側の)クイーンズ地区のフラッシング・メドウズ・コロナ・パークに埋められております。まあ、“ニューヨークの羽田”、ラガーディア空港の近くです。
タイムカプセルですが、その命名は、万博の広報担当でSF作家でもあったGeorge Edward Pendrayなのだそうです。当時は近く文明が滅びるのではないかという考えが広まっており、5000年後の(文明が滅んだあとの)未来へ現代文明を伝えるといった意味あいがあったそうです。ちなみに博覧会のテーマは「世界の明日の建設する」で、万博の最中にナチス・ドイツがフランスに侵攻して第二次世界大戦がはじまるという、未来が見通せない時期でした。
1939年のタイムカプセルは、ウィキペディアに詳しーくのっていておもしろいですが、長さ3m弱(90インチ))、直径30cm弱(9インチ)の腐食しにくいように銅にわずかなクロムと銀を混ぜたCupaloy(まあcupsule用という意味ですな)合金製の重さ360kgの円筒でした。タイムカプセルのために、合金を開発する。まあ保存のサイエンスが総動員されたのですな。
中にいれた5000年後の西暦6939年に開封するものは、日用品類、雑誌等に、マイクロフィルムや映画におさめた記録、種子類、繊維などの素材などとなっています。記録のなかには、タイムカプセルを納めたときの惑星の配置などもあり、開封した人が時代の謎解きに使えるヒントになっているとのことです。ちなみに窒素が充填されて腐食されないように配慮されているそうです。まあ、こちらに詳しく書かれていますので、興味があれば読んでくださいませね。
さて、1939年のタイムカプセルのあと、国際タイムカプセル協会のデータでも非常に多くのタイムカプセルが埋められました。ニューヨークでは1965年にも再度タイムカプセルが作られ(こちらはステンレス製)、1939年のタイムカプセルのすぐ近くに埋められています。
ただし、万博ごとに行われているわけではないのでございます。
さて、1970年に大阪で行われた万博のタイムカプセル「タイム・カプセルEXPO'70」は、松下電器産業(現パナソニック)と毎日新聞の共同事業として行われました。重さは1.7トンで、壺型の特殊ステンレス製。毎日新聞が万博の2年前から読者に「何を入れるべきか」アイデアを募り、有識者による会議を経て収納物が決定しています。
当時のファッションや義眼のようなもの、雑誌や、風俗を描いた絵巻。種子や各種化学材料、新幹線や国産飛行機YS11も収納したかったそうですが、無理なので模型。などが2000点あまりが選定されました。こどもの作文も入っており、読んだことがあるのですが「冥王星に涼みに行こう」とかなかなかぶっとんでいてとてもいいです(褒めています)。なお、自然科学分野が742点と一番多くなっています。科学を未来に伝えたいという思いが、人々の中にも強かったのでしょうかね。
さて、タイム・カプセルEXPO'70は吹田市の1970年3〜9月に万博会場の松下館で展示された後、1970年末に10kmほど南に離れた大阪市中心部の大阪城の前に2基が埋められました。100年後と5000年後に開封されることになっています。ちなみに西暦2000年に1度チェックで開封だったのですが、たった30年なのに結構忘れられていて、わたわたと実施したという話がございます。100年後、ちゃんと開封されるのかな。人間、忘れやすいですからねえ。
さて、大阪市の東に隣接する門真市のパナソニックミュージアムでは、タイムカプセルを顕彰する展示があり、また、大阪城の向かいにある大阪歴史博物館では、タイムカプセルの予備と中身と同じセットが収蔵され、一部がときどき展示されています。大阪にいけば、タイムカプセルについては今でも知ることができるのでございます。
さて、そんなこんなしているうちに2025年の万博が近づいてきました。今回もタイムカプセルがあるかどうかはいまのところわからないですが(少なくとも中身の募集をしているという話は聞かないなあ、パナソニックもやるとは言っていないなあ)、もしあれば、何が入るのですかね。いまどきだから物理的なものではなくデジタルデータをブロックチェーンで保持するのかもしれませんが。もしあれば、私はぜひ見てみたいです。
東明六郎 しののめろくろう 科学系キュレーター。 あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。 この著者の記事一覧はこちら

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