NAIST、iPS細胞などの移植後腫瘍化の発生確率を抑制する技術を開発

2024年6月3日(月)10時46分 マイナビニュース

奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)は5月31日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)などが持つ多能性に不可欠なタンパク質「EPHA2」を発見し、同タンパク質は一部が細胞の外側に突き出していることから、それを指標にすることで、移植細胞に残存したそれらの多能性幹細胞を取り除き、移植後の腫瘍化の発生確率を抑えることに成功したと発表した。
同成果は、NAIST 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 幹細胞工学研究室の印東厚助教、同・栗崎晃教授らの研究チームによるもの。詳細は、幹細胞の分子生物学研究に関する全般を扱う学術誌「Stem Cells Translational Medicine」に掲載された。
iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞は、細胞分裂した際に自分と同じ細胞を作り続ける能力(自己複製)、およびさまざまな細胞に分化する能力(多能性)を有する。それを利用し、近年は機能喪失した臓器や組織を取り戻すための再生医療への応用が進められている。ただし、移植した細胞中に分化しなかった多能性幹細胞が混入すると、移植後に分化しながら増殖を続け、最終的に腫瘍を形成してしまうという安全面のリスクが現状存在している。多能性幹細胞の安全な移植を実現するには、その腫瘍化してしまう細胞を除去する技術が必要となっている。
その課題を解決すべく研究チームでは、細胞膜に埋め込まれる「膜タンパク質」に着目し、細胞外に出ている部位を検出することで、遺伝子操作や侵襲をすることなく多能性幹細胞を捕捉する技術の開発に取り組んできたという。
研究チームはこれまで数多くの膜タンパク質の特性を研究し、今回、がん化の可能性を持つ多能性幹細胞の指標となるEPHA2を発見したとのこと。同タンパク質は、健常者の体内ではほとんど存在せず、初期胚やガン細胞でのみに存在することが確認されていた。また研究チームはこれまでの研究で、EPHA2がES細胞でも発現していることを解明していたとする。
そこで今回の研究では、まずEPHA2が多能性幹細胞に必要不可欠なものかを調べるため、同膜タンパク質を作れなくしたマウスES細胞が作製された。その結果、EPHA2がなくなるとES細胞は幹細胞性を維持できなくなることが判明。さらに、山中ファクター(京都大学 iPS細胞研究所の山中伸弥教授がiPS細胞の開発で用いた4つの遺伝子(OCT4、SOX2、KLF4、cMYC)のこと)の1つである「OCT4」とEPHA2は連動して発現していることも突き止められた。さらに、EPHA2タンパク質を指標にすると、高い効率でES細胞を捉えることができることも確かめられたという。
ヒトiPS細胞やマウスES細胞を分化させた「胚様体」(多能性幹細胞を浮遊培養することで形成される3次元の細胞凝集塊)の中には、しばしば分化していない多能性幹細胞が残存している場合があることが知られている。そこで続いては、EPHA2を指標にして、混入したiPS細胞やES細胞が引き起こす腫瘍化を抑制できるかどうかが解析された。
その結果、残存細胞には高い確率でEPHA2が発現していることが発見されたとのこと。免疫不全マウスに胚様体を移植する実験では、EPHA2発現細胞を取り除くと、移植細胞から腫瘍の発生を大幅に抑制できることが確認されたという。今回の解析では肝臓細胞を用いた解析が行われたが、EPHA2が用いられた細胞の品質管理は、神経組織・肺・腎臓など他の臓器にも適用できる可能性が考えられるとしている。
ヒトiPS細胞を用いた細胞移植の汎用的な医療利用が期待されている。しかし、移植細胞が腫瘍化してしまったのでは再生医療どころではなく、がん細胞を移植するのに等しいこととなるため、それを避けるためには、移植細胞の品質管理が非常に重要とされる。研究チームは、今回発見した膜タンパク質EPHA2が移植細胞にないという事実が、安全面でのチェックリストになることを期待するとしている。

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