「漫画村を置き換えたい」 “合法無料漫画サイト”「漫画ビレッジ」開発者の思い

6月15日(金)10時8分 ITmedia NEWS

漫画ビレッジ

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 掲載漫画すべてが無料で読めるサイト「漫画ビレッジ」が人気を集めている。
 その名称やデザインは、海賊版サイトとして悪名高かった「漫画村」に似ているが、漫画ビレッジは海賊版サイトではない。出版社の公式漫画アプリなどで無料公開されている作品を集めた、“合法”無料漫画のリンク集だ。タイトルやジャンルから作品を探せ、漫画アプリの作品ページに誘導。現在、4700以上の作品(シリーズ)を収録している。
 「漫画ビレッジは無料をうたってるが、漫画は無料だとは思っていない。正当な対価を支払うべきと考えている」。開発したフリーエンジニアの遠山晃さんさん(31)は話す。その真意は——。
●「『合法漫画村』があれば面白い」
 漫画ビレッジは、「少年ジャンプ+」「LINEマンガ」「漫画ZERO」「Kindle」などの漫画アプリ・サービスをクロールし、無料で配信されている作品を集めたリンク集だ。漫画タイトルで検索したり、「少女」「女性」「少年」「青年」といったジャンル別に作品を確認できる。
 ログイン不要で閲覧できる作品は、Webブラウザでそのまま閲覧可能。「漫画アプリの登録ユーザーが一定期間待つと無料で閲覧できる」などの条件がある作品の場合は、各アプリのログインページに誘導する。スマートフォン向けに最適化されており、ほとんどがスマートフォン・タブレットからの利用という。
 サービス誕生のきっかけは、友人で起業家の古川健介さん(37)との何気ない会話だった。「『合法漫画村』があれば面白いんじゃない?」「Webブラウザだけで漫画が読めるといいよね」。漫画村が閉鎖された4月末ごろ、古川さんとこんな話になり、実際に作ってみることにしたという。
 漫画村は、著作者に無断でアップロードされた海賊版漫画を無料で読ませるサイトだった。一方で、正規の漫画が無料で読めるアプリも多数出ている。ただ、どのアプリでどの漫画が何話まで読めるか分かりづらく、アプリを複数ダウロードして確認するのも面倒。「漫画アプリを横断し、Webブラウザで読めるサービスがあれば便利では」と考えた。
●「漫画村を置き換えたい」 サイト名や構成、あえて「漫画村」に似せる
 サイト名は当初「コミフリ」にしようと考えていたが、直前になってあえて、漫画村に似せた名称「漫画ビレッジ」を選び、「manga-village.com」のドメインも取得した。漫画村に似せることで、漫画村のユーザーに漫画ビレッジに来てもらい、合法に、お金を払って漫画を楽しむ習慣をつけてほしいと考えたためだ。
 漫画アプリなどで無料で提供されている作品の多くは、数話だけ無料で読め、続きを読みたい場合は有料で購入したり、時間が経つのを待つ必要がある。「最初の数話は無料で読んでも、面白ければ続きが気になり、有料でも購入するはず。無料漫画を探している人にも、最終的にはお金を払って読んでもらいたい」と遠山さんは言う。
 遠山さん自身は毎月5万円ほど漫画の電子書籍に費やすほど漫画好きで、海賊版サイトは使ったことがないという。「漫画村の影響で、中高生に『漫画は無料』という認識が広がるのは良くないと思っている」。有料で販売されている作品が海賊版サイトなら無料で読めるとなると、読者にとってはありがたいことのように思うかもしれないが、「正当な対価を支払わないとどこかにひずみが出て、漫画のエコシステムが壊れてしまう」と遠山さんは考える。
 サイトデザインも「漫画村」にあえて似せている。「漫画村はユーザーのことをすごく考えて作られており、出版社などの漫画アプリよりはるかに使いやすく、読みやすかった」ことに加え、「漫画村に慣れている人に漫画ビレッジに来てもらいたい」という思いがあるためだ。遠山さんは漫画村を使ったことがなかったため、過去のWebサイトを検索・確認できる「Internet Archive」で漫画村を見つけ、参考にした。
 漫画ビレッジは今後、SEO(検索エンジン最適化)を進めることで、ネット上で無料の漫画を探している多くの人にアプローチしていきたいという。具体的には、「無料 作品名」で検索した時、漫画ビレッジの作品が上位に来るようにしたいと考えている。
 「漫画村を置き換える存在になりたい。漫画村を使っていた人たちがいつの間にか漫画ビレッジに来て、最初の数話は無料で読めても、続きを読みたいならお金を出して買うのが当たり前、という意識になってもらえたら」
●月間コストは10万円以上だが「広告でペイできそう」
 開発にかかったのは約1カ月。個人でゼロからサイトを開発したのは数年ぶりだが、「ここ5年ほどで劇的に開発がラクになった。開発にかかる手間や時間は半分ぐらいになったのでは」と遠山さんは話す。集中すればもっと短期間で開発できたはずだが、「“個人開発あるある”ですが、なかなかやる気が続かなくて……」と笑う。
 開発がラクになったのは、ここ数年でWebサービス基盤やフレームワークなどが急激に整備されたためだ。漫画ビレッジの開発には、「Google Cloud Platform」や「Cloud Firestore」を活用。FireStoreはWebAPIとデータベース、ロードバランサが一体化されているためバックエンドを意識せずに開発でき、とても便利だったという。「フロントだけ設計すれば、バックエンドエンジニアがいなくても、パズルのようにサービスが作れる時代になった」
 当初は月間100万ページビュー(PV)あれば御の字と思っていたが、想定以上にアクセスが集まり、現在は月間500〜800万PVペースで利用されているという。25〜34歳のユーザーが多く、男女比は7:3ほどだ。
 予想以上に利用されている分コストもかかっており、サーバやCDN、検索サービスなどに月間10万円以上を支払っている。個人の持ち出しで続けるのは厳しいと判断し、6月上旬からサイトにAdSense広告を入れたところ、「経費は広告でペイできそう」な見通しだ。今後はSEO強化に加え、使い勝手の改善、対応漫画アプリ・サービスの増強などを行っていきたいという。
●出版社からも好意的な反応 「意見や要望、待っています」
 漫画ビレッジに掲載されているのは正規に無料提供されている漫画とはいえ、配信元から見ると、自社サービスではない導線から読者が入り込むことになる。それが歓迎されるか分からず、「出版社やアプリ運営元から否定的な声が出るかもしれない」と覚悟はしていた。だが実際にオープンしてみると、出版社やアプリ提供側からも好意的な反応が届いているという。
 例えば、小学館の漫画アプリ「サンデーうぇぶり」からは、「是非漫画ビレッジに載せてほしい」という連絡があり、担当者に会ったところ大歓迎を受けたという。一方、「漫画ビレッジへの掲載をやめてほしい」という連絡はまだ1件もないそうだ。
 遠山さんは出版社やアプリ提供元と積極的に連携したいと考えており、意見や要望があれば是非連絡してほしいと話している。

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