電話番号が“汚れている”とは 契約したばかりのスマホに不審な電話がかかってくる理由

2024年6月24日(月)11時11分 ITmedia NEWS

 新しく契約したばかりのスマートフォンに、怪しい電話がかかってくるという経験をした人という人が増えているようだ。その理由は電話番号が逼迫(ひっぱく)しているため、以前他の人が使っていた番号が再割り当てされているため。古くからある事象ではあるのだが、現在そうした事象に出くわす人が増えているのはなぜだろうか。
●実はリサイクルされている携帯電話番号
 ここ最近SNSで、新たに契約した携帯電話の番号に、突然不審な電話やSMSが届く……という経験をしたという投稿が話題となり、同じような経験をした人が同情を示すなどして話題となったようだ。
 その内容を見るに、単に見知らぬ他人や知らない会社から電話がかかってくる、というケースだけではないようだ。中には金融事業者や法律事務所からの債務回収、警察からの事情聴取などの電話がかかってくるケースもあるようで、どう喝じみた電話を受け怖い思いをした、という人もいる様子だ。
 新規で携帯電話回線を契約したのに、なぜ知らない人からそのような電話がかかってくるのか? と疑問を抱く人は少なくないと思うが、実はこうした問題は比較的古くから存在するものでもある。その要因となっているのが、携帯電話の番号の数に限りがあることだ。
 現在携帯電話や、既にサービスを終了したPHS向けとして割り当てられている電話番号は、「070」「080」「090」から始まる11桁の番号だ。このうち4桁目が0の番号は割り当てられていないことから、単純計算すると9000万×3=2億7000万の電話番号が、携帯電話やPHS向けとして割り当てられていることになる。
 しかしながら携帯電話は非常に多くの人が利用していることから、番号は常に不足傾向にある。実際総務省の資料をたどると、2016年3月時点で2億3260万番号が携帯各社に指定済みとされていたようで、10年近く前には既に、相当数の電話番号が不足している状況だったことが分かる。
 ただ総務省の「電気通信番号に関する使用状況の公表(令和4年度)」によると、2022年度末時点で携帯電話・PHS用の090/080/070番号の使用数は約1億8414万とされている。2億以上の電話番号が全て使われている訳ではなく、携帯電話会社が在庫として保有している番号も多く存在するものと考えられる。
 だがここで考慮しなければいけないのが、それら電話番号が全く使われていないものなのか? ということ。日本で携帯電話番号のサービスが開始したのが今からおよそ37年前となる1987年であるし、2006年までは電話番号を変えずに他の携帯電話会社に乗り換えられる「番号ポータビリティ」の制度がなく、携帯電話会社を変えるには電話番号ごと変える必要があった。それゆえ解約済みの回線を含んだ累計で言えば、既に2億7000万をはるかに超える電話番号が使われてきたと考えるのが妥当だろう。
 その一方で、携帯各社に割り当てられている電話番号の在庫には限りがあることから、新規契約者に対して常に新しい番号を割り当て続けることはできない。それゆえ解約した人の電話番号を、一定期間が経過した後に新規契約者に割り当てるということが古くから実施されてきたのである。
 とはいえ、長い間連絡を取っていなかった友達や知り合いなどが、昔の番号に電話をかけるというケースは時々あるだろう。また債権回収などであれば、債権者の新たな電話番号が分かるまで同じ電話番号に問い合わせをし続けると考えられる。それゆえ新しい電話番号を契約したら、全く知らない人や会社から電話が来て困る、という事象は比較的古くからあったものなのだ。
●環境変化で携帯電話番号の流動は急加速
 それがなぜ、今になってそうした問題に出くわす人が増えているのかというと、携帯電話サービスの在り方が大きく変わっていることが影響しているのではないかと筆者は見ている。
 携帯電話会社のサービスは以前、長期間の契約を約束する代わりに毎月の料金を割り引く一方、中途解約すると高額な違約金が請求される、いわゆる「2年縛り」などがあったことから解約がしづらかった。だがNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が市場を寡占し、“縛り”によって競争を停滞させている状況を問題視した総務省がメスを入れ、結果として2019年の電気通信事業法改正によって“縛り”は有名無実化。解約が非常にしやすくなっている。
 それに加えて、2020年に首相に就任した菅義偉氏の政権下で、携帯電話料金の引き下げが行政主導で進められた結果、低価格の料金プランが急増。月額0円から利用できるKDDIの「povo 2.0」の登場や、当初月額0円から利用できるサービスを提供していた楽天モバイルの新規参入などもあって、携帯電話サービスを契約する敷居も大幅に下がっている。
 それに加えて、アップルの「iPhone」やグーグルの「Pixel」シリーズがeSIMを採用したことを機として、物理SIMとeSIMの「デュアルSIM」に対応するスマートフォンが一般化。そして2022年に、3日間にわたって発生したKDDIの大規模通信障害の影響により、eSIMを非常時のバックアップ回線として活用する動きが進んだことから、1台のスマートフォンで2つの回線を使っている人も増加傾向にある。
 そうした複数の要因からここ数年のうちに携帯電話番号の流動性が急速に高まり、再割り当てがなされた番号に接する人も増えた。その結果、不審な電話を受ける人の割合も必然的に増えたのではないかと考えられる。
 再割り当てによる問題を起こさないためには携帯電話番号が増えることがベストなのだが、電話番号にはどうしても限りがある。総務省はこれまでにも、枯渇が進む携帯電話番号の拡大に向けた対策を進めてきており、1999年には電話番号を10桁から11桁に拡大。2002年にはそれまでの「090」に加え「080」から始まる番号を追加し、2013年には元々PHS向けだった「070」から始まる番号を追加している。
 だがそれでも携帯電話番号の枯渇が見込まれたことから、総務省では固定電話と携帯電話を融合したFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス向けに割り当てられているものの、ほぼ使われていない「060」から始まる番号の割り当て検討がなされてきた。ただ2021年の「IoT時代の電気通信番号に関する研究会」の議論では、「020」から始まるデータ通信専用の番号割り当てによって逼迫をカバーできるとされ、060から始まる番号の割り当ては見送られてている。
●本質的な対策は困難、自衛するには
 それゆえ当面新しい番号の割り当てを見込むのは難しいのだが、仮に新しい番号が割り当てられたとしても、電話番号自体の数に限りがある以上、いずれ同様の問題が起きることは明白だ。根本的な解決策がない問題だけに、利用者にはある程度の自衛策も求められるだろう。
 基本的な策としては、知らない電話番号からの着信には不用意に出ず、留守番電話機能を活用することなどが挙げられるのだが、決定的な策が存在する訳ではない。それだけに本質的な対策となるのは、やはりメインで利用する携帯電話の番号は不用意に変えず、長く使い続けることだ。
 現在は番号ポータビリティで、番号を維持したまま他の携帯電話会社に移ることも容易となっている。携帯電話回線の契約や解約がカジュアルにできるようになった昨今ではあるが、少なくともメインで使う電話番号は、可能な限り最初に契約した番号を長く維持することこそが最大の自衛策となるだろう。
 一方で、災害や通信障害などに備えてeSIM用のサブ回線を新規契約したいという人も少なからずいると思う。そうした時の自衛策となるのは、データ通信専用のサービスを契約することだ。なぜならデータ通信専用サービスは仕様上音声通話が一切できないので、不審な電話がかかってくることもないからだ。
 最近では「020」から始まるデータ通信専用の番号が割り当てられるケースも増えているので、そうした意味でもデータ通信専用サービスの方が安心感は高い。もちろん音声通話ができないのは弱点でもあるのだが、「LINE」などでデータ通信を活用した通話機能を使うことにより、緊急通報以外であればある程度の代替は可能だろう。
 繰り返しになるが、電話番号の数が有限である以上、この問題に関する決定的な解決策は存在しない。利用する側も電話番号も貴重な資源と考えて、出来る限り長く使い続けることを肝に銘じておくべきだ。

ITmedia NEWS

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