航空機の技術とメカニズムの裏側 第178回 初号機を訪問!(2)座席に電源、機内の設備に関するいろいろ

7月2日(火)9時0分 マイナビニュース

今回は、乗客にとって最も接する機会が多い場所である、客室まわりの話を取り上げる。本連載では過去にA350-1000を紹介しているが、これは国際線仕様の内装になっていた。それに対して、今回取り上げる日本航空のA350-900は国内線仕様で、当然、いろいろ違いはある。

○SKY NEXTから変わったこと

日本航空のA350-900はファーストクラス、クラスJ、普通席の3クラス構成だ。

つまり、クラスJが増えて、ファーストクラスと普通席が減っている。実際問題として、クラスJが早く売り切れてしまって悔しい思いをすることが間々あるので、そのクラスJを増やしたことは理に適っているといえそうだ。

現在、日本航空の国内線仕様機はおおむね「SKY NEXT」仕様に統一され、機種ごとの差異は少なくなっている。全クラスが革張りシートで、ファーストクラスとクラスJはPC電源付き。それに対し、A350-900では、クラスJと普通席は背ズリだけファブリックに変わり、PC電源と個人用画面は全席に付いた。

面白いのは、その個人用画面の使い方。もちろん、安全ビデオを表示したり、映画を見られるようにしたりといった使い方があるが、それだけではない。機内公開時にはウェルカム画面を表示していて、そこに個別の席番を表示していたのが目新しい。たぶん、就航後もこれを使用するのだろう。

実際に飛行機に乗った時に観察していると、乗り慣れていない人が自分の席を見つけるのに苦労している場合がある。乗り慣れていれば、「左から順にアルファベット順で、列数に関係なく左の窓際はA席、右の窓際はK席」とわかっているが、そんなの知らない人は知らない。

もちろん、腰掛の肘掛けやオーバーヘッド・ストウェージにも席番の表示はあるが、そこにそれが存在することを知らなければどうにもならないし、後者はピクトグラム表示になっているから、読み取るにも要領がいる。しかし、A350-900では個人用画面に席番が出ているから、これなら間違えずに済む。

その個人用画面、もちろん上級クラスになるほどサイズが大きくなるのだが、これは単に設置スペースの問題や差別化といった理由だけで決まるわけではない。シートピッチが狭い普通席では、むやみに大きなサイズの画面にすると、かえって見づらくなってしまう。眼と画面の間の距離に見合った、適正なサイズというものがあるのだ。

その個人用画面のコンテンツの1つに、ライブ映像がある。離着陸時に首脚の辺りから前方のライブ映像(フロントビュー)を流す機体はほかにもあるが、A350-900では機体の背面を後上方から見下ろした映像(ウィングビュー)も流せるようになった。

そこで使用するカメラは、フロントビュー用は首脚後方の胴体下面に、ウィングビュー用は垂直尾翼前縁上部に付いている。ことに後者は、望遠レンズでアップにして、ようやく発見できたというぐらい小さなものだ。

○腰掛と電源

シートピッチは既存機と同様だというが、背ズリを薄型化したり、下の方をえぐれた形状にして膝まわりのスペースを増やしたりといった工夫はなされている。実際に普通席の腰掛に座ってみたところ、初期状態でも意外と背ズリの角度があるな、と感じた。そして、背中のラインがよくできていて、腰部をちゃんと支えてくれる。

すでにあちこちで書かれているだろうが、上下可動式、さらに左右の張り出しを調整できる枕が付いたのも特徴で、これなら居眠りがしやすい。東海道・山陽新幹線のN700Aにおいて、普通車で枕の両側に付いている張り出しを大きくして、居眠りしやすくしたのと似ている(?)。

そしてPC電源。ファーストクラスは肘掛け、クラスJと普通席の最前列は腰掛前面下部、その他の普通席は背ズリの背面に、ユニバーサル電源が付いている。これも距離の問題があるのだろう。シートピッチが広いファーストクラスやクラスJで背ズリに電源コンセントを設けると、距離が遠すぎる。

実は、腰掛前面下部に電源コンセントが付いていると、足下をのぞき込んだり、手探りでモゾモゾしたりしながら電源をつながなければならない(これは、JAL国際線のSKY WIDERで筆者が実際に経験していること)。隣席にスカートをはいた女性がいるような場面でこれをやるのは、いささか気まずいところがある。

しかし、PC電源が前席の背ズリに付いていれば楽だ。通路側の席に座っている場合、隣席の人が出入りする時は電源を抜かないといけないかもしれないけれど。

○電動アシスト

A350-900の大きな特徴として、オーバーヘッド・ストウェージがある。これが大型になり、機内持ち込みサイズのトランク×5個を立てて入れられるようになった。機内持ち込み荷物の重量上限は10kgだから、それが5個入ると50kgになり、なんと筆者の体重より重い。

そうでなくても、大きな荷物をぎっしり詰め込んだ状態のオーバーヘッド・ストウェージを閉めるのは力がいるのに、さらに大きく、重くなったら大変だ。それを閉めたり、閉まっているかどうかを確認して回ったりする客室乗務員の肉体的負担は無視できない。小柄な女性が少なくないのだから、なおさらだ。

そこでA350-900では、そのオーバーヘッド・ストウェージにひと工夫した。なんと「電動アシスト付き」なのである。といっても、スイッチで開閉を指示するわけではない。他機と同様に手で持ち上げて閉めようとすると、その動きを感知してアシスト機能が動作する。そのおかげで、軽い力で確実に閉められるというわけだ。

著者プロフィール

○井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

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