航空機の技術とメカニズムの裏側 第179回 JALのA350-900(3)翼に主脚、機体の隅々まで徹底レポート

7月9日(火)9時0分 マイナビニュース

前回、前々回と2回にわたり、日本航空が9月から国内線に投入するA350-900の話を取り上げてきた。今回はその続きとして、機内の話ではなくて機体そのものの話を中心に紹介したい。

○気になる翼幅

最近の民航機はおしなべて、翼幅が広くなる傾向にある。アスペクト比を大きめにとり、抵抗低減によって経済性を高めようと工夫している、のだといえる。すると気になるのは、空港側の受け入れ設備。

ターミナルビルに機体をつけてPBB(Passenger Boarding Bridge)を介して乗り降りする場合、PBBの設置間隔はターミナルビルを建てた時点で決まってしまう。ある程度の将来余裕は考慮に入れているだろうが、それでも場合によっては「PBBの間隔が足りないので、翼幅が広い機体は入れられません」なんてことにならないとも限らない。

だから、ボーイングは777Xで翼端折り畳み機構を取り入れることにしたが、A350XWBはそこまでのことはしていない。数字を調べてみると、A350-900/1000のいずれも、翼幅は64.75m。ちなみに、777-200/300の翼幅は60.9m、777-200ER/300ERの翼幅はレイクド・ウィングチップが付く分だけ増えて64.8m。

だから、レイクド・ウィングチップ付きの777をつけられるスポットなら、A350XWBもつけられる。とはいえ、空港によっては使えるスポットが制限される可能性もある。その限られたスポットで、複数のA350-900が同時に居合わせると、ひょっとすると並びも期待できる……のだろうか?
○主脚とエンジン

翼幅は同じだが、A350-900とA350-1000では胴体長が違い、後者のほうが長くて重い。だから、A350-900とA350-1000の目に見える識別点として、主脚がある。重量が大きいA350-1000の主脚は3軸の6輪ボギーだが、それより重量が軽いA350-900は2軸の4輪ボギーで済んでいる。

ちなみに、ボーイング777は全モデルとも3軸の6輪ボギーで、これが777と他のボーイング機を識別するわかりやすいポイントになっている。その代わり、主脚は777のサブタイプを識別する役には立たない。一方、A350XWBは主脚がサブタイプを識別する手段になっている。ちょっと面白い。

せこい話かもしれないが、777-200をA350-900に置き換えると、消耗品であるタイヤの数は減るわけだ。

そのタイヤはブリヂストン製で、主脚は「1400×530R23」、首脚は「1050×395R16」との標記。主脚の脚柱にあった表記によると、圧力13.6バール(197ポンド/平方インチ)で窒素ガスを充填している由。クルマのタイヤで窒素ガスを充填することがあるが、飛行機でもやっているのであった。

その主脚と隣接する形で、パワープラントとなるロールス・ロイス製トレントXWBエンジンが陣取っている。A350-900よりもA350-1000の方が大きくて重いのだから、当然ながら同じエンジンというわけにはいかない。トレントXWBには離昇推力84,000lb(38,136kg)級のトレントXWB-84と、離昇推力97,000lb(44,038kg)級のトレントXWB-97があり、もちろんA350-1000は後者を使う。

日本航空のA350-900で、そのトレントXWBを間近に見てみたところ、最前列にあるファン・ブレードの付根に、1枚ずつ左回りでインクリメントする、1〜22までの通し番号を書いてあった。そこで「えっ」と思い、昨年2月に同じ羽田空港でお披露目されたA350-1000の写真を確認したところ、通し番号は書かれていなかった。

そのトレントXWBの、どちらのモデルにも共通するポイントとしては、ファン・ブレードの前方、ナセルの内側がある。平らな板ではなく、吸音構造になっているようだ。エンジン・ナセルは、軽量化、熱対策、艤装、騒音低減など、さまざまな要求に応えなければならないはずで、それだからこそ専門のメーカーがあるぐらい。ただの覆いではないのである。

経済性に関わる部分というと、空力とエンジンが双璧だが、それだけではない。同時にエネルギー消費の低減も求められる。その関係か、最近は着陸灯などの灯火類をLEDにする機体が増えてきた。

A350XWBも、その例に漏れない。同じエアバス機だと、A320neoも同様だから、羽田空港に行けば実地に比較する機会はあるだろう。あと、LEDには「球切れが起こらない」というメリットもある。

○用語が違う

以前に書いたように、(旧・日本エアシステムを除くと)日本航空にとってエアバス製の機体は初物だ。実は、航空機に限ったことではないが、同じ意味でもメーカーによって用語が違うことがある。

例えば、乗降用の扉を開けた時に非常脱出用スライドを展開するか、しないかを指示するための「ドアモード切替スイッチ」があるが、その用語が違う。

具体的にいうと、Automatic/Manual だったり、Armed/Disarmed だったりする。これがメーカーによって違うならまだしも、同じボーイング機でも機種によって違うことがあるそうだ。そんな調子だから、A350-900はどうなるんだろう、と気になって客室乗務員の方に尋ねてみたところ、「違うかもしれませんね〜」とのこと。就航してから離着陸時の業務放送を聞けば、一発でわかるだろう。

その辺の事情はエンジンも同じ。これは海上自衛隊で聞いた話だが、同じ部位・同じ意味なのに、ロールス・ロイス製のエンジンとゼネラル・エレクトリック製のエンジンで用語が違うことがある。そして、(旧・日本エアシステムを除くと)日本航空にとってロールス・ロイス製のエンジンは初物だから、ここでもひょっとすると、用語の違いが発生するかもしれない。主として整備担当者に影響しそうな部分だ。

旅客機の話ではないが、戦闘機用エンジンにつきものの「アフターバーナー」(再燃焼装置)もそれ。実は細かいことをいうと、「アフターバーナー」はゼネラル・エレクトリックの用語で、プラット&ホイットニーなら「オグメンタ」、ロールス・ロイスなら「リヒート」というのが正しい。

著者プロフィール

○井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

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