「Surface Go」日本版は本当に高いのか Office付属は妥当なのか

7月14日(土)9時31分 ITmedia PC USER

Windows 10搭載の10型2in1である「Surface Go」

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 「低価格Surface」のウワサは本当だった。米Microsoftが7月9日(現地時間)に、399ドルからの「Surface Go」を正式発表したのだ。筆者はもう少し後の発表になると予想していたが、夏の間に入手できるのだからうれしい誤算といえる。一方のスペックに関しては、Pentium GoldプロセッサやUSB Type-Cポートを搭載するなど、事前のリーク情報通りだった部分も多い。
 日本での発表も早かった。日本マイクロソフトは7月11日(日本時間)に都内で製品発表会を開催。米Microsoft本社からコーポレートバイスプレジデントのマット・バーロー氏が来日し、デモンストレーションを交えてSurface Goの日本モデルをお披露目した。米メディアには事前のプレビューこそ行われたものの、製品発表会の開催は日本が唯一とのことで、それだけ重点市場として注目されているわけだ。
 しかし、この発表後にSNSなどでネットの反応を見ると、特に日本市場向けの製品構成や価格設定について批判が少なくないようだ。
 価格(税別、以下同)については、米国では399ドルからと手ごろなことがセールスポイントの1つだったが、日本で8月28日発売の一般向けモデルは米国モデルにはない「Office Home & Business 2016」を付属して6万4800円と、為替レートや内外価格差を考えても高く感じるユーザーは少なくないだろう。また、日本ではOffice抜きの構成が選べず、既にOffice 365や関連ライセンスを持つユーザー向けの選択肢がない。
 なぜ、日本は米国と違った販売スタイルなのか、また本当に日本モデルは価格が高いのか。筆者の見解を混ぜつつ検証していきたい。
●Surface Go日本モデルと米国モデルの違い
 まずは日米で販売されるモデル(いわゆるSKU)の違いを見ていく。以下は、日本向けモデルと、米国向けモデル(米Microsoftのオンラインストア取り扱いモデル)の主な仕様だ(別掲)。
 ハードウェアの基本スペックは日米とも共通で、Pentium Gold 4415Y(2コア4スレッド、1.60GHz)、4GBもしくは8GBのメモリ、64GB eMMCもしくは128GB SSDのストレージ、1800×1200ピクセル表示の10型ディスプレイ(217ppi)を搭載する。異なるのは、OS、Microsoft Office、そして価格だ。
・Windows OSの違い
 日本モデルのOSは、一般向けが「Windows 10 Home(S mode)」、法人向けおよび教育機関向けが「Windows 10 Pro」となる。Windows 10 HomeのS modeとは、Windowsストア経由でのみアプリの導入が可能な代わりに、セキュリティやレスポンスの面で有利な動作モードだ。このS modeは無料で解除可能で、既存のデスクトップアプリも使えるWindows 10 Homeとして利用できる。
 米国モデルのOSは「Windows 10 in S mode」のみだが、これも実質的にWindows 10 HomeをS modeに設定して出荷するものであり、一方通行ながら通常のWindows 10に変更できるという点は、日本の一般向けモデルと同じだ。ただし、米国の公式オンラインストアにWindows 10 Proの構成は用意していない。
・Microsoft Officeの違い
 同様にOfficeもみていこう。実は日本の一般向けモデルに付属する製品は「Office Home & Business Premium」ではなく、「Office Home & Business 2016」という点に注目したい。
 前者のOffice Home & Business Premiumは、日本のサードパーティー製PCに付属するOfficeとしておなじみの製品で、利用条件として「対象Office製品の永続使用権(1台のみ)+Office 365の1年サブスクリプション」という構成になっている。ただし、同製品が付属するPCのみに与えられる権利であり、PCの買い換えなどで、Officeのライセンスを他のPCに持ち越すことができない。
 対して後者のOffice Home & Business 2016では「対象Office製品の永続使用権(2台)」という条件になっている。Office 365のサブスクリプションは付与されないものの、「付属のPCのみ」という縛りはなく、2台分のライセンスを自由に移動することが可能だ。
 ライセンスの価格だが、Office PremiumはOEM PC向けのバンドル版ということもあり、Office付与の追加料金が1万5000円〜2万5000円程度(バンドル対象となるOffice製品による)に抑えられている。対して、Office Home & Business 2016の公式価格は3万4800円とそれを上回る。
 一方、米国モデルは「Office 365 Home」の30日間トライアル版が付属するだけで、Office製品の永続使用権はなく、新規ユーザーをOffice 365の契約へと誘導する役割を担っている。
・価格の違い
 このように日米で完全に同じ仕様のモデルが存在しないため、価格は単純比較できない。最も仕様が近いのは日本の法人向けモデルと米国の一般向けモデルだが、前者はOSがWindows 10 Proであり、このライセンスだけでも米国で199.99ドル、日本で2万5800円と、OSライセンス分が価格に上乗せされている。ちなみに、Windows 10 HomeからProへのアップグレード価格は1万2800円だ。
 1ドルを112.5円で計算すると、米国モデルの最小構成価格である399ドルは日本円で約4万4888円ということになる。この場合、日本の法人向けモデルとの価格差は8000円程度だ。為替差損のリスクを含めて1ドルを120円で計算した場合、差分は5000円程度となり、「1万円以内の追加料金でWindows 10 Proのライセンスが付いてくる」といえる。
 実際にはプリインストール版のWindows 10 Proが2万円以上のライセンス価格で販売されているわけではないが、エンドユーザーにとっては、追加のライセンスを購入するより「実はお得」ということになる。
 また米国モデルでOfficeを使い続けようとしたらOffice 365の有料契約が別途必要になるが、日本モデルはOffice Home & Business 2016が付属するので追加のコストがかからない。このOffice分の価格(3万4800円)を考えれば、やはり「割安」といえる。
 なお、米国には「教育・軍事関係者向けモデル」があるが、これは日本モデルの「教育機関向け」とは違い、割引対象に該当する関係者が少しだけ安価に製品を購入するためのプログラムだ。両者は若干性格が異なり、実際はボリュームディスカウントなどで一括導入時などでは価格も変わってくるだろう。
●日本市場ではOffice付属のPCが売れるという現状
 もっとも、こうした説明をしても「実は安かったんだ」という感想より、むしろ「納得がいかない」という感想の方が多いのではないだろうか。
 言うまでもなく、「Officeなし」のモデルも用意すれば、ライセンス分の差額で最小構成価格がもっと下がることが期待できるわけで、「日本の一般ユーザー向けにはOffice付きモデルしか用意していません。Office付きと考えると6万4800円はお得です」というのは、前提が異なるからだ。
 だが日本マイクロソフトによれば、今のところSurface Goの販売店からの引き合いは非常に好調であり、「一般向け」「法人向け」「教育機関向け」のどれも伸びが期待できるという。
 もともと日本市場ではPC本体とOfficeのセット販売が人気であり、むしろ一般的には「Officeを付属しないPCが売れない」という状況にある。Surface Goの国内発表後、SNSを中心に米国モデルより高い価格や、Officeなしの構成が選べないことに批判の声がみられたが、その声に隠れた多くの潜在顧客はOfficeの付属を歓迎しているようだ。
 もし本当に割高であると多くのユーザーが判断を下したならば、Office付属の一般向けモデルは売れないだろう。そして、早いタイミングでの値下げや、Officeなしモデルの需要に応えると考えられる。
 Surface Goは正式発表前から「iPad」対抗の低価格Windowsタブレットとして注目されていたが、Appleのハードウェア製品とは異なり、WindowsはOEM各社にライセンスされているので製品選択の幅は広く、Surface Go以外の選択肢もある。気に入ったユーザーが製品を購入すればいいだけの話だ。
 日本がMicrosoftにとって非常に「おいしい市場」になっているのは確かだが、事実それで製品が売れているわけで、人気商品をあえて値下げしてまで売る理由もないというビジネス的な判断も理解はできる。
●Surface Go日本モデルに対する2つの疑問
 筆者としては、今回の件で2つほど疑問を呈したい。
 1つは、やはり、Officeのライセンスは不要というユーザーにまでライセンスを強制購入させる製品ラインアップへの疑問だ。Surface Go本来の魅力とは関係ない部分でマイナス評価を与えてしまっているのは非常に残念に思う。
 既にOffice 365のライセンスを抱えているユーザーも少なからずいるわけで、「(Officeライセンスが付属しない)法人モデルを買えばいい」というのは理由にならない。日本の特殊事情として、5台のPCにOffice製品を導入可能な「Office 365 Home」が販売されておらず、代わりに最大2台のPCにビジネス用途を含むOfficeライセンスを付与可能な「Office 365 Solo」という製品が用意されているように、一般家庭向けのOffice 365の充実度が弱いという問題がある。
 これは「店頭購入したPCをそのままオフィス業務に利用する」という文化を引きずっている面もあると思われるが、PCにOfficeを付属して販売する戦略がかえってこうしたトレンドを助長しているのではないかと考える。
 2つ目はMicrosoft自身の戦略との乖離(かいり)だ。2017年5月のレポートでも触れたように、Microsoftはポリシーを変更して「Office Perpetual」(パッケージやバンドル販売で提供される、特定PCへの永続ライセンス付与型のOffice)の利用範囲を制限する方向を目指している。
 例えば、2020年10月13日以降はOffice 365関連サービスを利用するためにOffice 365のサブスクリプション契約が必須となり、Office Perpetualからのアクセスを禁止する方策を打ち出しているのだ。
 この2020年10月13日というのはOffice 2016のメインストリームサポートが終了するタイミングであり、これを境にOffice 2016を含む旧Office製品群からOutlookやOneDrive for Business、Skype for Business(Lync)といったクラウド型サービスが利用できなくなる。
 いくらOffice Perpetualの人気が日本で高いとはいえ、そのライセンスを大量にばらまく戦略は本国の思惑とどんどん乖離しているようにも思える。同時に、これは日本では諸外国ほど中小企業でのOffice 365導入が進んでいないことの証左にもみられ、このアンバランスさに対する見解をあらためて確認したいところだ。地域によって戦略が異なるというのは当然ある話だが、今回は違うと考えている。
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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