大河原克行のNewsInsight 第308回 パナソニック「ナノイー」が病原カビへの滅菌効果を実証、夏のリスク備え
2024年7月22日(月)14時39分 マイナビニュース
パナソニック くらしアプライアンス社は、同社独自技術のナノイー(帯電微粒子水)が、過敏性肺炎の原因となる病原カビに対する殺菌効果を実証したと発表した。
過敏性肺炎は、カビが空気中に放出する胞子を吸い込むことで発症するアレルギー性の肺炎で、罹患者の4割が専業主婦とも指摘されている。症状は、夏風邪やウイルス感染症に似ており、日本では湿度の高い8月に患者数がピークを迎え、6月から9月には年間の85.7%が発症。カビが繁殖する時期と重なっている。
「夏風邪と勘違いされやすいことから、実際には、潜在的な患者が多く存在すると推測されている。ナノイーのカビに対する効果によって、住宅内のリスク低減に貢献できないかといったことを検討した結果、今回の抑制検証を実施することにした」(パナソニック くらしアプライアンス社 くらしプロダクトイノベーション本部コアテクノロジー開発センター所長の佐々木正人氏)という。
過敏性肺炎の患者の40%から、「咳や息苦しさで夜眠れない」という声があがっているほか、「長年、喘息と診断されていた」というように、約7割が誤診を経験。診断にかかる期間や、治療期間はいずれも半年以上となっている患者が過半数を占めている。また、40〜50代の女性の発症が多く、自宅で発症するケースが多いという。「入院して回復したと思い、自宅に戻ったらまた発症するという例が90%に達するという報告もある」という。
今回の検証を監修した大阪公立大学 名誉教授の向本雅郁氏によると、「カビは水まわりだけでなく、リビングの空気中にも生息している。そのため、キッチンや風呂などのぬめりや汚れといった環境への影響だけでなく、アレルギーや食中毒などの健康被害にもつながっている。私たちは、空気中のカビを無意識に吸入しており、特定のカビを吸入することの繰り返しによって、過敏性肺炎の発症リスクにつながっている」と指摘する。
過敏性肺炎は、アレルギー反応によって発症するものだ。異物を除去するために体内では抗体が作られるが、抗体には許容量が存在し、カビの吸入によって抗体が増加すると許容量を超過し、その後の吸入によって発症するというメカニズムになっている。
過敏性肺炎の主な症状は、発熱、咳、息切れ、胸痛などであり、室内では症状があるが、屋外や会社、学校では無症状だったり、風邪薬では治らなかったりといった特徴がある。
過敏性肺炎に関する統計は日本では発表されていないが、米国では過敏性肺炎の死者数は年々増加しており、約20年間で5倍に増えているという調査結果がある。また、2022年には新型コロナウイルスでは125万人が亡くなったが、真菌感染症での死亡はそれを上回る170万人に達しているという調査結果もある。
過敏性肺炎の原因とされるカビは9種類あるが、そのうち約7割を占めるトリコスポロン、クロカビ、カンジダの3種類のカビで検証を行った。なお、日本では、トリコスポロンが原因の多くを占めているという。
検証ではまず、一般家庭のリビングの空気を採取して、カビが生えるかを確認。調査対象の62.5%の家庭で過敏性肺炎の病原カビを検出。「8軒の一般家庭のきれいなリビングから、たくさんのカビが検出でき、そのうち、62.5%が過敏性肺炎の原因となるカビだった」(パナソニック くらしアプライアンス社の佐々木所長)という。
さらに、45Lのチャンバーのなかに、1秒間に48兆個のOHラジカルを発生するナノイーX(48兆)の発生装置を設置し、10cm離れた場所に菌液を滴下したガーゼをシャーレに置き、ナノイーを照射。カビにナノイーを照射しない場合と、生菌数を比較したほか、ナノイー照射後のカビの断面を、走査電子顕微鏡で観察し、形状変化を確認した。
生菌率では、ナノイーを照射した場合、トリコスポロンでは30分間で99.8%を殺菌、クロカビは2時間で99.7%を殺菌、カンジダは30分で99.9%を殺菌。また、ナノイーを照射した病原カビは、細胞壁の破壊や凹みがあり、空洞化を確認できたという。
向本名誉教授は、「過敏性肺炎への対応策として、屋内で繁殖するカビの抑制は非常に重要である。パナソニックのナノイー技術の効果のひとつにカビの殺菌効果があり、これを利用することで、過敏性肺炎の原因カビを殺菌し、カビの増殖が抑制できれば、過敏性肺炎の対応策の手段のひとつとして、大きな期待が持てると考えられる」という。
ナノイーは、OHラジカルを持つ、ナノサイズの清潔イオンであり、有害物質を化学的に変性させ、抑制することができるのが特徴だ。直径5nmから20nmの微粒子であるため、繊維の奥にも浸透したり、弱酸性であるため、髪の毛や肌にも優しいという特性もある。
ナノイー発生装置は、対向電極と霧化電極、さらに、霧化電極を冷却するためのペルチェ素子で構成しており、空気中の水分からナノイーを自動生成。水に包まれていることで長寿命化し、空気清浄機などを使って噴出させることで、部屋の隅々までナノイーを届けることができる。
これまでに世界11カ国45機関と研究を行い、50種類以上の菌やウイルスを含む100種類以上の有害物質に対して抑制効果があることが実証されている。カビについては、クロカビをはじめとして家の8大カビのすべてに対して、99%以上の殺菌効果が実証されている。
パナソニック くらしアプライアンス社の佐々木所長は、「ナノイーがカビに接触すると、カビの細胞壁に損傷が起こり、損傷した細胞壁から内容物が流出し、カビが不活化することで、殺菌するというメカニズムが解明されている」とし、「住空間だけでなく、空気の質への関心が高まっている鉄道などの移動空間、病院やホテルなどの公共交換や業務空間などにもお役立ちの領域を広げ、グローバル展開も目指す。ナノイー技術によって、安心で、快適な空気と生活環境をすべての人に提供したい」としている。
過敏性肺炎は、カビが空気中に放出する胞子を吸い込むことで発症するアレルギー性の肺炎で、罹患者の4割が専業主婦とも指摘されている。症状は、夏風邪やウイルス感染症に似ており、日本では湿度の高い8月に患者数がピークを迎え、6月から9月には年間の85.7%が発症。カビが繁殖する時期と重なっている。
「夏風邪と勘違いされやすいことから、実際には、潜在的な患者が多く存在すると推測されている。ナノイーのカビに対する効果によって、住宅内のリスク低減に貢献できないかといったことを検討した結果、今回の抑制検証を実施することにした」(パナソニック くらしアプライアンス社 くらしプロダクトイノベーション本部コアテクノロジー開発センター所長の佐々木正人氏)という。
過敏性肺炎の患者の40%から、「咳や息苦しさで夜眠れない」という声があがっているほか、「長年、喘息と診断されていた」というように、約7割が誤診を経験。診断にかかる期間や、治療期間はいずれも半年以上となっている患者が過半数を占めている。また、40〜50代の女性の発症が多く、自宅で発症するケースが多いという。「入院して回復したと思い、自宅に戻ったらまた発症するという例が90%に達するという報告もある」という。
今回の検証を監修した大阪公立大学 名誉教授の向本雅郁氏によると、「カビは水まわりだけでなく、リビングの空気中にも生息している。そのため、キッチンや風呂などのぬめりや汚れといった環境への影響だけでなく、アレルギーや食中毒などの健康被害にもつながっている。私たちは、空気中のカビを無意識に吸入しており、特定のカビを吸入することの繰り返しによって、過敏性肺炎の発症リスクにつながっている」と指摘する。
過敏性肺炎は、アレルギー反応によって発症するものだ。異物を除去するために体内では抗体が作られるが、抗体には許容量が存在し、カビの吸入によって抗体が増加すると許容量を超過し、その後の吸入によって発症するというメカニズムになっている。
過敏性肺炎の主な症状は、発熱、咳、息切れ、胸痛などであり、室内では症状があるが、屋外や会社、学校では無症状だったり、風邪薬では治らなかったりといった特徴がある。
過敏性肺炎に関する統計は日本では発表されていないが、米国では過敏性肺炎の死者数は年々増加しており、約20年間で5倍に増えているという調査結果がある。また、2022年には新型コロナウイルスでは125万人が亡くなったが、真菌感染症での死亡はそれを上回る170万人に達しているという調査結果もある。
過敏性肺炎の原因とされるカビは9種類あるが、そのうち約7割を占めるトリコスポロン、クロカビ、カンジダの3種類のカビで検証を行った。なお、日本では、トリコスポロンが原因の多くを占めているという。
検証ではまず、一般家庭のリビングの空気を採取して、カビが生えるかを確認。調査対象の62.5%の家庭で過敏性肺炎の病原カビを検出。「8軒の一般家庭のきれいなリビングから、たくさんのカビが検出でき、そのうち、62.5%が過敏性肺炎の原因となるカビだった」(パナソニック くらしアプライアンス社の佐々木所長)という。
さらに、45Lのチャンバーのなかに、1秒間に48兆個のOHラジカルを発生するナノイーX(48兆)の発生装置を設置し、10cm離れた場所に菌液を滴下したガーゼをシャーレに置き、ナノイーを照射。カビにナノイーを照射しない場合と、生菌数を比較したほか、ナノイー照射後のカビの断面を、走査電子顕微鏡で観察し、形状変化を確認した。
生菌率では、ナノイーを照射した場合、トリコスポロンでは30分間で99.8%を殺菌、クロカビは2時間で99.7%を殺菌、カンジダは30分で99.9%を殺菌。また、ナノイーを照射した病原カビは、細胞壁の破壊や凹みがあり、空洞化を確認できたという。
向本名誉教授は、「過敏性肺炎への対応策として、屋内で繁殖するカビの抑制は非常に重要である。パナソニックのナノイー技術の効果のひとつにカビの殺菌効果があり、これを利用することで、過敏性肺炎の原因カビを殺菌し、カビの増殖が抑制できれば、過敏性肺炎の対応策の手段のひとつとして、大きな期待が持てると考えられる」という。
ナノイーは、OHラジカルを持つ、ナノサイズの清潔イオンであり、有害物質を化学的に変性させ、抑制することができるのが特徴だ。直径5nmから20nmの微粒子であるため、繊維の奥にも浸透したり、弱酸性であるため、髪の毛や肌にも優しいという特性もある。
ナノイー発生装置は、対向電極と霧化電極、さらに、霧化電極を冷却するためのペルチェ素子で構成しており、空気中の水分からナノイーを自動生成。水に包まれていることで長寿命化し、空気清浄機などを使って噴出させることで、部屋の隅々までナノイーを届けることができる。
これまでに世界11カ国45機関と研究を行い、50種類以上の菌やウイルスを含む100種類以上の有害物質に対して抑制効果があることが実証されている。カビについては、クロカビをはじめとして家の8大カビのすべてに対して、99%以上の殺菌効果が実証されている。
パナソニック くらしアプライアンス社の佐々木所長は、「ナノイーがカビに接触すると、カビの細胞壁に損傷が起こり、損傷した細胞壁から内容物が流出し、カビが不活化することで、殺菌するというメカニズムが解明されている」とし、「住空間だけでなく、空気の質への関心が高まっている鉄道などの移動空間、病院やホテルなどの公共交換や業務空間などにもお役立ちの領域を広げ、グローバル展開も目指す。ナノイー技術によって、安心で、快適な空気と生活環境をすべての人に提供したい」としている。