シリコンバレー101 第805回 この秋に登場する話題のアップル新商品「コズミッククリスプ」

7月25日(木)11時1分 マイナビニュース

「iPhoneの新モデルように話題になっている」と形容されているリンゴがある。秋に登場するアップルの新商品というと、ほとんどの人が「iPhone」を思い浮かべると思うが、今年はアップルでもリンゴの方で注目の新商品が店頭に登場する。ワシントン州立大学で開発された「Cosmic Crisp (コズミッククリスプ)」だ。

酸味と甘みのバランスがよく、ジューシーでありながら昨今のリンゴで好まれるシャキシャキとした食感に富むそうだ。出荷シーズンになると飛ぶように売れる高級リンゴ「Honey Crisp (ハニークリスプ)」に続くヒット品種になると期待されている。

では、なぜ「iPhoneの新モデルように〜」と語られているのかというと、一般の消費者がほとんど味わったことがない現段階で、すでに大きな注目を集めているからだ。噂通りのおいしさなら、この話題性を考えると大ヒットになること間違いなし。そんな状況を作り出せているビジネスモデルも注目されているのだ。

リンゴの品種開発から市場に流通させるまでのサイクルは長い。農家にとって成功するかどうか分からない新品種に切り替えるリスクは高く、それなら利益は薄くなっても安定して出荷できる品種にとどまる。ハニークリスプも今でこそ消費者需要が追い風になっている人気品種だが、一度は苗木が処分され、栽培の難しさから生産者に敬遠される状態が長く続いた。

生産者に栽培してもらい、そして新しい品種として消費者に興味を持ってもらえなかったら、どんなにおいしいリンゴでも認知されないまま消えていってしまう。コズミッククリスプの育成元であるワシントン州立大学は、2011年に「WA-2」という品種の商品化で失敗した。できばえには自信があったが、WA-2という品種名のまま提供した結果、品種の特徴が目立たず、一部が「Crimson Delight」という商品名で販売されても、それがWA-2とは認められないちぐはぐな状態で、WA-2に対する評価を得られなかった。

その失敗からマーケティング戦略の重要性を学んだワシントン州立大学は、「WA38」(コズミッククリスプ)では、世界共通のブランド名と宣伝戦略で「Pink Lady (ピンクレディー)」を成功させたProprietary Variety Management (PVM)と契約した。

WA38の商品名をコズミッククリスプに統一、5年間で1,050万ドルをかけて、新品種の認知向上と消費者宣伝を展開している。これは単一のリンゴ商品で最大のキャンペーンであり、米国の食料品店に並ぶ単一商品としても過去最大のリリースになる可能性があるそうだ。キャンペーンテーマは「Imagine the Possibilities」。コズミックという名前に合わせてSTEAM (科学/技術/エンジニアリング/アート/数学)をイメージさせるポスターや動画が作られ、「Fuel for possibilities!」というようなキャッチコピーと共に、既存のメディアやソーシャルメディアを通じて宣伝し、インフルエンサーにも働きかけている。

宣伝費用はライセンス使用料と果実販売の基金から拠出される。そのため、生産者がコズミッククリスプに切り替える負担は他の品種より重くなる。しかし、今の消費者に訴求するおいしさに加えて、大規模な宣伝キャンペーンを通じて、すでにコズミッククリスプはブランドを確立しており、栽培したら大きな利益を期待できる。ワシントン州で2018年に680万本のコスミッククリスプが植えられ、2019年にも500万本以上増えた。この秋の消費者の反応が成否の分け目になるが、消費者の間での話題性、ハニークリスプの欠点を克服する新しい品種に対する関心の高さから、成長株に投資するように生産者が新品種栽培のリスクを取るプラス循環を、これまでのところ生み出せている。

この秋の出荷数は20万箱程度と少ない。争奪戦になりそうだし、価格も高くなるだろうが、私はリンゴのシーズンになったら扱っている店を探し出して味を試し、色んな料理に使ってみるつもりだ。そこまでして入手したくなるという点では、たしかにひと頃のiPhoneを思い出させる話題性だ。来年には出荷数が今年の10倍、再来年にはさらに3倍以上に増えると予想されている。

マイナビニュース

「アップル」をもっと詳しく

「アップル」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ