「プリンセスコネクト!」で想像するVRデバイスと脳波認証の未来

8月16日(金)7時5分 ITmedia NEWS

この記事は認証セキュリティ情報サイト「せぐなべ」に掲載された「架空世界 認証セキュリティセミナー 第21回『近未来のウェアラブル端末と認証【プリンセスコネクト!】」(2018年5月10日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。当時未発売だった製品やサービスの記述などは、本記事掲載時の状況に合わせて編集しています。
 今回の題材は人気のソーシャルゲーム「プリンセスコネクト!」と、その続編「プリンセスコネクト!Re:Dive」。プレイしていない人もいると思うため、今回は詳しく解説していくので安心してほしい。それでは早速紹介していこう。
●「困ったときはお互い様々、だよ」
 では基本データから紹介しよう。
 プリンセスコネクト!はサイバーエージェントAmeba事業本部と、数々の人気ゲームをリリースしているCygamesの共同企画・開発によるタイトルで、2015年2月にAmebaにてサービスがスタート。
 しかし、2016年1月にはサービス終了が発表されてしまった。近年のソーシャルゲームとしては短い類いだろう。ただ、当初同年6月にサービス終了を予定していたところ、7月まで延期になり、当時のソーシャルゲームとしては珍しくストーリーが完結した。
 その後、同年8月に行われたCygamesの新作発表会で続編プリンセスコネクト!Re:Diveが発表された。
 プレイヤーたちは発表から2年ほど待たされることになるが、2018年2月にRe:Diveが配信開始。本記事掲載時の8月時点ではiOS版、Android版ともに、アプリストアでの売り上げ上位に入るほどの人気だった。
 あらすじを紹介しよう。今回主に取り上げるのは無印の方なので、そちらのあらすじから。
 西暦2030年代、VRを用いたネットワークデバイス「mimi」が世界一般に普及した世界。そのmimiを利用したゲーム「レジェンド オブ アストルム」では、「クリアすると現実でなんでも願いが一つ叶う」という奇妙なうわさがあり、数多くの少女がプレイする人気ゲームとなっていた。
 そんな中、主人公の少年は公園で出会った謎の女性によりmimiを強制的に装着させられたうえ、レジェンド オブ アストルムにログインさせられてしまう。
 ゲーム内世界に出現した主人公は、少女たちの潜在能力を目覚めさせる「プリンセスナイト」という力を持つことを知る。
 主人公は現実やアストルムで出会った多くの少女たちと力を合わせて、ゲームクリアを目指すのだが……。以上が無印版のメインストーリーだ。
●近未来のウェアラブル端末「mimi」
 さて、認証の話だ。
 VRを用いたネットワークデバイスとして登場しているmimiが、レジェンド オブ アストルムへの入り口になっているのは、あらすじからもお分かりいただけただろう。
 VRといっても、現在あるようなゴーグル型のものではなく、耳にかけるタイプのものである。これはどのようにVR体験を提供しているのだろうか。
 筆者はズバリ、脳波に直接干渉して「白昼夢」を見せるような形でVR体験をさせていると想像している。そのため、認証も「脳波認証」であろう。
 無意識のうちに現れる脳波で個人認証をするのは、何も夢物語ではない。現実でも脳波での個人認証について、各所で研究が行われている。
 脳波は指紋などと違って偽造が難しく、継続的に情報が得られる利点がある。鳥取大学では旅客機の乗っ取り防止などで実用化を目指しているという。
 現在では脳波を測定するためのヘッドセットの小型化や、測定精度や信号を保護する堅牢(けんろう)性の向上が進められている。mimiのように小型になれば、一般にも普及するだろう。
●脳波による「継続認証」とは?
 脳波による認証は「継続認証」に適している。この継続認証とはなんだろうか。
 指紋などの従来の「生体認証」や、パスワードによる「知識認証」は、本人を認証するその時点においてのみ特定する認証である。対して継続認証は、利用者が意識することなく、継続的に認証し続けることをいう。
 なぜ脳波認証が継続認証に適しているのか。鳥取大学が実用化を目指す旅客機のパイロットの例を考えてみよう。
 現在は操縦席への扉をロックすることで、他者が操縦することを防いでいるだけだが、今後はテロ対策として、もっと厳重に認証する必要があると考えられている。
 起動時のみの認証では、飛行中に操縦席を乗っ取られてパイロットがすり替わった場合、そのまま飛行は続けられることになる。
 飛行中に継続して本人認証を続ける場合、パスワードのような知識認証や、指紋認証のような生体認証では、意識して認証作業をする必要があるため、操縦に支障をきたす可能性がある。
 操縦機器にカギを付けたままにするような所有物認証では、犯人も付けたままにしておくだけなので、解決にはならない。
 しかし、脳波認証であれば、操縦している最中、特に認証作業をせずともずっと認証し続けることが可能になる。これが実現すると、パイロットがすり替わった際に、遠隔地でもすぐに把握できるようになるのだ。
●脳波認証は「生体認証+知識認証」で究極の二要素認証?
 筆者としては、脳波認証は継続認証に適しているというだけでなく、通常の認証においても生体認証と知識認証による二要素認証を一気に実現する、都合の良い認証だと思っている。
 脳波認証の研究の中には、目の前の画像を見て何を連想したか、脳波の変化を解析して認証するものも存在する。
 たとえ何らかの方法で脳波を偽造できたとしても(それも非常に難しいだろうが)、画像で何を連想するかを知り得るのはなかなか難しい。通常の状態における個人の特徴のある脳波で生体認証を行い、知っているものを見たときの脳波の変化で知識認証を行う二要素認証が成立するのではないだろうか。
 当然、脳波を発している必要があるため死んでいる人では認証できない。将来的には究極の認証として注目される可能性があるのではないだろうか。
 ただし、クリアしなくてはならない課題がある。この課題もRe:Diveを知れば見えてくる。mimiのようなデバイスが普及した場合、脳波による個人認証が継続して行われるようになる。
 すると、以前紹介した「BEATLESS」の世界のように、あらゆるものがクラウドに接続し、常に自分が認識され「常に認証し続けている世界」の実現にも近づくのだ。
 こうした世界と今の現実世界と比較すると、どちらの方の居心地が良いだろうか。前者の利便性も捨てがたいところだが……。それではRe:Diveの話に移ろう。
●「これはゲームじゃなくて現実だから」
 さて、Re:Diveからプレイしている多くのプレイヤーの諸君にはここまでの話は正直ちんぷんかんぷんだったのではないだろうか。
 レジェンド オブ アストルム? mimi? そんな話は聞いたこともないし、このゲームは正統派ファンタジーRPGではなかったのかと。
 Re:Diveのあらすじを紹介する。アストライア大陸の某所で目覚めた主人公。どうやら記憶を全て失っているようだ。そこに現れたガイド役、エルフ族の「コッコロ」と名乗る少女は、主人公のことを「あるじ様」と呼んで、かいがいしく世話をしてくれる。
 続けて現れた謎の少女が、コッコロの用意してくれた食事を一気に食べ尽くし、自分たちを勝手に恩人認定してくる。さらに、謎の大食い少女を追いかけてきたと見られる魔物の集団に追われて、コッコロと自分、大食い少女「ペコリーヌ」は戦いに巻き込まれることになる……。
 Re:Diveの主人公は前作と同一人物であることが度々言及されているものの、記憶を失っているどころか、一般常識もほとんどが失われている。
 例えば貨幣を口にしたり、文字が読めなかったり、多くの人に「赤ちゃんみたい」と言われてしまったりする始末である。それだけではない。Re:Diveの登場人物はほとんどが前作からの続投で同一人物なのだが、どうやら現実世界のことがすっかり記憶から失われてしまっているようなのだ。
 例えば主人公と同じギルドで、現実でも同じクラスに通っていたはずの草野優衣は、アバターの「ユイ」としてこのアストライア大陸で生活しており、主人公のこともすっかり忘れ去っている。
 ストーリーを進めていくと、とある重要人物が「これはゲームじゃなくて現実だから」とうそぶく場面が登場する。前作のプレイヤーからするとVRゲームの中の出来事だと思っていたのが、まさか現実?
 ここからは筆者の推測だが、どうやら前作のラストバトル後、何らかの原因でmimiが暴走し、プレイヤー全員から現実の記憶を失わせ、ログアウトできないようにされているのではないだろうか?
 脳波に干渉可能なmimiだからこそ可能な、とても恐ろしい現象である。この現象を引き起こしているのは誰なのか。何の目的があるのか。それはこれからゲーム中で語られていくことになるだろう。
 Re:Diveはアニメ化も決定している。今回の講義を聞いて興味の出た諸君は、ぜひプレイしてみてほしい。
●次回はあの名作SF映画
 いかがだっただろうか。
 脳波を利用する脳波認証は有望そうな気はするものの、脳波に干渉するVRゲームや、「常に認証し続けている世界」はちょっと怖いような気もする。実際に2030年のわれわれはどんな環境で、どんなゲームで遊んでいるのだろうか。想像を巡らすのも面白いだろう。
 さて、次回はあの古典名作SF映画「ターミネーター2」を題材にしたいと考えている。どのあたりに認証のタネがあるのか、楽しみにしていてほしい。
 それでは今回の講義はここまで!

ITmedia NEWS

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