第3世代Ryzenだけではない! AMD X570チップセットというアップグレードパスの魅力

8月16日(金)17時38分 ITmedia PC USER

X570搭載マザーボードのASRock 「X570 Taichi」

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 AMD X570チップセットは、第3世代Ryzen、NAVI世代のRadeon RX 5700シリーズをサポートするためのチップセットだ。
●AMDから登場した新チップセット
 AMDは第3世代Ryzenで引き続きSocket AM4を採用している。そのため従来のCPU/APUを最新のAMD X570チップセット搭載マザーボードで動作させたり、逆に第3世代Ryzenを従来のチップセットで動作させたりすることが一部可能だ。一部というのは、第3世代Ryzenを動作させるためにはマザーボードのファームウェアを最新版にアップデートする必要があること、その上でも以下の表の通りいくつかの組み合わせではサポートされていないものがあるためだ。
 上の表を見れば分かるように、第1世代の古いCPUやAPUはAMD X570ではサポート外となり、第3世代RyzenではAMD 300シリーズがやや怪しい。第3世代RyzenとAMD A320の組み合わせはしっかり×がつけられている。
 AMD A320がサポート外であるのは、概ね理解できるだろう。AMD A320は低コスト向けで、ハイエンド中心にリリースされた第3世代Ryzenとは方向性が違う。また、表中の△はAMDによると「特定のβ版BIOS更新が必要」という表記となるもの。例えばAMD X470/B450チップセットでは、マザーボードメーカー各社からファームウェアが提供される。一方、AMD X370/B350チップセットの場合、マザーボードメーカー各社がファームウェアを用意してくれるかどうかは不透明なわけだ。言われているのはBIOS容量と、もう1つ懸念されるのはVRM回りなどハードウェア設計だ。
 このように、例えば第1世代Ryzenを当時のチップセットでそのまま利用している場合は、アップグレードに際し、CPU/APUとマザーボードの両方が必要になることもある。サポートの長いSocket AM4と言えど、常に技術も設計も進化している。一方でCPUは常に進化しているので、新しい設計を必要とすることもある。こう見れば、Ryzenは2世代以内に買い換えていくのがよさそうだ。
●AMD X570マザーボードの特徴を把握する
 AMDの評価キットには、2枚のマザーボードが付属していたので、これらを見比べて特徴を把握していこう。
 1枚目は、ASRock「X570 Taichi」だ。ASRockのTaichiは、自作ユーザーにはすっかりおなじみとなったが、メインストリームでありながら高品質な部品を採用し、1つ上を狙うポジションのグレードで、特にデザイン性をアピールする製品でもある。
 X570 Taichiは、3本のPCI Express x16スロットに金属製カバーを被せて補強するとともに、チップセットから拡張スロット部分までを広範囲に覆うヒートシンクが特徴だ。このヒートシンクは一体型となっており、3つのネジで固定されている。ヒートシンクの下にM.2スロットがあるため、多くの人が一度これを取り外して作業することになるだろう。専用のドライバーも付属する。
 ヒートシンクのシルバー部分には、チップセット用のファンが搭載されている。Taichiの歯車の意匠部分にあたる場所にあり、そこから想像できるようにファンの口径はかなり小さめだ。回転時は多少音が気になった。
 CPUソケット周辺に目を向けると、最大12コア(16コアのRyzen 9 3950Xも9月に控えている)、TDPが最大105WとなるRyzenをサポートするために、かなりのフェーズ数を備えていることが分かる。そしてそれに被る形でソリッド・ヒートシンクが搭載されている。ATX/EPS12V端子は8+4ピンだ。古い電源、出力の小さい電源ではATX/EPS12Vが1基のみのものもあるが、第3世代Ryzen、AMD X570マザーボードで組むならば、最新かつ出力にも余裕をみた電源を合わせるのがよいだろう。
 Serial ATA端子は、8ポートを搭載している。ASRock製マザーボードは比較的Serial ATA端子が充実していることでも知られているが、AMD X570世代でもTaichiのように一般的な6ポートを超える製品を用意した。オーディオ回路については、Purity Soundを引き続き採用しており、ボード左下部分にまとめている。
●GIGABYTE「X570 AORUS MASTER(rev.1.0)」
 2枚目のX570チップセット搭載マザーボードは、GIGABYTEの「X570 AORUS MASTER(rev.1.0)」だ。こちらもメインストリーム向けではあるが、先のX570 Taichiより少し上の価格帯の製品だ。
 X570 AORUS MASTERでは、X570 Taichiのような一体型ヒートシンクは採用されず、チップセット用ヒートシンクとM.2ヒートシンクが分離したデザインだ。チップセットにファンを搭載するようになったAMD X570世代では、ヒートシンクを一体型にすることでM.2 SSDの発熱もチップセットファンによって冷却する効果を狙うものも多い。
 一方で、M.2 SSDに目を向けるとメーカー独自のヒートシンクを搭載するものも多く、そうした製品ではヒートシンクをはがさなければ一体型ヒートシンクに装着できない。つまり、SSDの標準ヒートシンクを利用する人にとっては、このデザインの方が向いている。
 X570 AORUS MASTERも、チップセットには冷却ファンを搭載している。こちらもカバーが付いて内部を見づらいが、ファンの口径はX570 Taichiよりも若干大きいかもしれない。ファンの動作音についてもわずかに小さいように感じた。また、PCI Express x16スロットの金属カバーに加え、X570 AORUS MASTERではメモリスロットにも金属カバーが装着されている。
 CPUソケット周りでは、特徴的なデザインが見られる。同社のSocket TR4マザーボードなどでも採用されているが、Fins-Arrayヒートシンクだ。薄手のフィンで構成するヒートシンクで、いわゆるグラフィックスカードで採用されているものに近い。ただし、デザイン面ではソリッドタイプのヒートシンクほど自由度がないため、カバーを設けてそこに意匠を凝らしている。ATX/EPS12V端子は8+8ピンだ。
 Serial ATA端子は6ポートある。オーディオ機能はESS SABREを核としたものを採用している。インタフェースで特徴的なのは、1Gbps LANに加えて2.5Gbps LANを加えているところや、ボード上にスイッチやインジケーター類を設けるなどオーバークロックを視野に入れた機能だろう。
●PCI Express Gen4 x4 SSDの実力は?
 AMD X570チップセットマザーボードで、最も注目されるのはPCI Express Gen4への対応ではないだろうか。PCI Express Gen4 x16グラフィックスカードに関しては、既にRadoen RX 5700のレビューで少しだけ触れているが、確かに帯域は拡大するものの現在のゲームなどのアプリケーションで、これがどこまで有効なのかという点ではまだ生かしきれない印象だった。一方、現在でもメリットがあるのはストレージ、特にPCIe Gen4 x4接続のM.2 SSDだ。
 PCIe Gen4 x4接続のSSDは各社から登場しているが、現状ではまだコントローラーチップがPhison製PS5016-E16チップのみだ。そのため、多少の違いはあるものの、共通するスペックが多い。今回は評価キットに付属したGIGABYTEの「AORUS NVMe Gen4 SSD」を試してみよう。
 AORUS NVMe Gen4 SSDは、銅製ヒートシンクで表と裏をカバーする構造で、COMPUTEX TAIPEI 2019で展示された際も注目を集めた製品だ。評価サンプルではヒートシンクが組み立て式となっていたが、製品版は組み立て済みとなる。銅製ということもあり、手に持つとM.2 SSDとは思えないほど重量感がある。
 今回は、CPUソケット直下のM.2スロットに装着して計測した。CrystalDiskInfo上からは、しっかりとPCI Express 4.0 x4接続として認識されていた。
 今回は2TBモデルを用いているため、転送速度はAORUS NVMe Gen4 SSDの最高速度と思われる。CrystalDiskMark 6.0.2での転送速度はシーケンシャルリードで毎秒5GB超、同リードも毎秒4.2GB超と、PCI Express 3.0 x4の理論帯域を突破する、これぞPCI Express 4.0 x4接続だという速度が得られている。4KiB Q8T8もリードが毎秒1.7GB、ライトが毎秒1.9GBと速く、4KiB Q32T1もリード/ライトともに毎秒600MB超、4KiB Q1T1もリードが毎秒60MB、ライトが毎秒238MBと一般的な用途では文句の付けようのないほど速い。
 見た目が大げさなヒートシンクによって、テスト前から懸念していたのが発熱だ。PCI Express 3.0 x4接続のSSDの頃からすでに発熱は問題となっており、冷却に不備がある場合、その熱によってパフォーマンスが制限されるサーマルスロットリングが生じることも知られている。そこも調査してみた。
 グラフは、CrystalDiskMarkのシーケンシャルリード/ライト時の温度推移だ。検証自体はバラック状態かつ簡易水冷クーラーで行っているが、1つはSSD直上にファンを装着したレイアウトを想定してCPUソケット上にケースファンを置いたもので、もう1つは通常のケースと同様、フロントファンを想定したエアフローで計測したデータである。
 一般的には、ケースファン側のデータに近くなるのではないだろうか。CrystalDiskMarkを実行するとSSDの温度はぐんぐんと上昇する。ただし、AORUS NVMe Gen4 SSDは銅製ヒートシンクで表と裏を包んでいることもあり、50度に達する手前でテストを終えた。もう少し長時間テストを続ければさらに上昇する可能性があるが、まだSSDの危険域には達していない。エアフローに気をつける必要は十分にあるが、しっかりとしたヒートシンクを装着していれば大丈夫だろう。
 SSD直上にファンを置いた場合は、ケースファンのみの時とくらべて最大温度で4度低い値だった。テスト終了後の温度低下も速やかで、より安心感がある。こうしたレイアウトは、トップフロー型のCPUクーラーか、あるいはケースのサイドファン、マザーボード上にネジで固定するクリップファンなどが考えられる。
●DDR4-3200→DDR4-3600メモリでパフォーマンスは上がるのか?
 最後に、Ryzen 9 3900Xでメモリの速度は足りているのか、ここを試してみた。ご存知の通り、これまで8コアを超えるCPUはRyzen Threadripperの領域で、そのプラットフォームではクアッドチャネルのメモリがサポートされていた。DDR4-3200まで引き上げられたとはいえ、デュアルチャネルまでの環境でCPUが求めるメモリ転送速度を賄えるのだろうか試してみた。
 メモリクロックによる効果は、CINEBENCH R15/R20で確認した。結果に関して言えば、DDR4-3200時に対して4つのテスト全てでDDR4-3600時のスコアが勝っている。ただし、CINEBENCH R15ではその差はごくわずかで誤差の範囲とも言える。一方、メニーコアCPUのマルチスレッドへの最適化を一歩進めたCINEBENCH R20のマルチCPUは、グラフでもはっきり見て取れる差がついている。
 CPUに関するテストのみだが、まとめるとDDR4-3200を超えるOCメモリによるパフォーマンスメリットはある、主に向上するのは全スレッドを使い切るような用途でその他はそこまで明確な向上はない、といったところになる。
 3D映像のレンダリングや映像のソフトウェアエンコードといった用途であれば恩恵がありそうだ。もう少しコンシューマー寄りの用途ではゲームプレイ+配信(ソフトウェア処理)を1台で行うような使い方だろうか。
 このような様相なので、一般的な使い方であればDDR4-3200で間に合っているとも言える。マルチスレッドを使い切る用途や、予算に余裕のある場合はDDR4-3600など、より高クロックのメモリにチャレンジしてほしい。
●AMD X570が第3世代RyzenだけでなくPC全体の性能を引き上げる
 第3世代Ryzenの一番の注目はCPUパフォーマンスにあるが、PC全体で言えばプラットフォームの性能が全般的に高いことが望ましい。AMD X570チップセットではPCI Express Gen4 x4 SSDが利用可能になり、対応SSDを搭載すればプログラムの読み出し、データの書き込みなどがより快適なものとなる。
 また、X570 AORUS MASTERの2.5Gbps LANのように、利用できるPCI Expressの帯域が増えたことで、ネットワークなどの足回りに関わるその他のインタフェースも高速化され、より快適なPCに仕上げることが可能になった。
 もちろんさまざまな理由で移行のタイミングは決まるが、こうした新技術、新インタフェースが登場した際を移行のタイミングとするのはよい選択と言える。PCI Express Gen4にしても高速LANにしても従来の規格と互換性があるため、一度に全部そろえる必要はなく、予算のついたところからアップグレードしていくという方法もとれる。ただ、そのベースとしてAMD X570搭載マザーボードというアップグレードパスを確保しておくというのがよいのではないだろうか。

ITmedia PC USER

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