耳垢からがんを診断する新しい方法 ブラジルの大学での研究

8月16日(金)17時3分 財経新聞

 セルメノグラム(cerumenogram)と名付けられた、耳垢(cerumen=セルメン)成分を使った新しいがん診断法が開発された。

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 ブラジル・ゴイアス連邦大学のJoão Marcos Gonçalves Barbosa氏らは、がん患者と健常人から集めた耳垢のサンプルを、ヘッドスペース/ガスクロマトグラフィー質量分析器(HS/GC-MS)で分析した。その結果、耳垢に含まれていた158種類の揮発性有機代謝物のうち27種類が、がんのバイオマーカーとして極めて有効であることが明らかになった。

 国際がん研究機関(IARC)では、2018年の世界の新規がん発症者数が1,810万人、そのうちの半数以上に及ぶ960万人が、がんで死亡すると推定している。このような死亡率の高さは、がんの早期発見により大きく改善させることができる。

 しかし現行のがん診断法は、早期発見に適しているとは言えない。また、がんの確定診断には、疑わしい細胞を採取してそのチェックを行う、痛みを伴う浸潤的な方法に拠るものである。一方、非浸潤的な診断法であるCTやMRIでの診断精度は完璧とは言い難い。

 これに対して、新しい非浸潤的な診断法として、揮発性有機代謝産物(VOM)に注目が集まっている。VOMは、がんなどの炎症性の病気を引き起こすとされる活性酸素から作られ、患者の尿、糞便、汗、唾液、耳垢などに蓄積する。

 このため、VOM成分をがんのバイオマーカーとして利用し、がん患者と健常者をVOMの組成の違いから区別しようと言うのだ。すでに、耳垢を使った糖尿病患者の試験では、糖尿病の2タイプの分類に成功している。

 この研究の被験者は、がん腫、白血病、およびリンパ腫の、初期がんから進行がん患者までの52名。この中には、がん治療中の患者と治療を受けていない患者が含まれる。対象となる健常者は50名。

 HS/GC-MS での分析の結果、158種類のVOM成分が同定され、統計解析(部分最小二乗回帰:GA-PLS)の結果、がん診断に最適な27種類の成分が選びだされた。それらは、エステルとエーテル化合物、 アルデヒド、ピラン化合物、フラン、ラクトンとその誘導体、エポキシド/オキサビシクロ、炭化水素、カルボン酸、アルコールおよび誘導体、アミン、およびアミド誘導体、有機硫黄化合物などであった。

 この27種類の成分をがん患者と健常者との間で比較したところ、100%の確率でがん患者を健常者から区別することができた。ただし、がんの種類やがん治療の種類とVOMの組成との間には、明確な関連性は見いだされなかった。この解析に要した時間はわずか30分、費用は50米ドルであったという。

 この診断法は、非浸潤、かつ高速・高精度で、診断費用も安いという画期的なものだ。研究者らは、このような多くの利便性を持つセルメノグラムは、今後、血液検査と同じように、日常的ながん診断に利用できるとしている。そうなれば、がんの早期発見率が飛躍的に向上し、多くの命が救われることに期待がかかる。

 この論文は、Scientific Reports8月13日号に掲載されている。

財経新聞

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