AIが材料開発を加速する!? マテリアルズインフォマティクスの可能性と課題

8月23日(金)20時27分 財経新聞

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 これまで実験に膨大な時間がかかり、進歩が他分野と比べて速いと言えなかった材料化学の研究分野が、AIによって加速しつつある。直近ではMITの研究チームが、最も時間がかかると言われている有機合成の計画から実行までを、AIとロボットを使用して行った。Science誌に8月9日付でその成果が発表されている

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 特に実験の計画においてどのような材料を組み合わせてどのような合成物をつくるかは、これまで研究者の経験と勘が頼りだった。材料の組み合わせの数は膨大なものになることがほとんどであるため、そこが研究開発の律速になってきた。

 一般的に、技術のブレイクスルーとなるような革新的な材料を見つけるのには、10年単位の研究が必要であった。そこで、AIを用いてデータを活用しながら研究開発を進める、「マテリアルズインフォマティクス」が注目され始めている。

 マテリアルズインフォマティクスの実用化を目指して、2010年代初め頃から北米において産学官連携で活発な取り組みがされてきた。さらに、日本国内の企業においても徐々にその手法の導入検討がされ始めている。

 例えばパナソニックは、リチウムイオン二次電池の研究開発などにその手法を運用し始めている。これによって新規材料やデバイスの開発期間が半減することが期待されている。

 しかし、マテリアルズインフォマティクスが全面的に材料の研究開発を押し進めるようになるまでには、課題も多い。

 マテリアルズインフォマティクスは機械学習の技術がベースとなっているため、膨大なデータの蓄積が前提となる。しかし、これまで経験と勘に頼ってきた研究者たちは十分に実験データをデジタル形式で残していないことが多い。今でも紙のノートに実験の結果を書き残すことが主流であるため、それをデジタル化するだけでも多大な労力が必要になる。また、全く実験データのない材料の開発については、実際に合成ができるかも含めて最低限の実験は必要になってくる。

 さらに、材料の研究開発においては、物質の性質に寄与するパラメーターが非常に多いのが特徴である。そのため、いかにそのパラメーターを減らして予測の精度を向上させられるかも鍵となる。つまり、「いかにしてデータを使いこなせるか」という点が重要になってくる。

 マテリアルズインフォマティクスを実用化するために必要なのは、AI技術に対する理解だけではない。パソコンやスマートフォンと同様に、それを使いこなす研究者たち自身の素養も変わらずに必要であることは忘れてはいけない。

財経新聞

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