時速150万km以上で銀河系から遠ざかる褐色矮星 市民科学者が発見 NASA
2024年8月26日(月)9時54分 財経新聞
白色矮星が超新星爆発を起こしたとする仮説の想像図。左が超新星爆発を起こした白色矮星で、右側がCWISE J1249のイメージ。(画像: NASAの発表資料より (c) W.M. Keck Observatory/Adam Makarenko)
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NASAは、市民にこれまでの観測によって得られた星空の赤外線マッピング画像を公開し、それを市民に精査してもらい、新たな天体の発見につなげることを目指している。
PLANET9には、現在までに8万2,690人のボランティアが登録しているが、今回の発見はドイツのニュルンベルク出身の市民科学者であるカバトニク氏によるもので、時速150万kmを超える速度で移動する痕跡を示す画像を見出した。この天体はCWISE J1249と名付けられているが、その移動速度は銀河系の強力な重力を振り切り、銀河系外へ脱出できるほどだ。
しかも、CWISE J1249は褐色矮星にカテゴライズされ、一般的な恒星と比較すると小さく、非常に暗いため、発見することが非常に困難な存在だ。時間に追われるプロの科学者では見落としがちな存在だが、大勢の市民科学者による地道な活動が今回の大きな成果につながった。
褐色矮星は、巨大ガス惑星の代表格の木星よりも大きく、赤色矮星の代表格であるプロキシマケンタウリよりも暗く小さい、惑星と恒星の中間に位置する天体だ。可視光の観測では発見できず、周囲の宇宙空間より高温の点を赤外線観測で地道に探していくことが求められる。
PLANET9に登録しているボランティアで、これまでに約4000人が褐色矮星の発見にこぎつけているというから驚きだ。
今回発見により、CWISE J1249がなぜ、超高速で移動することができるのかという謎が新たに浮上した。白色矮星を有する連星系で、片方の星が超新星爆発を起こし、その爆風で加速されたという説や、この星が属していた球状星団がたまたまブラックホールに接近遭遇し、その強力な重力で加速されたという説などが現時点で有力視されている。
褐色矮星のデータは、ウィキペディアでは現在50個程度しか見当たらないが、NASAはこれをはるかに超えるデータを有するものとみられる。これらのカテゴリーは市民ボランティアが腕前を発揮できる領域で、今後も同様の取組みは増えていくことだろう。