軍事とIT 第312回 無人ヴィークルを巡る最近の話題(9)対機雷戦で進む無人化

8月31日(土)11時10分 マイナビニュース

第92回から第100回にかけて、水中戦(underwater warfare)の話題を取り上げた。この分野の対象物は潜水艦と機雷である。このうち、機雷の除去や無力化を担当する対機雷戦(MCM : Mine Countermeasures)の分野では、過去にも触れてきているように、無人ヴィークルの活用が進んでいる。

○UUVとAUV

海中を航行する無人ヴィークルを指す言葉としては、UUV(Unmanned Underwater Vehicle)とAUV(Autonomous Underwater Vehicle)がある。どちらも似ているといえば似ているのだが、厳密にいうと違いがある。AUVはその名の通り、自律的に航行するものを指している。それに対してUUVは、必ずしも自律的に行動するものばかりとは限らない。

例えば、機雷掃討に使用する処分具の多くは、母艦との間をケーブルでつないで、遠隔操縦を受ける形で動いている。これだと、無人ヴィークルだが自律的ではないから、AUVとはいえない。しかし、UUVの一種とはいえる。

対機雷戦で無人ヴィークルを使用する場合、「捜索担当」と「無力化担当」が分かれている場合がある。1つのヴィークルで何でもできるようにするよりも、「餅は餅屋」で分業体制にするほうが合理的、ということであろう。

上の写真の機雷処分具は、基本的には「無力化担当」で、機雷をつなぎ止めているケーブルを切断したり、機雷のところに処分爆雷を仕掛けたりする場面で使う。機雷の捜索は、掃海艇が備えるソナーの仕事。

幸い、機雷はいったん敷設したら動かないから、見つけられたことを知ってどこかに逃げ出す、ということはない。見つけたら、後から腰を据えて処分すればよい(作戦上、急いで無力化しないといけない場面はあるだろうけれど)。

捜索担当は、担当する海域を端から端までなめて回らなければならない。すると、自立航行が可能なAUVのほうが向いている。そこで、AUVに海底の物体を探知するためのソナーを搭載して、捜索すべき海域を指定した上で送り出す。そのAUVは自動的に、指定された海域を端から端まで、ちょうど床を雑巾掛けして回るように行ったり来たりしながら、ソナーで海底の模様を捜索して、得られたデータを保存する。

AUVが母艦のところに戻ってきたら、そのデータを吸い出して検討する。そして「ここに機雷らしきものがある」ということになったら、そこに処分具を送り込む仕儀。

古くからある処分具は、胴体の下面に処分爆雷という名の爆発物を積み込んでいて、それをターゲットとなる機雷のところに投下する。処分爆雷には時限信管を組み込んでおいて、処分具が十分に離れたところまで撤退したら起爆する。

しかしこの方法だと、爆発の巻き添えになったり、何かにケーブルをひっかけて身動きがとれなくなったり、などなどの事情により、高価で貴重な処分具を喪失するリスクは皆無ではない。

そんな事情によるのか、最近は1回こっきり・使い捨ての自爆型機雷処分具が登場している。有名なのはドイツのアトラス・エレクトロニクが開発したシーフォックスだが、日本にも同様の製品がある。

海上自衛隊の新型護衛艦(FFM)は対機雷戦も担当することになっているが、こうしたUUVやAUV、自爆式処分具を使うことになっている。また、フランスのECAグループは2019年3月に、こうした用途に使用するUUV、AUVなどの機材一式をコンテナに収容して、簡単に移動展開できるシステムを発表した。専用の艦艇がなくても済むという理由であろう。
○どこにITが絡むのか

ここまでだと「どこが軍事とITなんだ」といわれそうだが、実はさまざまなところでITが関わってくる。

まず、AUVを走り回らせる時の水中航法。ソナーが何かを探知しても、その場所が精確にわからなければ処分のしようがない。しかも海中を走るものだから、衛星からの電波を受信するGPS(Global Positioning System)は使えない。慣性航法装置(INS : Inertial Navigation System)みたいな、外部のデータが要らない方法でなければならない。

次に、ソナーのデータ処理。海底に転がっている岩やゴミと本物の機雷を正確に区別するには、ソナー映像の処理技術がモノをいう。この分野ではAIを活用する可能性があるかもしれない。

また、海底の精細なソナー映像を得るために、合成開口ソナー(SAS : Synthetic Aperture Sonar)を使用するシステムも出てきている。すると、これは音響データのコンピュータ処理が必須という代物である。

そして、こうした作戦の一切合切をコントロールする管制システム、情報処理システムも必要である。どこの海域で何をやり、そこで何が見つかったのか、見つけた機雷らしきもののうち処分したのはどれか、といったデータをきちんと管理しないといけない。

アメリカ海軍では、こうした任務を遂行するためのシステムとして、AN/DVS-1 COBRA(Coastal Battlefield Reconnaissance and Analysis)を開発、2017年10月に運用可能なステータスを達成した。COBRAは「海岸の戦場における偵察・分析」という意味の頭文字略語で、機雷やその他の障害物を探知・分析する機能を提供する。
○実は掃海の無人化もある

ここまで述べてきたのは、機雷を1つずつ見つけ出しては無力化する、掃討(minehunting)の話だった。では、昔ながらの掃海(minesweeping)は、もう廃れてしまったのか。

実はそういうわけでもないようで、アメリカ海軍ではテクストロン社が製作した掃海用USV(Unmanned Surface Vehicle)、UISS(Unmanned Influence Sweep System)をテストしている。USV単体の名称はCUSV(Common Unmanned Surface Vessel)といい、それを使って掃海を行うシステムがUISS。

参考 : CUSVの製品情報ページ(テクストロン社)

こちらは水上を走るものだから、航法にはGPSを使える。そして、本物のフネが発するものと似た音響、あるいは磁気シグネチャを出すデバイスを海中に降ろして曳航する。それで機雷がだまされて起爆してくれればOKというわけ。

掃海というと、係維機雷をつなぎ止めているケーブルをカッターでちょん切る手法もあるが、CUSVは小型だから、力任せにケーブルを切断できるほどの馬力はないと思われる。第一、当節では係維機雷は流行していない。

著者プロフィール

○井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

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