AIは社会をどう変えていくのか? - Intel Connection 2024に見た生成AIと企業の付き合い方

2024年9月3日(火)16時16分 マイナビニュース

インテルは「技術とビジネスをつなぎ社会を前進させる」をテーマとする「Intel Connection」を9月3日と4日に開催している。初日の基調講演では、「AI Everywhere, The New Chapter」と題して日本市場における「AI Everywhere」をテーマとする取り組みや、次世代半導体の研究開発状況、そして半導体技術が将来のスーパーコンピューター(スパコン)やHPC、AI、量子コンピュータにもたらす革新についての紹介が行われた。
AIの発展は社会に何をもたらすのか?
オープニングスピーチに登壇したインテル代表取締役社長の大野誠氏は、「AIが社会に与えるインパクトは大きく、かつその影響範囲も広い」と指摘。そうした意味では、Intel Connectionとして2回目の開催となる今回は、AIと深くかかわりのある2つのサブセッションとして「インテル パブリック・セクター・サミット東京 2024」ならびに「インテル エネルギー・フォーラム 2024」も同時開催。AIに欠かせない半導体という存在を、地政学的リスクを踏まえた産官学連携や公共事業、サービスなどに与える影響や、AIと切ってもきれない問題となっている電力問題の解決に向けた理解の促進なども図られる仕組みを整えたとする。
続いて、2024年4月にIntelのセールス&マーケティング・コミュニケーション統括本部 アジア・パシフィック日本地域本部長に就任したハンス・チュアン氏は、AIの現在の急速な普及を「インターネット登場以来の大きな変化」と表現。あらゆるビジネスが再構築され、あらゆる電子機器がAIデバイスとなり、すべての企業がAI企業へと変貌を遂げていくことが、2030年には半導体市場が1兆ドルに成長する社会的な背景であると指摘する一方、その実現に向けては、生成AIの需要の高まりに併せた多くの計算資源が必要となり、そのコストがボトルネックになること、ならびに実用化のためには、相応の使いこなすための能力を有する人物や電力を用意すること、セキュリティやプライバシーを守るデータのやり取り手法の構築など、さまざまな課題を解決していく必要があることも指摘する。
そうした課題解決に向けてIntelとしても、AI Everywhereを標榜し、AI PC、エンタープライズ&エッジ、データセンターAIの3つの分野すべてを横断的に、すべての開発者やユーザーが安全に運用できることを目指した自由な環境の提供を目指していることを強調。この取り組みの中核がオープンエコシステムであり、その推進には自社のみならず、多くのパートナーの協力が不可欠であるとした。
実際、2028年にはPC市場の80%がAI PCになると言われている中、すでに2024年初頭にAI PC向けプロセッサとなるIntel Core Ultraを市場に投入。エコシステムとともに革新と進化が続けられており、すでに500以上のAIモデルがAI PCで動作するようになっているほか、次世代のAI PCのパートナーとの共同開発も進められているとする。また、エッジ領域の活用も、すべてのデータをクラウドの先のAIデータセンターで処理するには、通信コストの問題やリアルタイム性、国をまたがる形でのデータの移動に関する規制の問題などから、重要度が増していくとの見方を示し、2026年までにエッジコンピューティングの50%がAIを主要なワークロードとして処理するようになるとの予測を示した。
さらに、データセンターについては、新製品となるXeon 6として、すでに発表済みのEコア品に加え、Pコア品がまもなく正式発表される予定であること、次世代AIアクセラレータ「Gaudi 3」と組み合わせることで、新たな価値を提供できる段階に到達していることを強調した。
日本初のGaudiユーザーは富士通
Gaudiシリーズについては、これまで海外ユーザーの事例がメインに公開されていたが、今回、ゲストとして富士通 執行役員EVP 富士通研究所 所長の岡本青史氏と、NTTデータグループ 技術革新統括本部 グローバル技術戦略推進部長の吉田英嗣氏が登壇。富士通が日本で初めてのGaudi 2を採用した顧客であることが示された。
岡本氏は、Gaudi 2について、「通信性能とスケーラビリティが高い点が魅力」と説明。実際、同社で比較してみたところ、NVIDIA H100と比べても実行効率(8基ベースによるLlama2 70B finetuning性能)は高いこと、ならびにコストパフォーマンスの試算では1.8倍高いという結果を得たことから、富士通として購入を決定したとしており、インテルと富士通が長年にわたって築いてきたパートナーシップを今後も拡大させていくことで、両社のみならず、顧客の発展、社会課題の解決などにつながっていくことを期待したいとしていた。
一方の吉田氏は、生成AIにはパラメータが大きいAIと小さいAIの2つがあることを指摘。それぞれには適材適所で活用していくことが重要になっていくとし、NTTデータとしても小さいAIを実現するLLMとして「tsuzumi」の開発を進めているとし、そうした小さいAIを動かすためのインフラ構築として目を付けたのがGaudi 2であり、インテルの協力の下、NVIDIA A100とのパフォーマンス評価を実施。推論処理(Llama2 7B TruthfulQAデータセットを利用)においてA100と比べて2.8倍超の性能を確認。「Gaudi 3ではさらなる性能向上が期待できる」とするほか、「今後は省電力性も確認する必要があるので、その調査も実施する予定」だとし、さまざまなハードウェアに強いインテルとともに、高性能かつサステナブルなソリューションの提供を目指していくとした。
企業はAIにどう向き合っていくべきなのか?
インテルは、「AI時代に向けて、政府や企業は日本を活性化するために生成AIとどう向き合い活用を促していくべきか」をテーマとして意見交換などを行うラウンドテーブル・ディスカッション「2024年 AIニッポン活性化戦略会議」に、大野氏のほか、同社代表取締役会長である鈴木国正氏も参加する形で議論を重ねてきた。今回は、同会議の参加者の1人であるマッキンゼー・アンド・カンパニー インコーポレーテッド・ジャパン シニアパートナーの野中賢治氏もゲストとして登壇。企業とAIの視点を中心に、AIが企業にどのようなインパクトを与えるかの紹介を行った。
野中氏が所属するマッキンゼーの分析では、それぞれの産業や企業が生成AIを活用することで生み出される経済的なインパクトは2035年時点で500兆円と試算。日本だけでも25兆円ほどで、「かなり大きな産業が1つ誕生する」ほどのインパクトであるとする。「生産性改善への活用だけで、すべての企業で営業利益率が1〜2%ほど改善できる規模」と説明するほか、事業構造改革や新サービス、生成AIではない普通のAIの活用も含めると、その効果はさらに大きくなっていくことが期待されるとする。
しかし、AIの活用に向けた取り組みは上場企業の8割ほどがPoCまではやっているが、大規模にスケールさせて商用展開でヒットまで至っているのは10%にも満たないことを指摘。「ドメインや領域を決めて進めて行かないとインパクトが出てこない」とし、企業がAIを導入する際には以下の6つの点に留意する必要があるとした。
事業インパクトに紐づくPoCに集中
技術要素の全体整合性の担保
コスト項目の正しい理解と管理
事業価値創出ができるチーム
完璧なデータではなく正しいデータ
汎用性を意識した再利用可能なコード
なお、野中氏は、今後もいろいろな議論が繰り広げられていくだろうとし、機会があればその内容の公開をしていきたいとの意向を示したほか、大野氏も最終的には経済同友会と協力して提言書としてまとめる予定であることを説明していた。

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