シリコンバレー101 第809回 「Apple Card」はAirPodsみたいなクレジットカード

9月5日(木)11時1分 マイナビニュース

米国で8月20日に正式サービスがスタートした「Apple Card」。AppleとGoldman Sachsのパートナーシップによるクレジットカードサービスだ。ただ、3月に発表されてからの人々の反応は決して良いと言えるものではなかった。年利 (APR)は高くはないが低くもなく、1〜3%のキャッシュバックだって特にお得というわけではない。同等かそれ以上のキャッシュバックを得られるカードはいくつもある。「簡単に作れて、iPhoneで使いやすい」のが特徴だが、「クレジットカード選びのポイントはそこじゃない」とか「Apple Cardを使う理由が見当たらない」という反応が目立った。実際、私もすでに使ってるカードに加える絶対的な理由が「ないなぁ」と思ったのだが、Appleが提供するクレジットカードという1点だけで申し込んだ。

招待限定のプレビューの段階から使い始めて3週間ちょっと。今は使ってみて初めて分かるApple Cardの良さを実感している。一言で説明するなら、Apple Cardは「AirPodsみたいなクレジットカード」である。
○申し込みから利用開始までわずか10分

申し込みは本当に簡単だ。Apple Cardを申し込めるようになると、iPhoneのWalletアプリにクレジットカード/デビットカードを追加する画面で「Apple Card」を選択できるようになる。選ぶと、Apple Cardの申し込みプロセスが始まる。名前、誕生日、住所、ソーシャルセキュリティ番号の下4桁、年収といった情報を入力、サービス規約に同意する。審査基準を満たしていたら、クレジットスコアに基づいて算出された限度額やAPRが提示されるので、それを承諾するとすぐに利用を開始できる。通常だと2週間程度かかる申し込みから利用開始までのプロセスが10分程度で完了する (チタン製のカードは申し込むと10日程度で送られてくる)。

とはいえ、いくら申し込みのプロセスが簡単で早くても最初の1回きりのことである。クレジットカードの良し悪しはカードの利用体験に依る。クレジットカードとしての基本的な仕組みは他のカードと変わらない。限度額まで買い物でき、その月の支払い日までに利用した全額を払わなかったら残高に利子がかかる。年会費、海外決済手数料、延滞手数料は一切なし。でも、そうしたカードだって他にもある。Apple Cardを特に際立たせるものではない。

Apple Cardの何が違うのかというと「iPhoneとApple Payで使うクレジットカード」として設計されていることだ。

Apple Payのカードに追加するようにして申し込むことから分かるように、Apple Cardは必ずiPhoneのWalletアプリで管理するカードになる。逆にチタン製のカードは必須というわけではなく、「必要な方はどうぞ」という感じで、利用者が別途希望しなかったら送られてもこない。Apple"Card"という名前だからチタン製のカードの方を思い浮かべてしまうが、実体はiPhoneで使うサービスだ。これがSteve Jobs氏の時代だったらチタン製のカードを提供せず、iPhoneで使うことに限定してユーザーのシフトを促したかもしれない。

では、iPhone/Apple PayにApple Cardの組み合わせの何が違うのかというと、非常にわかりやすく便利なのだ。いつ、どこでいくら使って、今月はどれぐらい使っているかを自然と把握できる。米国には現金を持ち歩かずにクレジットカードで支払う人がたくさんいる。だからこそ、クレジットカードをしっかりと管理しなければならないのだが、カードはサッと通して買い物しやすい一方で、プラスチックカードのみでアカウントの状況は管理できない。だから、必要以上に使ってしまったり、計画的に支払わずに多額の利子を負ったり、またはうっかり支払い期限を忘れてクレジットスコアを落としたりする。クレジットカードを管理するために金融機関のWebサイトやアプリを開くのは一手間で、その溝がクレジットカード管理の障害になっている。

Apple Cardだと、Apple Payを使う度にWalletアプリを開くので、その際にクレジットカードの状況をチェックすることになる。ほとんどクレジットカードを使わずWalletアプリを頻繁に開かないという人でも、Apple CardはiOSと深く結びついているから支払い期限が近づいてきたらiPhoneに通知が表示される。iPhoneユーザーでこれでも支払いをうっかりミスするなら、もうクレジットカードを使うのをあきらめるしかないというぐらい身近な存在になる。

Walletアプリ内のApple CardアプリのUIが秀逸でとても分かりやすい。例えば、月々の請求書が発行された後に支払い画面で支払い金額を決めると、その額に対する利息額が表示される。その際に、利息が負担にならない範囲で支払っていたら画面はグリーン、しかし支払い額が少な過ぎて負担になり得る場合は画面が赤くなる。利息で稼ぎたいクレジットカード会社の請求書では、最低支払い額を目立たせるだけで、利用者が利息負担を把握しにくいデザインになっていることが少なくない。Apple Cardなら堅実にクレジットカードを活用できていることを一目で把握できる。キャッシュバックも毎日Apple Cashに追加され、それもWalletアプリで簡単に管理できる。

○便利だからヒットしたAirPods、Apple Cardも…

クレジットカードを選ぶ理由は人それぞれだ。キャッシュバックを重視する人はCitiの「Cash Back」が良いと言うし、AmazonのPrimeメンバーならAmazonの「Prime Rewards Card」、ひんぱんに旅行する人はAmerican Expressを好む。Apple Cardはとにかく便利で分かりやすく、安心して使える。でも、それは従来のクレジットカード選びでそれほど重視されてこなかったことだ。だから、サービスが始まる前のApple Cardに対する人々の反応は良いと言えるものではなかった。

数あるクレジットカードを比較し、最もお得なクレジットカードを選んで使い分けているような人なら、クレジットカードの状況を常に把握することなんて"あたり前"のことだから、そうした人にApple Cardは適していない。でも、現金の代わりにクレジットカードを持ち歩く米国では、管理を面倒に思いながら使っている人がたくさんいる。そうした人にとって、Apple Cardは魅力的なソリューションになる。

なぜApple Cardが「AirPodsみたい」なのかというと、AirPodsもオーディオヘッドフォンとしての評価は高くはない。私も愛用しているが、音楽用のヘッドフォンとしてはAirPodsよりも音楽を輝かせられるヘッドフォンはたくさんあると思っている。でも、iPhoneと簡単にペアリングでき、iOSデバイスやMacで使いたい時にすぐに使える。便利さと直感的に使える体験がAirPodsの魅力である。サウンドはほめられるレベルではないけど便利、これまでのヘッドフォンの常識なら、そんなヘッドフォンが売れるはずがなかった。ところが、AirPodsは「シンプルに使えるワイヤレスヘッドフォン」を実現して世界的な大ヒットになっている。Apple CardもiPhoneでシンプルに使えるクレジットカードに過ぎないが、従来のクレジットカード選びのものさしでは測れない価値を備える。

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