基本の「iPhone 11」か、冒険の「11 Pro」か 現地取材で分かった違い

9月12日(木)7時0分 ITmedia PC USER

発表会場に展示してあった「iPhone 11」。写真のカラーはグリーン

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 米Appleは9月10日(現地時間)、新型スマートフォンの「iPhone 11」「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」を発表。同時に「Apple Watch Series 5」、第7世代の「iPad」も発表した。
 既にAppleのWebページなどで商品の詳細が紹介されているが、現地取材で明らかになった部分も含め、幾つか読み取りにくい部分を中心に基調講演から感じ取れたメッセージとハンズオンでのインプレッションをお届けしたい。
 新型iPhoneは、やはり「カメラ体験の向上」に尽きるだろう。画質ではなく体験と書いているのは、動画・静止画問わず、操作性や機能に関しても、ハードウェアとソフトウェアの技術を組み合わせ、すり合わせた上で実現しているためだ。
●“新しいベーシック(基本)”へと前進した「iPhone 11」
 Appleは2年前、完成度が高まっていたiPhoneシリーズの新しい進化への道を目指して「iPhone X」を発表した。そのiPhone Xのバリエーションモデルが昨年の「iPhone XS」シリーズと「iPhone XR」だったが、初期段階ではXRの市場での位置付けに苦心しているようにみえた。
 最終的には「最も売れているiPhone」になったXRだが、XSシリーズの下位モデルという印象は拭えなかった。
 しかし、iPhone 11は実質的にXRの後継製品ではあるものの、名称だけではなく商品ラインアップとして「現在のiPhoneにおける基本形」を現わした製品となっている。実際、名称だけではなく、iPhone 11は今世代のiPhoneが提供するデザイン、機能の基本部分を全てそろえているからだ。
 XRはシングルカメラだったが、iPhone 11はデュアルカメラになった。デュアルカメラの構成となって増えたのは、35mmフィルム換算で13mm相当の超広角カメラだ。画角は120度と、うっかりすると自分の足が映り込むほど広い。もともとの26mm相当の広角カメラに、さらに広角なカメラを追加した理由は、単に画角を広げるのではなく、画質や機能、あるいは使いやすさなどに活用するためだ。
 XRでは画像解析で背景と被写体を分離し、ポートレートモードを実現していたが、超広角カメラが追加されたことで、視差による分析でのポートレートモードが可能になった(これは後述のiPhone 11 Proでも同じで、従来は52mm相当の望遠時のみだったポートレートモードが広角でも利用できる)。
 またカメラのライブビューにも使うことが可能だ。広角撮影時には撮影領域外の映像も表示できるため、見切れている被写体情報を把握しながら構図を決められる。これが意外に便利なのだが、さらに「写真のフレームの外側を含めて撮影」というオプションを選択しておくと、超広角カメラで捕らえておいたフレーム外の画像情報も同時に記録する。
 iPhone内で傾き補正をしたり、あるいは見切れてしまったりした被写体を、後から画角内に収めるといった、従来なら不可能だった処理を超広角カメラが捕らえた画像を用いて実現してくれるのだ。
 カメラに関しては、他にも極めて多くの改良がなされており、より「リアリティー」を求めている。Appleはかねてよりコンシューマー製品開発のトップであるフィル・シラー氏が「本物のレンズ交換式カメラの世界を目指す」と公言している通り、本格的なリアリティーの高い絵を出すカメラを目指しているが、今回のカメラは一つの回答といえるような質だ。
 全パートとも20%の高速化を果たしながら、30〜40%の省電力化(Neural Engineのみ15%の省電力化)も同時に達成した新しいSoC(System on a Chip)の「A13 Bionic」は上位モデルと共通のものだ。さらには機械学習を応用した自然言語や画像の分析処理などで用いられる行列乗算に特化した演算器を内蔵することで、6倍のパフォーマンスを引き出している。
 XRに引き続き「触覚タッチ(Haptic Touch)」もiPhone 11には搭載されているが、iPhone 11 Proシリーズで「3D Touch」がなくなり、触覚タッチに統一されたことで、上位シリーズとの操作性における違いがなくなったことも大きい。
 このように、名実ともにiPhoneシリーズの「標準」となった印象だが、それは下位モデルとして昨年のiPhone XRが控えていることで、ホームボタンなしのモデルだけでラインアップを組めるようになってきたことも影響しているのだろう(今回は「iPhone 8」が唯一のホームボタン搭載モデルとしてラインアップに残った)。
 なお、バッテリー駆動時間のスペックは、SoCの省電力化が効いているのか、XRよりも1時間延びている。
●XSは「iPhone 11 Pro」へ 名実ともにプレミアムなモデル誕生
 一方、XSシリーズの後継に相当するiPhone 11 Proは、標準機ともいえるiPhone 11が魅力的なモデルに仕上がっていることもあるが、名前の通り特別なモデルに仕上がっている。iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxは、いずれもiPhoneとしては初めて「Pro」を名乗った製品だが、これはただ単に仕事で使えるという意味にとどまらない。
 注目すべきは3つに増えたカメラなのかもしれないが、これは52mm相当の望遠カメラを除けば、iPhone 11と大きく変わるわけではない。少なくとも広角カメラや超広角カメラで撮影しているだけであれば違いはない。望遠カメラを使う頻度が少ないならば、iPhone 11を選ぶという方が多いのではないだろうか。
 Apple自身、iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxはハイエンド製品であるとアナウンスしている。市場の中心を構成する商品としてiPhone 11が手堅い製品になったことで、Proで冒険しやすくなったこともあるのだろう。
 iPhone 11 Proシリーズは、よく言えば“こだわりにこだわった”、言い換えれば“必要以上に細部にまで力を入れた”製品になっている。
 それは昨年から引き続いて採用しているステンレス製フレームをはじめ、前面、背面ともに超強化ガラスを使うだけでなく、ベンド(曲げ加工)と切削加工を両方使った背面ガラスの処理にも現れている。
 iPhone 11もiPhone 11 Proも、背面ガラスはレンズベゼル部が一体で成型されていいるが、iPhone 11がベゼル部のみの磨りガラスなのに対して、iPhone 11 Proではベゼル部以外のほぼ全面が磨りガラス加工だ。ベゼル部との一体型であるため、その間の継ぎ目もない。
 また、最大800nitsのOLEDディスプレイは、多くのHDR(High Dynamic Range)対応テレビ(しかもかなり高性能なテレビに近い)と同等のダイナミックレンジを実現しているが、同社がXDR(Extreme Dynamic Range)と呼ぶコンテンツなどでは最大1200nitsまでブーストされるという(恐らく高輝度領域の面積などに制限があるはずだ)。
 多くのHDRコンテンツは1000nitsをめどに映像制作がされており、Display P3対応の広色域とも合わせ、4K・HDRのコンテンツをほぼ制作者の意図通りに表現できる実力だ。
 Appleはこの新しいディスプレイに「Super Retina XDR」という名称を付けており、XDRの動画、静止画を内蔵カメラで撮影できるとしている。Apple TVなどの配信サービスにおいても、再生アプリ側の対応で生かすことが可能だ。
 しかも発光効率の向上で最大輝度を上げているため、通常表示では15%も電力効率が向上しているという。
 A13 Bionicの省電力性能もあるのだろうが、バッテリー容量も増えているようで、結果的にiPhone 11 ProはXSよりも4時間、iPhone 11 Pro MaxはXS Maxよりも5時間、それぞれバッテリー駆動時間が延長された。
 防じん防滴設計や強化ガラスを曲げ加工した上で切削加工までするという凝った生産方法も含め、他に例のない細かな部分まで気遣いがされたプレミアム性の高いモデルだ。
 なお、iPhone 11シリーズには、追って「Deep Fusion」という撮影モードもソフトウェアアップデートで追加される。これは複数フレーム、複数カメラの画素を合成することでより高画質な写真を捕らえる機能で、画素ごとに保持している画像(最大9フレーム分)をNeural Engineで分析し、機械学習処理での最適化が行われる。
【訂正:2019年9月12日午後1時 初出でバッテリー駆動時間延長とDeep Fusionの説明に一部誤りがありました。おわびして訂正いたします】
●「中心となる製品」として魅力的になったiPhone 11
 これまで新型iPhoneといえば、いわゆる「無印」、基本となるモデルが話題の中心にあった。それが一昨年、iPhone Xと8が発表されてラインアップに変化が起き、昨年はXSシリーズでXを正常進化させたが、一方でXRというXのエッセンス(全てではない)を取り入れたモデルが追加された。XSが高級路線へと向かったこともあり、「中心となる製品」が見えにくかった。
 しかしiPhone 11は、発表会では語られなかった細かな部分を含め、ディスプレイと望遠カメラの有無を除き、上位モデルとほとんど変わらない製品とすることで「ラインアップの中心」となった。
 XRも価格改定の上で継続販売されるため、アフォーダブル(購入しやすい)製品が欲しいならXR、少しでも安価ならiPhone 8、標準的なiPhoneは11で、プレミアムクラスは11 Proシリーズと、明確なラインアップが出来上がった。
 iPhone 11は、iPhone 11 Proシリーズが搭載する望遠カメラを除けば、スローモーション機能が加わったインカメラ、複数フレームの合成で暗所での画質を大きく高めるナイトモード、増えたポートレートモードやセンサー、レンズ、プロセッサの向上で高められた画質など、主要機能や操作性で「ここはどうなのかな?」と疑問になる部分が少ない製品だ。
 周囲にあるiPhoneの方向を検知できる「U1」チップの搭載、「True Tone」や画面を横にしたときに立体的な音を実現するスピーカーなど、細かな部分でも上位モデルから“落としている”部分がない。
 ひたすらにハイエンドへと向かっていたiPhoneシリーズが、ここに来てバランスのよいラインアップに落ち着いたといえる。
●パフォーマンスと電力効率を両方向上させた「A13 Bionic」
 新たに搭載されたSoCのA13 Bionicについては、7nmプロセスで生産され、85億個のトランジスタを内蔵している。
 CPU、GPU、Neural Engineのいずれも20%高速化していることから、動作クロックの最大値が20%速くなったと推察される。4コアの高効率CPUコアと、2コアの高性能CPUコアという構成も従来と変わらない。GPUのアーキテクチャも大きな変更はないようだ。
 しかし、電力効率が高まったことで、高効率CPUコアとGPUは40%、高性能CPUコアは30%の消費電力を削減しており、これまで以上に省電力で高性能なSoCといえる(Apple自身は「A12 Bionic」の時点で世界で最も高性能と話しているが、さらに高速化したと訴求している)。
 これはプロセッサ内部を多数の領域に分割し、クロック速度や電圧を細かく調整するようにしたから、とのことだ。
 そして今回、性能面で最も大きく変化したのは、行列乗算専用に演算器を搭載し、機械学習処理が従来の6倍に相当する毎秒1兆回に増加したことだろう。この演算器は高性能CPUコアにアドオンされる。
 機械学習処理は、その内容に応じてCPU(内の行列演算器)、GPU、Neural Engineの3つに振り分けられるが、これはiOS 13で搭載されている機械学習フレームワークの「Core ML 3」で管理する。つまり、Core ML 3で開発さえしていれば、全てのアプリはその恩恵を受けられるということだ。
 現時点ではiOS 13そのものが、A13 Bionicを生かす最大のアプリという状況だが、過去数年で取り組んできたCore MLのデベロッパーへの啓蒙でどこまで現実のアプリに浸透するかは別途注目していきたい。
 同様の事例では、ゲーム用3Dライブラリの「Metal」対応を啓蒙していきながら、GPUの設計とすり合わせを行ってきた成果がある。PowerVR系から自社開発に切り替えた段階で、iPhone自身の商品企画やiOSのAPI(ライブラリ)設計と一体化してすり合わせることで、高効率で高性能な環境を作ってきた。
 同様の手法で機械学習処理についても、優れたアプリの開発を誘引する戦略を進めている。派手さはないが、iPhoneの長期戦略として、この部分は重要だ。
●そして、第7世代「iPad」と「Apple Watch Series 5」
 本稿は新型iPhoneについての記事だが、最後に第7世代iPadとApple Watch Series 5についても言及しておく。
 第7世代iPadは、第6世代iPadからディスプレイを大型化しただけでなく、「Smart Keyboard」が使えるようになったことが大きな違いだ。
 マグネットの配置や画面側の造形は「iPad Air」と全く同じであるため、カバーの互換性は完全にある。ただし、新しい10.2型のディスプレイはフルラミネーションではなく、視差が大きい他、厚みもあるため、ケースなどの互換性は第6世代iPad、iPad Airのいずれともない。
 基本的には第6世代iPadの正常進化版であり、iPad OSの登場に合わせて強化を図った上でキーボードを利用できるようにしたもの、と考えるべきだろう。
 一方、Apple Watch Series 5は、基本的にSeries 4の流れをくみながら、ケース素材にセラミック(今回は白のみ)とチタンを採用する「Edition」モデルが復活した。内蔵するSoCはS4からS5にアップグレードされたが、処理速度は同等だ。しかし電子コンパス機能が追加されている。
 また、OLEDを最低1Hzからのマルチスキャン対応のものに変更し、さらに低消費電力用に暗い表示の専用盤面デザインを用意することで低消費電力化。常に表示をオンにしたまま従来と同じ18時間の連続使用が可能になった点も大きく異なる(バッテリー駆動時間のスペックはSeries 4と同じ)。
 現時点でもディスプレイ搭載の高機能スマートウォッチでは、最長に近いバッテリー駆動時間を誇りながら、常時表示に対応したわけだ。なお、安価なモデルとしてSeries 3が残るものの、Series 4は置き換えられる。
 Apple Storeなどではバンドと本体の組み合わせを自由に選んで購入できるサービスも開始される。今、Appleの製品では一番伸び盛りの製品だが、Series 5はその流れをさらに加速させるだろう。
[本田雅一,ITmedia]

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