大阪公大、魚が鏡を利用して自分の体長を確認できる自己意識があると確認
2024年9月13日(金)18時43分 マイナビニュース
大阪公立大学(大阪公大)は9月12日、魚が鏡に映る自分の姿を見て、自分の体長をより正確に認識できることを実証したと発表した。
同成果は、大阪公大大学院 理学研究科の小林大雅大学院生、同・幸田正典特任教授、同・安房田智司教授、同・十川俊平特任研究員、スイス・ヌーシャテル大学のRedouan Bshary教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
ヒトは、ある程度の年齢になると、鏡に映った自分が他人ではなく、自分(の鏡像)だと認識することができるようになる。鏡に映る自分の姿を自分であると認識することは「鏡像自己認知」といい、この能力により、ヒトは鏡などを自分の容姿を確認するための道具として利用できるのである。
鏡像自己認知は、ヒトのような大きくて高機能な脳を持っているからできるのかというと、それ以外にも多くの種で知られている。チンパンジーなどの類人猿に加え、一般的に賢いことで知られる動物たち、ゾウ、イルカ、カラスの仲間たちや、最近では魚類のホンソメワケベラ(以下、ホンソメ)も鏡像自己認知ができることが発見され話題となった。しかし、動物の持つ自己意識は単に鏡像が自分であると認識するだけなのか、鏡像で自分の状態を確認するなど、意図して利用できるレベルなのかについては、これまで明らかになっていなかったという。そこで研究チームは今回、ホンソメを用いた実験を行うことにしたとする。
ホンソメは見知らぬ同種他個体が近づくと、自分の縄張りを守るため攻撃して追い払う。しかし、ケガを負うなどのリスクもあるため、負ける可能性の高い自分より大きな相手との闘いは避けることが知られている。今回の研究では、実験対象のホンソメの体長より10%大きいもの、同格のもの、10%小さいものという、3種類の同種他固体の画像が用いられ、ホンソメが鏡を見る前後に画像を見た時の反応が調べられた。実験水槽の中央には不透明な仕切りがあり、ホンソメが画像と鏡を同時に見ることはできず、ホンソメが鏡を見るためには、仕切りを迂回して画像の前と鏡の前を行き来する必要がある仕組みだ。
実験の結果、鏡を見たことがないホンソメに3種類の画像を見せると、どの大きさの画像に対しても同程度の時間、攻撃することが確認された。続いて、鏡を見せて鏡像自己認知ができたことが確認された後に、再び3種類の大きさの画像が見せられた。すると、自分より大きな個体と同じ大きさの個体の画像に対して攻撃した時間が、自分より小さな個体の画像に攻撃した時間と比べて減少したという。
この結果は、ホンソメが単に画像に慣れたわけではなく、鏡像により自分の体長を見極め、自分より大きいか同程度の大きさと判断した相手への攻撃を控えたことが示されているとする。また、鏡像自己認知ができた後、ホンソメは画像の相手がより大きな時ほど、より高い頻度で画像の前と鏡の前を行き来した。この行動により、ホンソメは必要に応じて自分より大きいと判断した相手と自分の鏡像を見比べ、お互いの体長を確認することで、闘争するかしないかを決断しようとした可能性が示唆されるとしている。
以上の結果から、ホンソメは鏡像から自分の体長を把握できることが解明された。また、必要に応じて意図して鏡を見に行くことで、自分の体長を再確認しようとした可能性(鏡の利用)も考えられるという。鏡像を自分と認識できるだけでなく、自分に関する情報を得るために意識して利用できるということは、ホンソメの自己意識が単に外見を照らし合わせる外見的自己意識だけでなく、自分自身であると理解した鏡像を基準に目的を持って利用できる内面的自己意識を持つことが示唆されるとした。
脊椎動物の祖先から最も初期に分かれた魚類が、鏡像で自分の情報を確認できることが示された今回の研究成果は、他の分類群の脊椎動物も魚類と同様に自己意識を持ち、鏡を自分の状態を確認するために利用できる可能性が示唆されるとする。鏡像自己認知ができる動物であっても、自然環境では鏡を見ることはほとんどない(光の条件次第だが、波打たない水面を見下ろした時ぐらい)。つまり、鏡と関係なくそれらの動物は自己意識を持ち、鏡を利用できることが考えられるという。今回の研究成果は、ヒトと動物の自己意識の共通点を明らかにし、自己意識がどのように進化してきたか解明するうえで重要な手掛かりになることが考えられるとしている。
同成果は、大阪公大大学院 理学研究科の小林大雅大学院生、同・幸田正典特任教授、同・安房田智司教授、同・十川俊平特任研究員、スイス・ヌーシャテル大学のRedouan Bshary教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
ヒトは、ある程度の年齢になると、鏡に映った自分が他人ではなく、自分(の鏡像)だと認識することができるようになる。鏡に映る自分の姿を自分であると認識することは「鏡像自己認知」といい、この能力により、ヒトは鏡などを自分の容姿を確認するための道具として利用できるのである。
鏡像自己認知は、ヒトのような大きくて高機能な脳を持っているからできるのかというと、それ以外にも多くの種で知られている。チンパンジーなどの類人猿に加え、一般的に賢いことで知られる動物たち、ゾウ、イルカ、カラスの仲間たちや、最近では魚類のホンソメワケベラ(以下、ホンソメ)も鏡像自己認知ができることが発見され話題となった。しかし、動物の持つ自己意識は単に鏡像が自分であると認識するだけなのか、鏡像で自分の状態を確認するなど、意図して利用できるレベルなのかについては、これまで明らかになっていなかったという。そこで研究チームは今回、ホンソメを用いた実験を行うことにしたとする。
ホンソメは見知らぬ同種他個体が近づくと、自分の縄張りを守るため攻撃して追い払う。しかし、ケガを負うなどのリスクもあるため、負ける可能性の高い自分より大きな相手との闘いは避けることが知られている。今回の研究では、実験対象のホンソメの体長より10%大きいもの、同格のもの、10%小さいものという、3種類の同種他固体の画像が用いられ、ホンソメが鏡を見る前後に画像を見た時の反応が調べられた。実験水槽の中央には不透明な仕切りがあり、ホンソメが画像と鏡を同時に見ることはできず、ホンソメが鏡を見るためには、仕切りを迂回して画像の前と鏡の前を行き来する必要がある仕組みだ。
実験の結果、鏡を見たことがないホンソメに3種類の画像を見せると、どの大きさの画像に対しても同程度の時間、攻撃することが確認された。続いて、鏡を見せて鏡像自己認知ができたことが確認された後に、再び3種類の大きさの画像が見せられた。すると、自分より大きな個体と同じ大きさの個体の画像に対して攻撃した時間が、自分より小さな個体の画像に攻撃した時間と比べて減少したという。
この結果は、ホンソメが単に画像に慣れたわけではなく、鏡像により自分の体長を見極め、自分より大きいか同程度の大きさと判断した相手への攻撃を控えたことが示されているとする。また、鏡像自己認知ができた後、ホンソメは画像の相手がより大きな時ほど、より高い頻度で画像の前と鏡の前を行き来した。この行動により、ホンソメは必要に応じて自分より大きいと判断した相手と自分の鏡像を見比べ、お互いの体長を確認することで、闘争するかしないかを決断しようとした可能性が示唆されるとしている。
以上の結果から、ホンソメは鏡像から自分の体長を把握できることが解明された。また、必要に応じて意図して鏡を見に行くことで、自分の体長を再確認しようとした可能性(鏡の利用)も考えられるという。鏡像を自分と認識できるだけでなく、自分に関する情報を得るために意識して利用できるということは、ホンソメの自己意識が単に外見を照らし合わせる外見的自己意識だけでなく、自分自身であると理解した鏡像を基準に目的を持って利用できる内面的自己意識を持つことが示唆されるとした。
脊椎動物の祖先から最も初期に分かれた魚類が、鏡像で自分の情報を確認できることが示された今回の研究成果は、他の分類群の脊椎動物も魚類と同様に自己意識を持ち、鏡を自分の状態を確認するために利用できる可能性が示唆されるとする。鏡像自己認知ができる動物であっても、自然環境では鏡を見ることはほとんどない(光の条件次第だが、波打たない水面を見下ろした時ぐらい)。つまり、鏡と関係なくそれらの動物は自己意識を持ち、鏡を利用できることが考えられるという。今回の研究成果は、ヒトと動物の自己意識の共通点を明らかにし、自己意識がどのように進化してきたか解明するうえで重要な手掛かりになることが考えられるとしている。