「iPhone 11」「11 Pro Max」を試して実感したカメラ大幅進化 そして将来の強みとは

9月17日(火)19時10分 ITmedia PC USER

左がiPhone XRの後継機に相当する「iPhone 11」、右がiPhone XS Maxの後継機に相当する「iPhone 11 Pro Max」。いずれもアウトカメラ周辺のデザインが昨年のモデルと大きく異なっており、2019年モデルであることが一目で分かる

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 9月20日に販売が開始されるAppleの「iPhone 11」および「iPhone 11 Pro Max」を一足先に試用した。まだ短期間であるため、端末の全貌を語り尽くすことは難しいが、2019年の製品ラインアップは整理され、選びやすくなった。
 端末の性能はもちろん強化され、搭載される「A13 Bionic」はあらあゆるSoC(System on a Chip)の中でも、最も処理能力が高いCPU、GPU、ISP(Image Signal Processor)を内蔵するだけでなく、ニューラルネットワーク処理専用の「Neural Engine」も業界随一。さらには機械学習処理能力の強化を狙って、CPUには行列乗算を6倍に引き上げる専用の演算器が搭載された。
 もっとも、これらの能力が一般的なアプリケーションにまで浸透し、エンドユーザーが実感できるまでには少々時間がかかるだろう。先行開発パートナーと準備したビデオ撮影やゲームなどのアプリはどれも素晴しい出来栄えだが、それらは近い将来のアプリ環境を投影したものだ。
 もちろん、端末を数年間使っていく上で、処理能力の高さはいずれ大きな武器になるだろうが、目先の利点としてはAppleのSoCが端末の具体的な機能と結び付き、分かりやすい形で機能として提供されている点である。
 その最も端的な例は、発表時にも紹介したカメラ機能の充実である。ユーザーからみると、高画質になった、あるいは使いやすくなった、といった体験レベルの違いとして現れているが、その背景には端末の機能設計をOS、アプリといったソフトウェアレベルだけでなく、SoC設計のレベルにまで掘り下げた綿密な計画がある。
 年内のアップデートで投入するというカメラの高画質化技術「Deep Fusion」は、まさに“実現すべき目標”を見据えてSoCレベルから性能を強化したことで実現するものだ。
 また、現時点では試すことはできないが、「iOS 13.1」で対応する「UWB(超広帯域)」を応用してデバイス間の方向や距離を検出する「U1」チップの活用など、半導体レベルにまで落とし込んだ新アプローチは他にも用意されている。
 また、新型バッテリーを搭載したiPhone 11 Proシリーズはバッテリー駆動時間という、多くのユーザーが悩む問題を緩和するだろう。ディスプレイの改善も、映像にこだわる利用者層ならば無視できないものだった。
 2年に1度買い替える利用者が多かったスマートフォンも、現在は3年以上に伸びてきているが、「iPhone 7」以前のモデルからならば、iPhone 11、11 Proのいずれを選んでも高い満足度を得られるはずだ。
●「11世代」内蔵カメラの注目点
 AppleはiPhone 11および11 Proのカメラ(52mm相当の望遠カメラの有無を除けば、11と11 Proに機能・性能の差異はないため、「11世代」のカメラと表記する)を改良する上で、画質や機能だけでなく操作性にも変更を与えた。
 カメラの動作モードと各モードの動作パラメーターを分離。従来は正方形で撮影するための専用モードが「スクエア」として存在していたが、11世代のカメラではなくなる。その代わりにカメラの動作設定値としてアスペクト比が1:1、4:3、16:9から選択可能になる。
 撮影モードは「タイムラプス」「スロー」「ビデオ」「写真」「ポートレート」「パノラマ」にまとめられ、「0.5」「1x」「2」とカメラをダイレクトで切り替えるボタンを配置。タップ&ホールドで滑らかなズームになるのは前世代と同じだが、ダイヤルのスケールが分かりやすくなっている。
 さらに(縦位置で構えている場合は)上にスワイプすると、撮影パラメーターの一覧が表示。撮影パラメーターを親指だけで手早く操ることが可能になった。フラッシュライトやライブフォトのオン・オフ、タイマーなどに加えて、アスペクト比、あるいはナイトモードの露光時間選択やポートレートモード時のF値、ライティング強度の設定などもここにまとめられている。細かなことだが、これまではできなかったスクエア時のライブフォトも撮影可能になった。
 こうしたユーザーインタフェースの変更は、OSをiOS 13にアップデートしたとしても既存の「iPhone XS」シリーズや「iPhone XR」などでは反映されない。11世代のカメラのみの新しい操作性だ。オートフォーカスやホワイトバランス、「スマートHDR」などの振る舞いも変化しており、また動画撮影時の露出やホワイトバランスの変化も落ち着きがあるなど、細かな改良も進んでいる。
 一方、機能面や画質の面での注目点は、
・画素融合と機械学習処理による画質向上
・スマートHDRの改良によるトーンマッピングの改良
・数秒から最大30秒まで長時間の画素融合で暗いシーンの画質を高めるナイトモード
・A13 Bionicを活用した「Deep Fusion」
・複数カメラの活用によるホワイトバランス、オートフォーカスの改良
・超広角カメラの搭載と活用
・広角カメラでのポートレートモード
・インカメラの画質と機能向上(スマートHDR、スローモーション対応)
 といったところだろうか。実に盛りだくさんだが、いずれも単にカメラセンサーやモジュールを改良するだけではなく、SoCのレベルから質と機能を高めるアプローチが採られている。
 また昨年はiPhone XRとXSシリーズでカメラ機能の違いが大きかったが、今年は52mm相当の望遠カメラがiPhone 11には搭載されないものの、それ以外についてはインカメラを含めて全く差異はない。
●XS世代カメラを成熟させた11世代カメラ
 iPhone 11世代の内蔵カメラは、「A12 Bionic」を搭載したiPhone XS世代のコンセプトを推し進めたものだった。XS世代のカメラでは、露出が異なる2枚のフレームから明暗のディテールを適切に取り込み、1枚の映像にトーンマッピングするスマートHDRが導入されていた。
 iPhoneだけではなく、Googleの「Pixel」やソニーの「Xperia 1」、Samsungの「Galaxy S10」シリーズなど、小さなスマートフォンのセンサーで高画質を狙う製品は、少なからず、複数フレームの情報を用いて画質を向上させたり、画像を分析して機械学習処理で画像を修正する処理を加えている。
 機械学習によるカメラ画質の向上というと、Huawei製のスマートフォンに代表される「被写体やシーンに合わせ、こうあってほしいという理想的な色やトーンカーブ」に合わせ込む画像処理を想起するかもしれないが、必ずしもそればかりではない。
 iPhoneも数世代前には、やや恣意的な絵作りを特定のシーンで施しているように感じられたが、現在は被写体のディテール……質感を復元する方向で機械学習を成熟させているようだ。
 今回、端末をテストした日は雨模様で、決して撮影に恵まれた環境ではなかったが、それでもカーディガンの編み目などは、見た目に感じる質感が表現されていた。
 スマートフォンのカメラでS/Nを上げようとすると、細かなディテールを犠牲にしてでもノイズを平均化しようとするものが多い。iPhone 11および11 Proも条件が悪くなってくると、ノイズ除去の影響が見えてくるが、屋外での撮影では質感重視の写真となる。
 こうした質感描写の向上は、昨年から取り組んでいる複数フレームの情報を用いた高画質化処理が、最新SoCの能力によってさらに一歩進んだことが大きい。
 iPhone 11および11 Proのアウトカメラは、240fpsのカメラを用いてスマートHDRでのキャプチャーを行いながら(つまり毎秒120枚の静止画が生成されていることになる)、レリーズした前後のイメージも参照して最終的なイメージを生成している。
 Appleは複数フレームの「Fusion(融合)」と呼んでいる。年内に対応するというDeep Fusionは、この融合処理をより多くの枚数を参照して行うものだ。Deep Fusionでは最大9枚のイメージを融合することで画質を高め、従来比6倍に向上させた機械学習処理能力や20%高速化したNeural Engineをフルに回して、高画質化とディテールの強化を行う。
 この際、撮影モードは変更する必要がなく、条件がそろえば常にDeep Fusionでのレンダリングが行われる。
●実用的だったナイトモード
 高速でマッチする画素を探索し、融合する処理を行うというアプローチが進化した結果、ナイトモードという、暗所での写真を高画質にする撮影モードも加えられた。といっても、この機能も使いこなす必要はなく、必要なシーンになれば必要なパラメーターで自動的に動作する。
 例えば、本来ならば2〜3秒の露出がなければ明るい画像にならないシーンでも、短いシャッター速度で多数の画像をキャプチャーし、画素間の相関を取りながら情報を融合していく。厳密には長時間露出ではないが、三脚を立てて長時間露出を行うのに近い明るさを得られる。
 長時間露光では被写体ブレが問題となるが、ナイトモードでは画素間の相関を取って合成しているため、手持ち撮影かつ相手が人間であっても、ジッとしていれば多くの場合、問題なく撮影できる。これが風景かつ三脚などの固定された場所だと、5〜10秒、あるいは手動設定では最大30秒まで情報を重ねることが可能。長時間露光と似ているにもかかわらず、被写体ブレの問題や手持ち撮影をある程度解決しており、想像よりもずっと実用的な撮影モードだ。
 また昨年と同様に盛り込まれているスマートHDRも進化しており、コントラスト感を損ねずに暗部、明部のトーンマッピングを行うよう微妙な調整が行われている。
 さらに動画においては、逆光への対応が明らかに良くなった。動画撮影時も、スマートHDR同様の処理でダイナミックレンジを拡大している(Extended Dynamic RangeとAppleは呼んでいる)が、点光源の多い室内で13mm相当の超広角カメラを活用した撮影を行ってみたが、特に何の工夫をすることもなく適切なトーンマップで撮影ができた。
●画角が拡大したインカメラは画質も向上
 インカメラはより広角になった上で1200万画素になっているが、画素数よりも画質そのものの向上の方がより印象的だ。2年ほど前のアウトカメラに匹敵する画質が実現されており、スマートHDRや動画撮影時のExtended Dynamic Range撮影も行える。もちろん、(毎秒120フレームとレートは半分だが)高画質化処理はアウトカメラと共通だ。
 縦位置のままインカメラに切り替えると、700万画素相当クロップされ、画角が従来と同等にまで狭められる。これは自分一人を撮影する場合には、こちらの方が便利だからという理由だ。もちろん、本来の画角に広げることもできる。
 そして集合写真を撮るために横に向けるとクロップが解除され、1200万画素での広い画角が得られる。
 室内撮影でも十分な実効感度があり、「TrueDepth」センサーを用いたポートレートモードもあって使いやすいインカメラとなった。
●「バッテリー」と「お得さ」に取り組んだApple
 もっとも、販売の場面で大きく影響するのは、製品ラインアップ全体の見渡しと「お得感」、それに「バッテリー駆動時間」ではないかとみる。
 今年のラインアップは継続販売する既存モデルを含め、バランス良く再配置した上で、スマートフォンユーザーの悩みであるバッテリー駆動時間の解決に取り組んだ。
 「iPhone 8」がローエンド端末として置かれ、iPhone 11に近い性能と同等の外観やディスプレイを持つiPhone XRが購入しやすい端末として並べられている。もともとiPhone XRは「バッテリーの持ちがいいiPhone」と評判だった。
 実売数という意味では、商戦期を過ぎるとこれらの端末が主役となっていくだろう。とりわけiPhone 8は価格がこなれている上、「3D Touch」が搭載される唯一のモデルとなった。日本の場合、LINEのトークを「未読のままのぞき見する」ために3D Touchを望む若年層は多い。LINE側が「触覚タッチ(Haptic Touch)」に対応するまでは、望んでiPhone 8を選ぶユーザーもいるだろう。
 iPhone 11はさらに省電力化でバッテリー駆動時間が延びているが、価格は昨年のiPhone XRよりも引き下げられた上、円高の影響もあって日本向け製品の価格が見直されて買いやすくなっている。しかも性能、メモリ(RAM)容量、広角カメラと超広角カメラなどは最上位モデルと同じだ。
 そしてiPhone 11 Proシリーズには、最新の高密度バッテリーを搭載することでiPhone 11 Proで4時間、iPhone 11 Pro Maxで5時間という大幅な駆動時間の延長を実現した。価格帯とバッテリー駆動時間はほぼ比例関係で、11がお買い得な一方、11 Proシリーズの利点もハッキリしている。
 また、本格ローンチはこれからであり、また欧米向けコンテンツが主とはいえ、映像サブスクリプションサービスの「Apple TV+」が月額600円と制作費への投資額を考えれば格安で提供されるが、さらにAppleの端末を購入すると1年分のファミリーライセンスが与えられる。この施策が続く限り、家族の誰かが端末を1年に1度購入するだけでずっと無料で見ることが可能だ。
 ゲームのサブスクリプションサービス「Apple Arcade」も同じく月額600円で、スマートフォン向けゲームの業界に一石を投じるとともに、Apple製品のお得感を演出する要素になっていくだろう。
 これまで低価格製品の開発・提供には消極的で、旧モデルを用いることでラインアップを構成してきたAppleだが、コンテンツサービスを通じてお得感を引き出そうとしている。
 映像作品、ゲームともにカタログがそろってくれば、Appleにとっての大きな強みに育っていくだろう。
[本田雅一,ITmedia]

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