欧州の「ヴェガ」ロケット、7月の打ち上げ失敗の原因がほぼ特定

9月18日(水)9時30分 マイナビニュース

フランスのロケット企業、アリアンスペース(Arianespace)は2019年9月5日、今年7月11日に起きた、小型ロケット「ヴェガ(Vega)」15号機の打ち上げ失敗事故に関する、独立調査委員会の調査結果を発表した。

委員会は飛行データを分析した結果、失敗の原因をほぼ特定し、対策事項などをまとめた。打ち上げ再開時期は2020年第1四半期を目指すという。

ヴェガは、アリアンスペースが運用する小型ロケットで、1〜3段目に固体、4段目に液体ロケットを搭載した4段式のロケット。イタリアの航空宇宙メーカーのアヴィオ(Avio)がプライム・コントラクターとなり、欧州各国にある航空宇宙メーカーが部品を製造、供給している。

2012年に1号機が打ち上げられ、以来14機すべてが連続成功。15機目となる今回の「フライトVV15」が初めての失敗だった。

事故を起こしたヴェガ・ロケットは、日本時間7月11日10時53分(現地時間10日22時53分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターのヴェガ射場(ZLV)から離昇した。

1段目ロケットの燃焼は正常だったが、離昇から約130秒後、2段目ロケット・モーター「ゼフィーロ23(Zefiro 23)」に点火した直後に、なんらかの異常が発生。ミッションは中断され、軌道に乗れなかったロケットは、搭載していたアラブ首長国連邦(UAE)の地球観測衛星「ファルコンアイ1(FalconEye1)」とともに、大西洋に墜落した。

この事故を受け、11日には欧州宇宙機関(ESA)やアリアンスペースらが共同で独立調査委員会を設立。テレメトリー(ロケットから送られてくるデータ)の分析をはじめ、これまで成功した14機のヴェガの生産や品質などに関する書類の調査、生産施設や運用施設の調査などが行われた。

その結果、1段目モーター(P80)の燃焼や飛行、2段目のゼフィーロ23との分離などはすべて正常で、これまでの飛行で記録されたパラメーターとも一致。また、ゼフィーロ23の点火と推力の立ち上がりも、最初の14.025秒までは正常で、これまでの飛行とも一致していたという。

しかしその直後、離昇から130.850秒の時点で、ゼフィーロ23に突然、激しい事象が発生。これにより機体は、ゼフィーロ23と、その上の機体とで真っ二つになったという。

その後、離昇から135秒後に、ゼフィーロ23の上に乗っていた機体部分の飛行トラジェクトリーが、計画から逸脱。231.660秒後には、ギアナ宇宙センターから飛行を中断する(無力化する)コマンド(neutralization command)が送られた。そして314.025秒後には、ロケットからのテレメトリー・データや信号が受信できなくなったとしている。

独立調査委員会では、これらの観察された結果や、異常が起きた前後のデータなどを分析した結果、異常の最も可能性高い原因として、ゼフィーロ23の前方ドーム部の、熱による構造上の破損を挙げている。

固体ロケットは、筒状のモーター・ケースの中に推進剤(推進薬)を詰め、一方の端にノズルを装着し、もう一方の端は塞ぐという構造をしている。これにより、燃焼ガスが高い圧力の状態でノズルを通って噴出するため、推進力を生み出すことができる。しかし、今回のように前方ドーム部、すなわち一方の蓋の部分が破損すると、ガスが抜けて推力が出なくなるばかりか、そもそもそれ以前に機体が崩壊する。

通常、モーター・ケースに高温の燃焼ガスが入り込まないように、両者の間は隔てられているが、今回の事故では、なんらかの理由でドーム部分にガスが触れ、その熱で損傷したものと考えられる。

一方で、なぜこれまで14機が成功していたにもかかわらず、今回の15号機に限ってこのような事象が起きたのかという点に関しては特定されていない。

なお、飛行中断システムの誤作動など、ほかに考えられる原因は可能性として低く、また悪意ある破壊活動(サボタージュ)などが行われた証拠も見つからなかったとしている。

これを受け、委員会では、2020年の第1四半期(〜2020年3月31日)までの飛行再開を目指し、「調査結果の徹底的な検証」と「関連するすべてのサブシステム、プロセスや機器に対する一連の是正処置」を行うことを提言している。

ESAの宇宙輸送局長のDaniel Neuenschwander氏は「この数週間、調査委員会のメンバーは、プライム・コントラクターのアヴィオのサポートの下、優れた仕事を行いました。すべての関係者に対し、ヴェガの飛行再開に向けた是正処置の実施を奨励し、欧州の宇宙へのアクセスの、完全なる自律性を確保したいと考えています」とコメントしている。

また、アリアンスペースのステファン・イズラエルCEOは「異常の原因を特定する独立調査委員会の作業と、年末にまでに実施する明確に定義されたアクションプランにより、2020年の第1四半期に、信頼性をもってヴェガの打ち上げを再開する道を開くでしょう。産業パートナーであるアヴィオとともに、これまでの14機の打ち上げ成功の道に再度戻ることに、全力を尽くします」と述べている。

一方、ヴェガの打ち上げが最短でも2020年第1四半期となったことで、これまで予定されていた衛星の打ち上げ計画は軒並み遅れることになる。

また、ヴェガの競合相手となるロケットは、インドの「PSLV」や、小型衛星のライドシェア(複数機の相乗り)打ち上げ計画を発表した、米スペースXの「ファルコン9」などいくつかあり、今後潜在的な顧客が、こうした競合ロケットに流れる可能性もある。

さらに、開発中のヴェガの改良型ロケット「ヴェガC(Vega C)」も、初打ち上げは2020年3月に予定されていたが、こちらも今回の事故の影響がおよび、デビューは遅れることになろう。

ヴェガCは、第1段の固体ロケット・モーターを現在より強力なものに換装し、さらにそのモーターを、並行して開発中の次世代大型ロケット「アリアン6」のブースターと共通化。第2段もより強力な「ゼフィーロ40」を使い、第4段の液体ロケットも改良する。これにより、ヴェガとコストはほぼそのままに、打ち上げ能力を大幅に向上させることを目指している。

○出典

・Vega Flight VV15: Findings of the Independent Inquiry Commission’s investigations - Arianespace
・LAUNCH KIT - VV15-launchkit-EN2.pdf
・Vega - Arianespace
・Vega / Launch vehicles / Space Transportation / Our Activities / ESA
・Inquiry finds Vega failed after violent event during early second stage flight - NASASpaceFlight.com

著者プロフィール
鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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